自宅で飼っている雌鳩が交尾をせず、卵を産んでヒナがかえった―。奇跡のような実話が、SNSをにぎわせている。雌鳩は4歳くらいで、名前は「ちゃる」。生まれた時から室内で1羽のみで育てており、ヒナの時以外は雄を見たことはないという。飼い主は「単体で生殖できるの?」と驚いている。
ヒナの頃からエアコンのきいた室内で飼育
飼い主は奈良県在住の男性(40)で、X名・沙弥行徳さん(@yukiho112)。ちゃるは2020年にペットとして迎えたという。種類は「ジュズカケバト」。首の後ろに黒い数珠のような模様があるのが特徴だ。ヒナの頃からベランダにすら出したこともなく、エアコンのきいた室内で育ててきた。
「産卵は3回目です。以前も卵を温めていましたが、孵化することはありませんでした」と男性。今回は2月28日と3月25日に1個ずつ卵を産んだ。そして4月10日、思わぬことが起きる。男性がいつも通り、ちゃるを眺めていると、卵の殻が割れてヒナが姿を現した。「無精卵だと思っていたので、ヒナが動くのが見えた時は驚きで震えました」と振り返る。
現在、母鳩は「ピジョンミルク」と呼ばれる乳状のものを体内で作って口移しでヒナに与えるなど、懸命に育児に取り組んでおり、ヒナはすくすくと成長中。名前は「唯一無二」との意味を取り、「むに」と名付けた。
雌だけで子どもが産める「単為生殖」
ではなぜ、交尾せずに産んだ卵が孵化したのだろうか?千葉県にある公益財団法人「山階鳥類研究所」の小川博所長は「動物は本来、雌と雄が交尾をして繁殖しますが、魚類や鳥類の一部では『単為生殖』と言って、雌だけで子どもが産める種類もあります」と説明する。通常、動物の体をつくる細胞は、母方父方2セットのゲノムを持つ「二倍体」となっている。今回の場合、母方のゲノムしか持たない「一倍体」の胚だったと考えられるが、何らかの影響で分裂や再結合などがあり、「二倍体」の胚になったのではないかと考えられるという。
単為生殖が起こりやすいとされる七面鳥の無精卵を採卵した海外の研究では、6370個のうち孵化したのは16、17個のみだったという。小川所長は「七面鳥でこの数字なので、鳩は極めて珍しいと思います。不思議な力です」と話した。