2023.11.24(Fri)

繁殖現場から救出された痩せこけたトイプードル　頭部には咬まれた跡があった　「今度こそ幸せに」　3回目のトライアルに挑戦中

人間の心ない行為から行き場を失うワンコが後を絶ちません。その一つが、悪徳ブリーダーによるネグレクトにも近い飼育です。

ブリーダーの元にいるワンコの中には、「繁殖犬」として利用されるだけで、満足なエサを与えられず、劣悪な環境下で望まない繁殖を強いられる例もあります。こういったブリーダーを訪ねて、根気ある交渉などを重ね、1匹でも多くのワンコの命を救い出す心ある保護団体もいます。

九州地方を拠点に動物保護を行うボランティアチーム・わんにゃんレスキューはぴねす（以下、はぴねす）もそういった団体の一つ。他の動物愛護団体との連携しながら劣悪な繁殖現場に介入し、多くのワンコを救ってきました。

ガリガリに痩せた体

このはぴねすが、2023年3月に地元のブリーダーからレスキューした1匹がいました。後にはぴねすがそのワンコにつけた名前は「ミク」。栗色に巻き毛が特徴的なトイプードルのメスです。

保護以前のミクは、繁殖犬として扱われ、適切な飼育を受けずに生き延びてきました。ガリガリに痩せ、本来であれば自慢のヘアもボサボサで毛玉だらけ。さらにその毛に糞尿がこびりつき、体から悪臭を放っていました。

スタッフは「まずは体をキレイにしてあげたい」と、保護後、旧知のドックサロンに駆け込みました。そのドックサロンのオーナーははぴねすの活動に理解を示してくれ、いつも保護犬たちのトリミングをしてくれる優しい方です。熟練の手捌きで、汚れた毛玉はキレイさっぱり取り除くことができましたが、ミクの頭部に他のワンコから咬まれた痕を見つけました。

ミクは繁殖現場で弱い立場にいたのかもしれません。他のワンコに咬まれながら、満足な世話をされず、繁殖を繰り返したと考えれば、その環境はまさに地獄です。胸を締め付けられるスタッフでしたが、「これから絶対に幸せな生活へと繋いであげたい」と、いつの日か優しい里親さんへと繋ぐ決意を胸に刻みました。

本来の甘えん坊ぶりを見せてくれるように

ドックサロンでキレイになった後、ミクは動物病院で検査を受けることになりました。幸い大きな異常は見つかりませんでした。繁殖犬の多くは不衛生な環境にいるため、感染症などで重い病気にかかることがありますが、ミクは大丈夫だったようです。避妊手術は後日に実施することにし、ミクはしばらくの間、はぴねすに所属する預かりスタッフさんの家で過ごすことになりました。

当初は馴れない環境に緊張した様子のミクでしたが、預かりスタッフさんの献身的なサポートとたっぷりの愛情を受け、少しずつ心を開いてくれるようになりました。体を預かりスタッフさんに寄せてきては「なでてよー」と甘えてくるようにもなりました。なでてあげると、ミクは頭を預かりスタッフさんの手に押し付けながら、ジッと見つめてくるようにもなりました。

トライアル先の先住犬との相性が合わなかった

避妊手術も無事終え、本来の性格も出してくれるようになったことから、はぴねすでは里親募集をかけることにしました。

間もなく、「ぜひ会いたい」という里親希望者さんが現れました。里親希望者さんはすでにシニアのトイプードルを飼っている方で、預かりスタッフさんは「この方なら安心してトライアルできる」と感じていたと言います。

しかし、トライアルは予定より早く切り上げることになりました。理由は、先輩ワンコがストレスによって体調を崩してしまったからです。先輩ワンコは、見知らぬワンコが突然家にやってきたため、自分のテリトリーが脅かされるという不安を感じたのでしょう。ミクは自ら攻撃を仕掛けることがない優しいワンコですが、先輩ワンコからすれば負担になっていた可能性があります。

はぴねすでは「先住犬との相性が合わなかったのは仕方ない」とし、気を取り直して新しい里親希望者さんとの出会いを待ち続けることにしました。程なくして、再び里親希望者さんが現れましたが、こちらも先住犬がストレスで体調を崩しトライアル中止に…。なかなか思うようにことが進みませんが、それでもスタッフは諦めませんでした。