神戸市立王子動物園の公式Xが「雑巾がけするホッキョクグマ映像」を投稿。ポリタンクを地面に押し付け、力強く前進する姿に「かわいい」「もう大掃除?」「丸太じゃま!」「旭山で見た」と大きな反響がありました。でも、なぜこんな動き?何がしたい?飼育担当の前野美紅さんに聞きました。
2歳のメス「ゆめ」は2021年12月生まれ。北海道の旭川市旭山動物園から2023年末に王子動物園へ。33歳だったメスの「ミユキ」と交替展示となり、当時の国内最年長と最年少を見られると話題になりました。2024年初めにミユキが旅立ってしまい、同園のホッキョクグマは現在ゆめ1頭です。
—何をしたくてこんな動きに?
「雪山でいつものように押さえつけて仕留めるつもりが、滑りが良くてズズズーっと進んだのかな、と。ほかのポリタンクに比べたら少し柔らかく小さいのでゆめの前脚にフィットしたみたいです。最後は部屋にお持ち帰りして、翌日夕方にはもう壊れてました」
—ポリタンクはいくつもありますが、これは特別?
「ポリタンクはエサを入れやすいので私たちは大切にしているんですが…。この青いポリタンクは初めてあげたもので、中には何も入れていません。ゆめは初めての遊具にはいつも一番に突進します」
—新しいことが分かるんですか?
「獣舎で見える場所に置いておくので、あれがいつもらえるのかなという感じで期待してますね。新しい遊具が出ないときは、プールに魚を放っていたら、そこにダイブです」
—遊具がたくさんあります。目的は?
「中にエサを隠して採食時間が延びるようにしています。動物園ではどうしても退屈な時間もできてしまうので、活動性を上げる目的もあります」
来園当初から遊具選びを進め、ブイやポリタンク、馬用フィーダーなどとして販売されている中から、頭に被れそうな危険なものは避け、安全第一を考えて決めているそう。ホッキョクグマの歯や爪の鋭さ、力の強さを感じてほしいと遊具展示も行い、選ぶ際の考え方も紹介。また、ゆめの行動を見守りながら来園者の質問などに応じる時間を積極的につくっています。
エサは来園当初より増やし、今は毎日8~9kg。馬肉、牛レバー、ホッケ、アジ、リンゴ、ニンジン、白菜、ペレットなどです。
「牛レバーとホッケが大好物で、ミユキには与えていなかったものです。環境が大きく変わる中、食べ物だけでも旭山と同じものをあげたくて。夏も食欲は落ちなかったです」
健康管理のためのトレーニングも順調で、「旭山から引き継いだ採血トレーニングはもう少しかかりそうですが、来園後に始めたターゲットタッチはすんなり。開口もしっかりできるようになりました。ゆめはめっちゃ賢いです!」と前野さん。
公開当初は人の視線を気にしたり放飼場に人影が映るのを怖がる様子があり、奥の方に木の枝を山盛りにしているのは死角を作るためでした。「今は、だいぶ王子に慣れてきてくれたなと感じます。遊ぶ時間が長くなってきて、プールでゆったりできるようになりました。最近は、午前中はプカプカ浮いて、ゆる~い遊びをしていることが多いです」
来園からもうすぐ1年。神戸も冷え込むようになり王子名物の人工雪山も大きくなってきました。
「ゆめの姿、行動を通して、ホッキョクグマという生き物を見てほしい」と前野さん。「泳いだ後に雪山で水切りしたり、遊具を雪に埋めたり出したり…。これからもっと寒くなって、ますます元気いっぱいのゆめに会えると思います」