近寄るといきなりパンチ ちょっと短気な保護猫は愛きょうあるゴハンくれアピールも 「受け入れてくれる飼い主さん、現れるかな」

松田 義人 松田 義人

行き場を失った猫たちを保護し、幸せな猫生へと導く活動を続けているLOVE & Co.(以下、ラブコ)。ある日、同団体に「近くにいる野良猫を捕獲してもらえないか」という依頼が入りました。依頼主は、出産を控えた妊婦さん。しかし、残念ながらラブコでは捕獲の依頼を受けているわけではないため、捕獲自体は断りました。

その後、妊婦さんは友人に協力を頼み込み、自分たちで目当ての野良猫を捕獲しました。捕獲されたのは黒と白のコントラストが美しいメス猫で、後に付けられた名前は「おかみ」。かわいいルックスのメス猫ですが、人間への警戒心からでしょうか、なんの前触れもなく突然威嚇。人間を睨みつけてきました。

幸い重篤な持病はなく、最低限の処置で健康に

心優しい保護主さんは、それでもまったく慌てず、まずはおかみを動物病院へと連れて行きました。病気を持つ野良猫は多いですが、幸いおかみにはウイルスはいずれも陰性。ノミダニの駆除を行い、3種の接種をし、避妊手術も終えることにしました。

TNRとして一度は外に戻されましたが、近所の住人は猫嫌いな人ばかり。ゴハンにもありつけず、水をかけられていじめられているおかみを見て保護主さんがいたたまれなくなり、ラブコに相談したのです。

「早く起きろ。ゴハンくれ」の催促

ラブコに引き取られたおかみでしたが、相変わらずのシャーシャー威嚇ぶり。「ヒグマ」の異名がつくほどでした。

事前に威嚇的な動作があるのなら、心構えができるのですが、おかみの場合、前触れなしに突然パンチを繰り出すため、ゴハンの配膳の際などには、ゴハンをひっくり返してしまったことも。このため、預かりボランティアさんに「おかみにゴハンを与えるためのマジックハンドが欲しい」とまで言わしめることとなり、「突然のパンチ」とその威嚇から、歴代のラブコの保護猫の中でも「恐れられる存在」トップでした。

やがて「この人たちは悪い人たちではない」と理解してくれたのか、おかみはかつてのような突然のパンチを出さなくなり、威嚇程度になっていきました。

まだ完全に人間に馴れたわけではない一方、預かりボランティアさんには心を開くようになり、布団越しに足元で寝るくらいに人馴れが進みました。さらに預かりボランティアさんがうっかり寝坊したしまった日などには、足をガリガリと引っ張り「早く起きろ。ゴハンくれ」アピールも。引っ掻かれたとはいえ、当初あれだけ怖かったことを思えば、それ自体もなんだかうれしく思えたそうです。

人間は苦手でも、他の猫にはかなり寛大

なかなか一筋縄にはいかないワイルドな保護猫・おかみですが、諸事情からラブコの拠点が長野県松本市に移転するのと合わせて、預かりボランティアさんの家も卒業。松本市のラブコのオフィスで過ごすようになりました。

知らない人間は相変わらず苦手ですが、ラブコスタッフには比較的早い段階で馴れてくれ、引っ越しの翌日からはゴハンをモリモリ食べてくれるようになりました。また、他の猫とのコミュニュケーション能力は高く、そして他の猫の多少の粗相も許せる寛大さも持ち合わせています。

程なくして、ラブコではおかみの里親募集をスタート。現在も「ずっとのお家」を待ち続けています。「当初はおかみに触れなくても、家にいてくれればそれで良い」そんな広い心で迎え入れてくれる人とのマッチングを、おかみは今日も松本市のラブコオフィスで待ち続けています。

LOVE & Co.
https://love-and-co.net/

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