2024年春、福岡県動物愛護センター。檻の中から「助けて」「甘えさせて」と必死にアピールする元飼い犬とおぼしき小さなワンコがいました。
別件でセンターに訪れていた地元のボランティアチーム、わんにゃんレスキューはぴねすのメンバーは、同時期に「小型犬を迎え入れたい」という希望を受けていた夫婦を思い浮かべました。連絡すると「ぜひ会いたい」という返答。ワンコを保護し、トリミングをすることにしました。
体中排泄物がこびりつき、骨と皮状態だった
仮でつけた名前は「かほちゃん」。
トリミング後に元飼い主から棄てられたように見えましたが、体中に排泄物がこびりつき、毛玉だらけ。そして、体はガリガリでまさに骨と皮状態でした。
それでもカット中もジッとしていることができ、時折人間と目が合うとうれしそうな笑顔を浮かべます。
「これだけの甘えぶりなら、きっと元飼い主はかほちゃんをかわいがっていた時期もあるだろう」と数多くのワンコを救ってきたメンバーは直感。同時に「それなのに、何故棄てたのか」だけは全く理解することができず、憤りを感じました。
幸せな犬生を目指すある日に起きた異変…
ともあれ、幸せな第二の犬生へと繋ぐことを最優先に、前述の夫婦とお見合いするまで献身的にお世話をすることにしました。少しでも太ってくれることを願い、エサを与えるとかほちゃんはすごい勢いで食べ元気を取り戻してくれました。
メンバーの家の中でも先住犬と一緒に走り回り、散歩もうれしそうにルンルンで走り回ります。
「かほちゃんがこんなに元気なら夫婦もきっと迎え入れてくれるはず」と、夫婦との打ち合わせを進めていた矢先、突然かほちゃんの身に異変が起きました。
40度の熱を出し肺の一部が潰れていた
ある日の朝、いつもならメンバーのベッドで一緒に寝ているはずのかほちゃんの姿がありません。
「どこに行ったのだろう」とメンバーが探すと、部屋のフラフラした姿を現しました。その目にはいつもの元気はなく、体も小刻みに震わせています。そのまま大きなうんちをして、動きません。
「どうしたの? かほちゃん」とメンバーが抱きかかえようとしたら「キャン!」と大きく鳴きます。そして、体が熱く呼吸も荒いため、すぐに動物病院へ連れて行きました。
40度の熱を出しており、検査で肺の一部が潰れていることがわかりました。また、体の随所に血と膿がたまっており、骨と皮だけでなく健康状態もボロボロだったことが判明しました。
「元気になったら必ずうちにおいでね」
そのまま入院することになり、酸素室へ。
メンバーはここまでの話を里親希望の夫婦に連絡すると、2人は動物病院に来てくれました。
初対面となった夫婦はかほちゃんに「今は大変だけど、元気になったら必ずうちにおいでね」と優しく声をかけてあげました。
体の状態が悪い保護犬にはもらい手は見つかりにくく、この場で断られることも覚悟していたメンバーは、瀕死の状態のかほちゃんに「うちにおいでね」と話しかけた夫婦の思いに、胸が熱くなりました。
「現時点での譲渡は厳しいと思います」
かほちゃんは5日間の入院を経て退院し、再びあの笑顔を見せてくれるようになりました。しかし、潰れてしまった肺の一部は完治したわけではなく、以降は投薬をしながら経過観察が必要です。
投薬による効能が見込めなかった場合、肺切除も必要になってくるといいます。獣医師は「現時点での里親さんへの譲渡は厳しいと思います」とも。里親を希望する夫婦もメンバーもとても残念に思いましたが、今はかほちゃんが健康を取り戻してくれることが最優先です。
「ずっと待っているからね」という愛情あふれるあの言葉。優しい里親希望者さん夫婦の家で第二の犬生を送れる日を目指して、かほちゃんはがんばって治療を続けています。
わんにゃんレスキューはぴねす
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