先住猫のために仲間を迎えたい
六花ちゃん(りっかちゃん・生後7ヶ月・メス)は、2022年7月初旬、原宿の表参道の路地裏で鳴いていた。そばに母猫や兄妹の姿は見当たらず、1匹だけでいた。出勤途中の美容師さんが見つけて、居合わせた近所の人が一時保護、その後保護団体に預けたそうだ。
神奈川県に住むKさんは元保護猫のデヴィッドくんを飼っていたが、とても甘えん坊の寂しがり屋だった。
「テレビに猫が映ると夢中になって画面を追いかけるので、仲間を迎えてあげたいと思いました」
Kさんは一度、雄猫のトライアルを試みたが、その猫はオラオラ系で、人間にはすごく甘えたがデヴィッドくんを攻撃しまくり、初日からデヴィッドくんは逃げ回っていた。2日目には、デヴィッドくんが浴室へ逃げ込んだので、迎えるのは断念したという。
猫のいいところを全部持っている子
Kさんは、ある日、インスタグラムで先代猫に似た子猫を見つけた。ただ、その子はすぐに誤嚥性肺炎で亡くなってしまった。Kさんは残念に思ったが、車で40分ほどのところで開催された譲渡会に夫と足を運んでみた。
事前にインスタで参加予定の猫たちを見ると、六花ちゃんは「猫のいいところを全て持っている」と紹介されていた。
「とても気になりました。実際に見てみると、お団子のように丸っこく短い尻尾をしていました。その尻尾でしっかり意思を伝えてくるのが可愛くて、すぐにトライアルを希望しました。でも、六花の希望者は他にも2組いて、審査の結果、当日夜にうちに決まったと連絡があったのです」
天真爛漫な子猫をやっかむ先住猫
2週間後、保護団体の人が六花ちゃんを連れてきてくれた。キャリーケースから出してもらい、すぐにケージに入れたが、5分もしないうちにオシッコとウンチをした。
「本当に驚きました。この子はうちの子になるんだなと思いました」
その後、六花ちゃんはベッドでくつろぎ、ごはんもよく食べた。瞬く間に家に馴染んでくれたので、Kさんは安心した。
しかし、それも束の間、日が経つにつれデヴィッドくんと六花ちゃんは仲が悪くなった。六花ちゃんは天真爛漫。我慢せず、やりたいことを貫き通す。それがだんだんデヴィッドくんの癇に障るようになってきた。
「例えば、デヴィッドの尻尾を六花がおもちゃにして遊んだり、デヴィッドが乗ってはダメだと言われているテーブルに何のためらいもなく乗ってみたり、デヴィッドは夫のことが怖くて甘えられないのに、六花は膝に乗って寝たりします。極めつけは、デヴィッドのトイレでオシッコをしました」
次第にイライラが募ってきたデヴィッドくん。立花ちゃんが何もしていないのに猫パンチを食らわすこともあった。
「心配で落ち込むこともありますが、六花はまだ子猫。もう少し成長して落ち着いたら関係も変わるのかなと見守っています」
六花ちゃんの自由奔放な振る舞いは、Kさんにとっては羨ましく、「こうありたい」という尊敬の念すら覚えるという。ダメと言われたことでも、「なんでダメなのよ!」と言わんばかりに鼻で鳴き、「許してよ!」と訴えてくる。好きなおもちゃを追いかけている時に、「もういい加減やめようよ」と言っても、「まだ遊ぶ!」と鳴いて訴える。
「結局、可愛いので付き合ってしまう。猫バカだなって飼い主の弱みです(笑)」