風俗店などの大人のお店では、リーズナブルな価格で利用できる激安店、スタンダードと呼ばれる大衆店、少し背伸びをした中級店、そして誰もが一度は憧れる高級店と、価格帯によってランクが異なります。料金ごとに内容や質に差が出るもので、高ければ高いほど非日常感がアップするといっても過言ではありません。
ただ、この“内容や質”というのはお店や女の子だけではなく、悲しいかな利用客にも同じことがいえるそう。激安店で働くキャストの人たちは、「価格が下がれば下がるほど常識を疑うような男性に遭遇しやすい」と口をそろえて言います。ヤバ客が連続する日は、まさに百鬼夜行。客層が原因で退店まで追い込まれる子も現れるなど、一部の激安店はかなりハードな様子です……。
優先度がメンタル>お金になった激安店のヤバ客たち
お金に貪欲だったチカさん(仮名・22歳)は、確実に日給10万円が手に入る職場を探していました。夜職専門スカウトマンに自分の希望を伝えると「働く場所のレベルを下げて、“1人勝ち”状態になるのが一番良い」とのアドバイスが。最終的に某エリアの“激安風呂屋”への入店が決まり、勤務が始まります。
チカさんは今までは、スタンダードレベルでしか働いたことがありません。しかし収入を何よりも優先していたため、客質が下がるのは覚悟の上でした。しかしそんなチカさんのメンタルは初日から見事に抉られてしまいます(以下『』内、チカさん談)。
『ガチの激安で、ショートコース45分1万円で遊べちゃう店でした。こちらの手取りは7,000円なのですが、1日のほとんどがショートばかり。客は短い時間でアレがしたいこれがしたいと要望が多く、店が定めたルールを平気で破る人が7割。綺麗に遊べる男性が来たら神様のように思えました』
時間を超えても退室しない人、ルックスやスタイルに面と向かってケチをつける人、泥酔寸前の人など聞くだけでゾッとする客ばかり。こちらの店舗は“薄利多売”、そして「1本1本を逃すわけにはいかない」として、受付スタッフも明らかなヤバ客を通します。その結果、他店では出禁になった人もここに出入りする状態が出来上がっていたのです。
『それでもすぐやめなかったのは、稼げるからです。客はクソすぎるしスタッフも全然仕事ができず、女の子のことを何も考えていないけど、ひっきりなしに仕事が入るんですよ。ヘトヘトになるけど15時間待機で10万円は絶対手に入ったので、根性だけで頑張ってました』
しかしチカさんの頑張りもむなしく、毎日おかしな人間と接していることで、精神バランスが崩れ、過食や睡眠障害という日々の困りごとが増えていったのです。段々とお金よりもメンタルを優先する日が増え、「日給10万円に到達しなくてもいいかな」と思い始めました。
ここは地獄?女の子も妖怪まみれ!
お金だけのために心を無にして働きましたが、接客時以外も緊張が全く抜けません。チカさんは待機室で気軽に話せる相手さえおらず、お客さんと同レベルの“ヤバキャスト”にも唖然とする毎日です。
『店内ですれ違った時に、挨拶を交わせる人がほぼいなかったです。こっちからしても、基本シカトされる(笑)待機室も狭いのに他の人のことを考えず、寝っ転がってて全く譲り合わないから、こっちは立って待機するみたいな。お局が幅を利かせており、誰も文句を言えない状況でして……。スタッフも、女の子に対するケアはゼロ。まじで無法地帯でしたね!』
また、稼働率が高いチカさんを妬んでいたのか、常に待機室で暇をするキャストが彼女をネットの掲示板で叩いたそう。目の前で書き込みをする場面に遭遇し、チカさんのメンタルは一気に崩壊しました。
『待機が狭いので、スマホの画面とか見えちゃうんですよ。そしたら掲示板に何か書き込んでて“私のことやーん!”と(笑)前から店外デートが無料でできるとかデマが山ほど書き込まれ、鵜呑みにした客から店外すごい誘われて困っており……。まさか営業妨害する人間が目の前にいるなんて、もう言葉を失いましたよ』
収入以外の何もかもがヒドく、完全に「メンタル>お金」にスイッチが切り替わった瞬間にチカさんは退店することに。休職期間を設けた途端、過食も睡眠障害も一気に治ったそうです。激安店を去った彼女は、現在スタンダード店に復帰中です。自分らしくマイペースに働いているものの、激安の“後遺症”に頭を抱えているようで……。
『ヤバ客アレルギーみたいな感じになって、たまに変な人が来ると心臓がバクバクしちゃいます。あと、前の店の掲示板で未だに名前を出されていますね。ずっと粘着されて、私の移籍先を血眼になって探す人たちがいる。もう退店して半年以上経つのに、しつこくて怖いです。あそこに在籍したことを、今でも後悔しています』
高収入の代償は大きく、チカさんをとても不憫に思ってしまいました。この世界は何事も自己責任なので「そんなお店を選んだ人が悪い」という意見も否定はできませんが、ストレスと収入があまりにも釣り合いません。
お客もお客なら、キャストもキャスト。ある意味“似たもの同士”ですから、百鬼夜行の群れになるのは頷けます。
◆たかなし亜妖(たかなし・あや)
元セクシー女優のシナリオライター・フリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ゲーム会社のシナリオ担当をしながらライターとしての修業を積み、のちに独立。現在は企画系ライターとしてあらゆるメディアで活躍中。