我が子に「生き物と暮らすことのリアル」を教えてくれた…飼い主の転居で置き去りにされた“おばあちゃん猫”を看取って

古川 諭香 古川 諭香

2年半前、現在の自宅へ越してきたという、aoさん。引っ越し先で出会ったのは、怒りんぼ顔がかわいい1匹のおばあちゃん猫。そのおばあちゃん猫は悲しい過去を乗り越え、懸命に生きていました。

推定年齢10歳以上のミイちゃんを「うちの子」に

近所をうろつく、そのおばあちゃん猫は飼い主の転居により、置き去りにされてしまったそう。悲しい事実に胸を痛めた飼い主さんは、2021年12月中旬、おばあちゃん猫を保護しました。

名前は「ミイ」に決定。推定年齢10歳以上のミイちゃんは、猫エイズ陽性。なぜか、右耳には小さな穴が空いており、動物病院では口内炎があることも判明しました。

投薬治療しながら、飼い主さんは自宅でミイちゃんが快適に暮らせるようにサポート。ミイちゃん専用の部屋を作り、家猫生活に慣れてもらいました。

「先住猫とも、少しずつ顔合わせをして慣らしていきました。もともと人好きだったので、人馴れに関しては何もする必要がありませんでした」

一緒に暮らす中で飼い主さんは、ミイちゃんのかわいさをたくさん知りました。怒りんぼうな顔なのに、実はとても人懐っこいこと。体調不良で寝込んでいると、隣に来て「大丈夫?」と言うようにゴロゴロと喉を鳴らし、一緒に寝てくれる優しさがあること。

そうした姿に、子育て真っ只中の飼い主さんは深く癒されました。

「置いて行かれたという境遇なのに、とても人懐こくて。人間より、この子のほうが愛情深い部分があるなと感じました」

保護から1年後に腎不全を発症して

1日でも長生きしてほしい。そんな思いから、飼い主さんは様々なサポートを行いながら、ミイちゃんとの時間を過ごしました。

足腰が弱くなってきたことに気づいたら、お気に入りの寝床を低い位置に設置。口内炎の痛みを気遣い、フードは柔らかく負担のないものにし、色々なものを試して味に飽きないように工夫したことも。

しかし、保護から1年後、ミイちゃんは食が細くなってしまいました。動物病院で検査をすると、腎不全であることが判明。ステージ3との診断を受け、通院しながらの闘病生活がスタートしました。

飼い主さんは家のどこでも水分を摂れるように給水ポイントを増やすなど、自宅でできる対策も行ったそう。しかし、徐々にミイちゃんは衰弱。やがて、自宅で投薬や点滴を行いながら過ごすようになりました。

「食欲も戻らず、トイレにも行けなくなってオムツをしていました。専用の療養部屋に作り、真夏だったので優しめにエアコンをつけていました」

そうした細やかな配慮を受けながら、ミイちゃんは最期まで愛されながら、天国へ。苦しむことなく、床に寝そべり、静かに虹の橋を渡りました。

「お迎え当初はちょうどコロナ禍で、我が子のひとりが精神的に不安定になっていた時でした。親子共々、一番辛かった時期を一緒に過ごしてくれたことに感謝しています」

そう語る飼い主さんは、ミイちゃんが身をもって子どもたちに命の大切さを教えてくれたとも感じています。

「亡くなってしまったのは、とても悲しいことですが、生き物を飼うのはかわいい、楽しいだけでなく、病気の時は寄り添い、やがては老いて自分より先に死んでしまうということを子どもたちが体験できたことは、彼女からの最大の贈り物だったと思っています」

野良猫ではなく、家猫として大切に見守られ、天国へ逝けた…。その最期の在り方はミイちゃんにとって、嬉しいものであったはず。ギャップ満載の愛くるしいおばあちゃん猫は、今も家族の心の中で生き続けています。

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