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今も畑に立つ90歳祖父の梨園を残したい…孫の「最後のお願い」に問い合わせ続々 「ちゃんとした真面目な人に引き継がれますように」

渡辺 晴子 渡辺 晴子

「みなさんに最後のお願いです」

約70年続く福岡県飯塚市の「山中梨園」が、Instagramで後継者を募っています。梨づくりを続ける山中建治さんは90歳。今も現役で畑に立っていますが、先々まで梨園を維持していくことは簡単ではありません。

投稿には「素敵な梨園が、ちゃんとした真面目な人に引き継がれますように」「せっかくの梨の技術が途絶えませんように」といった声が寄せられました。

発信を担うのは、孫の山中翔太さん。取材に対し、40人近くからDMで問い合わせがあり、具体的に話を進めている人もいると明かしました。「最後のお願い」に込めた思いと、梨園の今を聞きました。

19歳で住み込み修業へ 山を開いた家族の暮らしから始まった

山中梨園の歩みをたどると、建治さんが子どもだった戦後の暮らしに行き着きます。

翔太さんによると、建治さんが小学4年生だったころ、両親は国から与えられた山林を開拓し、サツマイモを育てて生計を立てていました。しかし、食糧難が落ち着いた後も、サツマイモだけで暮らしを支えることは容易ではなかったといいます。

そこで建治さんが選んだのが、梨づくりでした。19歳で地元の梨農家に入り、1年間、住み込みで修行。その後、梨栽培を始めました。

「当初は右も左も分からない中、失敗と試行錯誤を繰り返しながら、何十年もの間、この山とともに梨づくりに取り組んできました」

現在、梨園で取り扱うのは、二十世紀、豊水、新興、菊水、新高、新世紀、幸水、秋月の8品種。建治さんが大切にしてきたのは、一つひとつの梨に愛情を込めて育てることだそうです。

ただ、翔太さんは、約70年の歩みが建治さん一人の力で続いてきたわけではないことも伝えます。

「日ごろから農作業を手伝ってくださるボランティアの皆様の存在が大きく、周囲の方々とのご縁や支えがあってこそ、今年も無事に梨を実らせることができました」

「最後のお願い」は、閉園が決まったという意味ではない

90歳になった今も、畑に立つ建治さん。その姿をそばで見てきた翔太さんは、梨園を自分たちの代で終わらせず、次の世代へつなぎたいと考え、SNSで後継者募集を発信しました。

「約70年もの間、試行錯誤を重ねながら守り続けてきた梨園を、このまま途絶えさせてしまうのは、あまりにももったいないと感じています」

投稿に添えた「最後のお願い」という言葉。そこに込めたのは、長年守ってきた梨園のために「今できることを何とか形にしたい」という思いでした。

引き継ぎの具体的な時期や期限は、まだ決まっていません。後継者となる人との話し合いも含め、今後検討していくといいます。

投稿後には、40人近くからDMが届きました。梨園の見学を希望する人、将来は農業に携わりたいと考えている人など、問い合わせの内容もさまざま。その中には、具体的な話し合いに進んでいる人もいます。

「私たちが想像していた以上に多くの方が関心を寄せてくださり、梨園を未来につなぐことについて、さまざまな方が思いを持ってくださっていることを実感しました」

取材時点では、後継者は決まっておらず、寄せられた問い合わせに一つひとつ対応しているところです。

農業経験だけでは決めない 費用や契約はこれから相談

では、どのような人に引き継いでほしいのでしょうか。

翔太さんは、農業経験の有無だけで判断するのではなく、梨づくりに関心を持ち、長く取り組む意欲のある人との出会いを望んでいると話します。個人だけでなく、家族や複数人での引き継ぎも検討していく考えです。

「私たちが求めているのは、単に梨園を引き受けてくださる方というだけではなく、祖父が長年大切にしてきた梨づくりの思いや技術を受け継ぎ、これからも梨園を守り、育ててくださる方です」

引き継ぐ土地や梨の木、設備の範囲、費用、契約形態、技術指導の方法などは、現時点ですべてが確定しているわけではありません。相手の希望も聞きながら、建治さんの経験や技術をできる限り伝え、無理のない引き継ぎ方を探していくといいます。

もちろん、梨づくりには季節ごとの作業があり、天候にも左右されます。翔太さんも「決して簡単なことばかりではありません」としたうえで、手をかけた梨が実り、食べた人に喜んでもらえることが、大きなやりがいだと話します。

孫が残したいのは、梨の木と土地だけではない

翔太さんは、祖父にとって梨園は「人生そのものといっても過言ではない、大切な場所」だと感じています。

長年積み重ねてきた栽培の経験や技術。農作業を手伝う人たちとの縁。毎年、梨を買ってくれるお客さんとのつながり。後継者募集を通じて、受け継いでほしいものが改めて見えてきました。

「祖父が積み重ねてきた経験や技術、梨づくりに対する姿勢、そして人と人とのつながりも含めて、未来へつないでいくことが大切なのだと思います」

後継者探しの難しさを感じながらも、多くの反応が届いたことで、梨園を残せる可能性を感じているといいます。

「祖父が長年大切にしてきた梨園を、次の世代へつなぐこと。それが、今の私にできる大切な役割だと思っています」

19歳で学び始めた梨づくりを、90歳の今も続ける建治さん。その歩みを途絶えさせまいと、翔太さんは引き継ぎ手とのご縁を探しています。

 【問い合わせ先】 「山中梨園」 yamanaka74en1109@gmail.com

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