なかなか里親が決まらなかった保護猫 「この子がいい」と見初められて猫好き夫婦の元へ

渡辺 陽 渡辺 陽

東京都の民家の庭で野良猫が子猫を産んだ。家主からボランティアに「どうにかして!」と連絡があったため捕獲し、母猫はTNR(T=TRAP「つかまえる」N=NEUTER「不妊手術する」R=RETURN「元の場所に戻す」)、子猫たちは里親を募集した。子猫のみかんちゃんは、なかなか捕獲機に入らず、翌日になってやっと保護できたが、里親もなかなか決まらなかった。

 

「野良猫が子猫を産んだ、どうにかして!」

2019年5月、東京都のある民家に妊娠した猫がやってきて子猫を3匹産んだ。その家は猫にとって居心地がいいのか、数年前にも6、7匹の猫が住み着き、ボランティアがTNRしたという。再び家主がボランティアに「突然猫が子猫を産んじゃった。どうにかして!」と保護を依頼してきたので、ボランティアが協力。夜に捕獲機を設置した。

ボランティアは、過去にTNRした時、家主に「耳カットしていない猫を見かけたら、すぐに連絡してください」と伝えていた。しかし、家主は連絡せず、子猫が生まれてから保護を依頼した。家主には少し怒りを感じたが、聞いたからには保護しないわけにはいかない。ボランティアは、なんとか子猫を保護して里親を探し、母猫はTNRしなければいけないと思った。

捕獲機には2匹の子猫と2匹の雌猫が入った。雌猫は不妊手術を受けていないようでサクラ耳ではなかった。1匹の子猫は取り残されてしまった。しとしと雨が降ってきたので、ボランティアは「困ったなあ、なんとか早く捕獲機に入ってくれ」と願ったが、その夜、子猫が入ることはなく、「捕まらなかったらどうしよう」と思いながら床に就いた。

子猫がいいと思ったけれど

翌日、5月30日、子猫は無事捕獲機に入った。2匹の雌猫は、不妊手術した後、家主の庭にリリースした。3匹の子猫姉妹は、あんずちゃん、すももちゃん、みかんちゃんと名付けられた。最後に捕獲機に入った子猫がみかんちゃんだった。

みかんちゃんは雨に濡れて風邪をひき、眼が腫れたため入院した。7月下旬に猫カフェデビューしたが、眼の調子が悪くなったため預かりボランティア宅に戻った。その後譲渡会に参加し、神奈川県に住む伊藤さんに出会ったという。

伊藤さんは、1匹目の猫はペットショップでマンチカンの子猫を買った。モモちゃんと名付けたマンチカンの猫が留守番する時に寂しくないように、2匹目の猫を飼うことを考えた。野良猫を助けたい、幸せにしたいという思いもあった。伊藤さんは譲渡会情報を調べ、「しあわせにゃんこ」の譲渡会を見つけた。

譲渡会のサイトには参加予定の猫の写真が掲載されていたのだが、夫が、「この子がいい、顔の模様が可愛い」と一目惚れした猫がいた。最後に捕獲機に入ったみかんちゃんだった。もう1歳になっていた。

「愛嬌のある顔で穏やかな感じでした。でも、正直、私は子猫のほうがいいのではないかと思っていました。モモの気性が激しいので、子猫だったらうまくいく、優しく接してくれるのではないかと思ったんです」

子猫希望者が列をなす中、成猫希望

伊藤さんは夫婦で譲渡会に参加した。緊急事態宣言明けの開催で、子猫を希望する人が列をなしていた。譲渡会スタッフが「成猫希望の方はすぐに入れますよ」と声をかけてくれたので、伊藤さん夫妻は目当てだったみかんちゃんにすぐに会うことができた。

「抱っこさせてもらったのですが、あまりにも大人しくてびっくりしました。先住猫のモモは、抱っこを嫌がってすぐに逃げてしまったので。猫の性格ってこんなにも違うのかと驚きました。穏やかな気持ちになったのを覚えています」

伊藤さんは、トライアルを希望した。

2020年6月14日、預かりボランティアがみかんちゃんを届けてくれた。伊藤さんは、、みかんちゃんをケージに入れ、モモちゃんを近づけてみた。モモちゃんはしばらくみかんちゃんがいることに気づかなかったが、気づいた瞬間鬼のような形相になり、怒りながら威嚇しまくった。

みかんちゃんはだんだん家になれてきたが、モモちゃんは何日も威嚇し続けた。「うまくやっていけるだろうか」、伊藤さんは不安になってきた。

奇跡の瞬間を逃さない

みかんちゃんがやってきて8カ月経ち、モモちゃんも大分なれてきたが、モモちゃんはみかんちゃんの動きが気になって仕方ないようだ。離れている時は気にしていないが、近くにいるとモモちゃんはずっとみかんちゃんを目で追っている。追いかけたり手を出したり、ちょっかいを出すこともある。

「家族はみんなみかんを可愛がっていますが、モモだけは完全には受け入れていなくて。みかんは本当にうちに来て良かったのかといまだに思ってしまいます」と、2匹の仲を見守っているという。

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