「医者は看護師にモテる」という巷説の真相がSNS上で大きな注目を集めている。
きっかけになったのは医師・Dr.ぴぴぴPさん(@Hematologist_P)の「いいかい学生さん、医者になったら看護師にモテるなんて大間違いだよ。
処置に使った針を自分で針捨てボックスに捨てるお医者さんだけが看護師にモテるんだ。」という投稿。
職業や肩書だけでモテるなんて所詮は都市伝説ということか。医療関係者とおぼしきSNSユーザー達から
「加えて、電話をガチャ切りしない、敬語が使える、急変時は走ってくる、定期処方は言われる前にオーダーしてくれるなど。この辺ができればブスでもデブでも入れ食い確定ですよ。看護師からのアドバイスです」
「先生方もお忙しいので、せめて『針はここにまとめてるよ』でも大丈夫です 実際に針がゴミに混入していて片付けてくださるゴミ回収の方が針刺しした事例もありますので。あと普通のことですが通りすがりの挨拶。こちらも何気ないですが、『〇〇先生挨拶してくれるよー』とNs.間で話題になります」
「ハッ…処置に使った針は当たり前に自分で戻すものだとそういう礼儀だと思ってました…!むしろ看護師さんに片してもらうの心苦しい…(こ、これはモテチャウなぁ…)」
「大昔研修医の時。たまたま食事時間に要介助の患者さんのところへ様子観に行ったら配膳だけしてあった。ちょっと時間もある事だし嚥下や食欲の程度を知るために食介してたらナースからの評価爆上がりしたことがあります。」
など数々の共感の声が寄せられるこの投稿の真意について、Dr.ぴぴぴPさんに話を聞いた。
モテを過度に期待する医師はいません
ーー「医師は看護師にモテる」と思い込む医師は多いのですか?
Dr.ぴぴぴP:既に医師になった段階で看護師からのモテを過度に期待している医師はあまりいないと思います。ただ世間一般から伝え聞く限りにおいて、「医者狙いで看護師を目指す人がたくさんいる」と思っている人や「医者はモテる」と思っている人が多いと感じています。また医学生の段階だと医学生自身がそう思っているケースが幾分かあるように思います。当該ポストは、その「世間的なイメージ」をとっかかりにして、処置に使用した針を自分で捨てることの重要性を伝えるために敢えてそれらを繋げて語ったものになります。
ーー処置に使用した針を自分で捨てることの重要性とは?
Dr.ぴぴぴP:医療現場では「針刺し事故」が常に発生します。患者さんの血液などの体液に触れた後の針を、間違って医療従事者の手や体に刺してしまう事故で、採血後の検体の分注作業や、手術・処置中や、処置後の片付けの際などに発生します。肝炎ウイルスやHIVなどの血液を介する感染症が患者さんから医療従事者にうつってしまう可能性があり、可能な限り減らすべきだけれどもゼロにはできないという厄介なものです。
ーー針刺し事故を防ぐには
Dr.ぴぴぴP:針などの鋭利なものは必ず他のものと分けて、針捨てボックスに捨てるようになっています。処置中に使った針をどこに置いたか、針が何本あったかは処置を担当した医師が最もよく把握しているはずであり、処置後の物品整理・片付けを看護師さんにある程度お願いするのは良いとしても、針刺し事故の危険に晒さないために、針だけは医師が責任を持って針捨てボックスに入れ、「針は捨ててあります」と看護師さんに伝えるべきなのです。
針刺しという重大な危険から看護師さんを守る行動もとれない奴がモテるわけないよね、というのが間接的なメッセージであり、投稿の真意は「針は自分で捨てよう」という部分にあるというわけです。私を含め比較的若手の医師は医学部の教育の時点で医療安全について口すっぱく教わるので、ちゃんとできている人が多くなってきていると思いますが、医師になってから初めて接した指導医が看護師に任せてたりすると「そういうもんか」と思ってしまう先生も多いのではと思い、啓蒙している次第です。
ーー看護師に好かれない医師の特徴は?
Dr.ぴぴぴP:看護師からの指示確認の電話に対して横柄な態度をとったり、処置後の片付けなどを全て他職種に任せっきりな医師は嫌われている印象です。背景には「医師にしかできない業務に専念すべき」という思想があると思われます。人件費を無駄にしない、医療を効率よく進めるという観点でこの思想は間違いというわけではないですし、実際に大学病院等では医師が誰でもできる仕事をやらされがちな傾向があるため、その状況を嘆いている医師は多いです。
ーー投稿の反響へのご感想をお聞かせください。
Dr.ぴぴぴP::ちゃんとこれが「当たり前のこと」だと思っている人も多いことに希望を感じつつも、医師の態度に不満を抱えている看護師さんからの声もやっぱり多いんだなというのは感じました。もちろん医師からみた看護師さんへの不満だってありますし、医師に対して偏見は持たないでほしいなと思いますが…。
◇ ◇
Dr.ぴぴぴPさんのお話を聞き、医者が看護師にモテるかどうかにとどまらず、医療界の抱えるさまざまな事情をうかがい知ることができた。
なお、Dr.ぴぴぴPさんは現在、血液内科医でイラストレーターのDr.ぺぺぺさんをプロデュース中。Dr.ぺぺぺさんはLINEスタンプ「意外と使えそうな臓器のスタンプ」など医師兼イラストレーターならではコンテンツを多数展開しているので、ご興味ある方はぜひチェックしていただきたい。
Dr.ぴぴぴPさん関連情報
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