甘えん坊の保護犬 迎えられた優しい家庭で異変が起きた ケージの中に引きこもり体をこわばらせているのはなぜ?

松田 義人 松田 義人

「犬を買う」のではなく「保護犬を迎える」。そんな選択肢が昨今、認知されつつあります。

一方、保護犬の中には、人間との生活に不馴れだったり、過去に受けた虐待からのトラウマから警戒心や恐怖心がなかなか解けないワンコもたくさんいます。「ワンコが心を開いてくれなかったら」「ワンコに嫌な思いをさせてしまわないか」と不安になり、保護犬を迎えることに踏み出せない人が多いのも事実です。

広島県を拠点に犬の保護活動を行う団体、ピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)では、このように保護犬を迎えることに不安を感じている人でも安心してワンコを迎えられるよう、ワンコの保護だけでなく、医療ケアはもちろん、念入りな人馴れトレーニングを経た後での、里親希望者さんへ譲渡しています。

優しい里親さんの家に迎え入れらたものの異変が…

2022年の春、ピースワンコに1匹の元野犬のワンコが保護されました。名前はランクル。保護当初推定5歳ほどのクリクリの目がかわいいオスでした

元野犬特有の人見知りや警戒心をを持っていましたが、ピースワンコのスタッフの念入りのトレーニングとコミュニケーションですぐに克服。保護当初から一変、とびきりの甘えん坊となり、程なくして里親募集をスタートさせることになりました。

ランクルに一目惚れした里親希望者さんが名乗りを挙げてくれました。お子さんがいる優しそうな家族で、スタッフは「明るく甘えん坊のランクルなら、この家族がピッタリだ」と譲渡を決意。見事ランクルは、この家に迎え入れてもらえることとなりました。

しかし、ここでランクルに異変が起こります。新しい家ではなかなか馴染むことができず、ちょっと生活音や人の動きが怖くて、ずっとケージの中で固まって過ごしていると言うのです。

「良いことがある場所」と認識してもらうことが先決

来る日も来る日もケージから出てこないランクルを心配した里親さんは、ピースワンコの譲渡センターに相談の連絡を入れました。ランクルを思い、どうしたらランクルにとって安心できる環境を作ることができるのかを願ってのことです。

そこでピースワンコのスタッフは、こう助言をしました。

「まずはケージの外の『部屋』が怖い場所ではないことをランクルに知ってもらうため、できるだけケージの外でおやつやご飯をあげてください。『ケージの外に出れば、美味しいものをもらえる』『良いことがある』と認識してもらい、慎重に接してみてください」

優しく真面目な里親さんは、その助言通りにランクルに接してみると、当初こそケージに後ろ足を残したまま、体を伸ばして恐る恐るおやつを食べていたランクルですが、毎日続けていただくことで少しずつですが着実にケージの外へ一歩を踏み出せるようになり、徐々に行動範囲が広がってきました。

やがてランクルは「部屋」が怖い場所ではなく、むしろ良いことがある場所と悟り、そして里親さんの愛情もしっかり受けとめ、本来の明るく甘えん坊の性格をどんどん出してくれるようになりました。

明るく甘えん坊の性格を出すようになったランクル 

その後、ランクルは里親さんの家に馴染み、家族で食事をしている際には「僕にはないの?」「ちょうだいよ!」と訴えかけるように近づき、かわいらしい笑顔を見せてくれるようになったそうです。

その話を聞きピースワンコのスタッフもおおいに喜びました。何かと「元野犬を飼うのは難しいのではないか」と思われがですが、このように慎重に接すること、ワンコのペースを最優先に慌てず心を開いてくれることを待つことで、一生のパートナーになってくれるとも教えてくれました。

最後にスタッフはこんなメッセージも残してくれました。

「元野犬のワンコと暮らすとき、慎重に接することはもちろん大事ですが、ワンコにとってはたくさんの経験を積むことや、家族の愛情を注いでもらうことが何より大切です。それらは苦手なことや怖いことを、嬉しいことや楽しいことへと変える力になってくれます。

ランクルの里親さまのように、元野犬の保護犬を家族に迎えてから不安や悩みがでてくるかもしれませんが、そういった際であっても、私たちピースワンコのスタッフが全力でサポートさせていただきます。諦めずに真剣に向き合えばワンコはその気持ちに必ず応えてくれるので、その過程も含めて保護犬との生活を楽しんでいただければと思います。保護犬のお迎えを考えられている方、まずはお近くのシェルターや譲渡センターにお越しください。きっと素敵な出会いがあるはずです」 

ピースワンコ・ジャパン
https://peace-wanko.jp/

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