餓死、轢死、凍死…山間部の廃屋に遺棄された数十匹の猫を救え! アニマルレスキューが見た凄惨な現場

平藤 清刀 平藤 清刀

大阪府豊能郡の山間部にある1軒の廃屋に、5年ほど前から一度に大量の猫が遺棄され始めた。エサを与えられないため、食べ物を求めて外へ逃げ出した猫は、道路で車に轢かれた。中にとどまった猫は餓死あるいは凍死し、最初に棄てられた20匹がひと冬で全滅した。

一度に50匹近く棄てていく老夫婦の姿

2020年9月29日のことだった。NPO法人「アニマルレスキューたんぽぽ」代表の本田千晶さんが、この廃屋がある石垣の下を偶然通りがかったとき、数匹の猫が道路にいるのをみつけた。

「どの子もガリガリにやせていて、極度の栄養失調なのがわかりました」

尋常ではないことが起こっている。直感した本田さんが近所で聞き込みをしたところ、ある老夫婦が数十匹まとめて運んできて、廃屋に棄てたことが判明。廃屋は、猫を棄てた老夫婦が所有する物件だった。このご近所さんは老夫婦の親戚で、老夫婦が住んでいる場所は廃屋から車で1時間以上、公共交通機関を使うと2時間ていどかかる遠方だそうだ。

後に本田さんが調べて分かったのは、過去にも2度、その老夫婦が大量の猫を棄てていたことだった。廃屋になる前は、少なくとも15年くらい前までは賃借人がいたが、いつ退居していったのか、親戚の人でも記憶が定かでなかった。

そして今、その老夫婦の『猫棄て場』になっている。決して看過できないと憤った本田さんは、猫の保護と世話をしたいと老夫婦に願い出て話し合った。しかし老夫婦は、「猫は全て自分の飼い猫。増えてしまったのでこちら(廃屋)に連れてきたが、適切に飼育している」といって、猫の世話をするために本田さんが廃屋に立ち入ることを拒んだ。

それでも老夫婦の親戚が間に入って説得し、「アニマルレスキューたんぽぽ」として猫の世話をするために立ち入ることだけは承諾してもらった。

併せて「今後は猫を飼わないこと」「この廃屋に猫を棄てないこと」「ここに戻ってこないこと」を約束させた。

どうやって増えた? 一度に数十匹も棄てる理由

子猫がたくさん生まれたから棄てるという不届きな飼い主のことは、ときどき耳にすることがある。この老夫婦の場合は、数がケタ違いだ。

「わかっている範囲では、目立って増え始めたのは2015年頃に40匹、2017年頃に20匹ていどが遺棄されたそうです。この期間に棄てられた子は、外へ逃げ出して車に轢かれたり、エサが与えられないから餓死したり、冬を越せず凍死したりして、春までに全滅したと聞いています」

廃屋のある石垣の階段を下りたらすぐ、車が走る道路だ。見通しがきかず、小さな猫はドライバーから見えづらい。

そして昨年、40~50匹の猫がいっぺんに棄てられた。

そもそも不思議なのは、なぜそんなに増えるのか?

「老夫婦は『人から引き取っているうちに増えた』というのですが、見た目にわかるほど柄の似ている子が多いです。ここからは推測ですが、不妊手術を受けた子が1匹も見当たりませんから、老夫婦に飼われているうちに近親交配を繰り返して繁殖したのでしょう」

繁殖しすぎたから棄てる⇒廃屋でさらに繁殖する⇒冬を越せずに全滅⇒老夫婦が棄てに来る⇒繁殖⇒冬に全滅……を繰り返していたのだろうと、本田さんは推測する。

今後どうなる? 猫たちの運命

「アニマルレスキューたんぽぽ」では今、廃屋に棄てられた猫の保護活動に全力を注いでいる。

「保護した子たちのお腹には回虫やマンソンがいました。そのことから、極度の飢えをしのぐためカエルや虫を食べていたことは明らかです」

マンソンとは、カエルなどを食べて発生する「さなだ虫」の一種だ。

また、大量に保護したため、保護用の猫舎が足りなくなり、あらたにつくろうとしている。そのための資金を今、クラウドファンディングで募っているところだ。

並行して里親探しも行っている。

「廃屋で生まれた子は人に慣れていませんし、過去に人からエサをもらったり飼われた経験があったりしても、棄てられて飢えや寒さという苦しみを味わったことで人間不信になった子もいます。そんな中でも、人なれしていて一般家庭で飼育できそうな子は里親を募集しています」

本田さんは、里親を希望する人がどんなに遠方に住む人であろうと、必ず直接訪問する。猫を飼える環境を確認するのはもちろん、家族全員と面談してから、猫を譲るか否かを判断するという。

「二度と不幸にしないために、こだわっていることです。身勝手な人間のために不幸になるのは、いつも口のきけない動物達です。もしも自分が、棄てられた猫や犬だったらと想像してみてほしいのです。この子たちは好きで野良になったのではありません。この子たちの痛みを想像して、理解してほしいと思います」

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