15歳で飼育放棄されたきょうだい犬 攻撃的だった3頭を変えた人の愛情 体は老い病気を患ってもスタッフに支えられ生きる

松田 義人 松田 義人

保護犬の譲渡活動を通じ、「殺処分ゼロ」の実現を目指すピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)。これまでに多くの行き場を失ったワンコたちの命を救い、幸せな第2の犬生へと繋いできましたが、保護するワンコの中には重度の障害や病気を抱えていたり、高齢であることから現実的には譲渡が難しい保護犬もいます。

こういったワンコはピースワンコが取り組む「ワンだふるファミリー」の一員となり、同団体の施設でその命を全うするまで過ごすことになります。これらにかかる費用は、全国にいる支援者の方からの寄付などで成り立っています。

この「ワンだふるファミリー」に、最高齢である18歳のブライ、バーバラ、リゼロッタというワンコがいました。

事前に聞かされたのは「3頭はいずれも気性が荒い」

ブライ、バーバラ、リゼロッタは2019年に、広島の動物愛護センターに収容されました。聞けば、いずれのワンコもこのとき15歳。中型犬の平均寿命は13歳ほどですので、その時点で立派なシニア犬でした。

3頭は飼い主から飼育放棄されて動物愛護センターに収容されたそうですが、引き取り手が見つかりにくいシニア犬です。このままだと殺処分対象になってしまうことからピースワンコが引き出すことにしました。

動物愛護センターの職員から事前に聞いていたのは「3頭とも気性が荒く、攻撃性もあるため、注意が必要」ということ。中でもバーバラは夜中に大暴れし、犬舎からの脱走を試みて結果的に柵に挟まったこともあったそうです。

実際スタッフが引き出した際も、3頭は「自分たちきょうだい以外は誰も受け入れない」と言わんばかりに、威嚇してきました。

3頭とも次々に団体の養護施設に引っ越し

3頭の気性の荒さと、いずれもシニア犬ということを鑑みれば、やはり新しい里親さんとのマッチングは難しそうですが、しかし、人間の都合でその命を奪うわけにはいきません。ピースワンコは、この3頭を冒頭で触れた「ワンだふるファミリー」の一員として受け入れ、生涯お世話をし続けることにしました。

ピースワンコには、「ワンだふるファミリー」の多くのワンコが暮らすオレンジ犬舎という施設があります。

3頭のうち、ブライは昨年の春に前庭疾患によって体が傾く症状が出始め歩行も支障が出てきたため、オレンジ犬舎へ引っ越すことにしました。その後、がんが見つかったリゼロッタとバーバラも、オレンジ犬舎に引っ越しをしました。

ケア施設に来てから3きょうだいとも穏やかに

オレンジ犬舎に引っ越してからそろそろ1年です。「ブライは保護当初と打って変わって、すっかり温厚でおとなしいおじいちゃんになった」とスタッフは話します。

がんのため自分でおしっこができなくなったリゼロッタは1日に数回スタッフがお腹からチューブをいれ、おしっこを吸い出します。この献身的な世話から人間の優しさを知ったリゼロッタもまた、保護当初の負けん気の強さが消えて、すっかり甘えん坊になりました。

そして、バーバラも。3きょうだいの中で最も暴れん坊だったバーバラが、ここオレンジ犬舎に来てからはスタッフにどんどん心を許し、お腹を見せてくれるようにもなりました。

スタッフは「一緒に過ごしてきたリゼロッタが、スタッフに優しくお世話をされる様子を見ていたから『この人たちは悪い人たちじゃないんだ』と悟り、心を許してくれるようになったのかな」と、そのスタッフは言います。

きょうだいの姿を見て「私もがんばろう」とスタッフ

オレンジ犬舎でスタッフが愛情を込めてお世話をし、必要な投薬などもおこなっていましたが、残念なことに今年6月、リゼロッタが虹の向こうへと旅立っていきました。

さまざまな持病を抱えながらも3きょうだい仲良く過ごしていた姿を思い出すと、辛い気持ちになるスタッフでした。しかし、与えられた命をサポートし、最期の日を迎えるまでスタッフがお世話し続けたことは意義ある行動であり、当のリゼロッタも虹の向こうで喜んでいることでしょう。

そしてスタッフはこうも話します。

「残されたブライ、バーバラきょうだいのたくましく楽しそうな様子を見ると、自分もがんばろうという気持ちになります」

このように高齢のワンコ、持病を持ったワンコでも1頭でも多くその命を救い、そして、新しい里親さんのマッチングが難しい場合は、ピースワンコが責任をもって最期の日を迎えるまで世話を続けると言います。今後の活動や動向にも要注目です。

ピースワンコ・ジャパン
https://peace-wanko.jp/

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