今週放送された連続テレビ小説『おむすび』(NHK総合ほか)第3週「夢って何なん?」では、ハギャレン(博多ギャル連合)のメンバーたちそれぞれの将来の夢、風見(松本怜生)の書道の夢、四ツ木(佐野勇斗)のメジャーリーグへの夢、父・聖人(北村有起哉)が震災により神戸に置いてきた理容師の夢が示され、夢が持てないことを結(橋本環奈)は思い悩む。そんななか結は、姉・歩(仲里依紗)の部屋で「ギャルの掟」が書かれた色紙を見つけるのだった。
掟その1
仲間が呼んだらすぐ駆けつける
掟その2
他人の目は気にしない
自分が好きなことは貫け
掟その3
ダサいことは死んでもするな
これは、第6回でルーリー(みりちゃむ)、スズリン(岡本夏美)、リサポン(田村芽美)が結に教えたものと同じだった。初代総代の歩からハギャレンに受け継がれ、守られてきた「ギャルの掟」が、今度は結の心を動かす。
第10回で、結は「掟その1 仲間が呼んだらすぐ駆けつける」を守り、警察に補導されたルーリーのもとに駆けつけた。そして第15回では、カツアゲをして天神界隈を荒らす“ガラ悪ギャル”を前に、結が「掟その3 ダサいことは死んでもするな」を胸に啖呵を切り、仲間を守った。「ギャルの掟」は、結たちの指針となっていくと同時に、物語の重要なキーワードでもあるようだ。
「人間というものを知る」真理が込められた「ギャルの掟・3箇条」
制作統括の宇佐川隆史さんと脚本家の根本ノンジさんをはじめとするスタッフは、『おむすび』を制作するにあたり数多くの「当時のギャル」たちに取材したという。そうした「当事者体験談」をもとに、ハギャレンの「ギャルの掟」をこの「3箇条」に絞った理由を宇佐川さんに聞いた。
「たくさんのギャルの皆さんに取材させていただいたなかで、多くの方が口々に『仲間を大事に』『自分の“好き”を貫け』『ダサいことはするな』を信条としてきたとおっしゃっていて、自然とこの3つが残っていきました。私は、皆さんのお話を聞きながら『ああ、こういうふうに生きられたらいいな』と羨ましく感じたんです」
「自分の『好き』や『大事なもの』がわかっているということは、自分自身のことをちゃんと考えられていて、自分のことを大切にできているということ。それは、相手もまた自分と同じように『大事なもの』を持っていて、かけがえのない存在であることがわかっているということなんですね」
「『自分の“好き”を知り、自分を知る』というのは結局、『人間というものを知る』『人の気持ちを知る』につながるのだ思います。ギャルの皆さんのお話を伺って、この『真理』がわかったときに鳥肌が立ったんです。『3つの掟』が、ご覧いただいた皆さんにとって、自分を大事にして楽しく生きるためのきっかけになればと思い、ドラマの中に組み込みました」
「ギャルの掟」が物語のターニングポイントに
第6回でルーリーたちが唱えた「ギャルの掟」を、最初は内心「しょもーもな」と思っていた結。ところが、ハギャレンのメンバーたちと少しずつ心を通わせるうちに、自分もいつの間にか「掟」を守っていることに気がつく。そして、第15回で同じ文言が書かれた色紙を歩の部屋に見つける。この作劇の意図を宇佐川さんに聞くと、
「そもそもこの『ギャルの掟』というのは、いったいどこから来ているのか。これが物語のターニングポイントになってきます。『おむすび』は一見シンプルで王道のストーリーに見えて、実はいろいろと複雑な構造を仕込んでいるつもりです」
と明かした。
属性に関係なく「人として素敵だな」というリスペクトを描きたい
宇佐川さんは、元ギャルたちへの取材で強く感じた思いをこの「掟」に込めたのだという。
「風貌だとか年齢だとか属性だとか、そういうものに関係なく、『人として素敵だな』という尊敬の気持ちを、ギャルの皆さんへの取材を通じて私は強く抱きました。ハギャレンのメンバーの生き方と『おむすび』の物語を通して、それがご覧いただいた皆さんに伝わればうれしいな、と思っております」
第4週「うちとお姉ちゃん」ではいよいよ歩が登場。糸島フェスティバルで結たちが踊るパラパラや、聖人の思いが明かされるエピソードなど、「糸島編」の最初のクライマックスを迎えるもようだ。