「ネパールと日本の架け橋に」 日本語の弁論大会で大臣賞、マクドのバイトも経験した19歳女性の夢とは

堤 冬樹 堤 冬樹

 鳥羽高定時制(京都市南区)で3月1日に行われた卒業式。はかま姿のパウデル・サンデヤさん(19)=京都市東山区=は「卒業したくないくらい学校は楽しかった」と晴れやかな表情を浮かべた。ネパールから来日した時は日本語を全く話せなかったが、たゆまぬ努力と周囲のサポートで、昨秋には全国の定時制や通信制の高校生が集う弁論大会で厚生労働大臣賞に輝いた。

 14歳の時、市内の飲食店で働く両親に、姉とともに呼び寄せられた。中学に入ったが「英語の授業以外ほとんど話せなかった」。後に片言で「1人、勉強、さみしい」と回りに伝えるとコミュニケーションが生まれた。

 翌年には鳥羽高の定時制へ。外国人住民が増える中、海外出身者が多い同校で日本語の基礎から4年間学んだ。バレーボール部や生徒会の活動にも励んだ。

 2年から始めたマクドナルドでのアルバイト。「お召し上がりですか」「他にご注文ございませんか」。敬語の壁にぶつかったが、何度も練習。やがて、新人バイトを教育する立場になった。

 「サンデヤならできる」。4年になると先生や友人の後押しで、定時制や通信制の生徒がスピーチする「生活体験発表大会」に出場した。タイトルは「きもちをことばで伝えたい」。日本語の苦労や努力のエピソードを交え、日本で生きるために自らの意見や思いを日本語で伝える大切さを強調。優しく接してくれた仲間らへの感謝で締めくくる内容だ。

 9月の京都大会で最優秀賞に選ばれ、11月の全国大会でも二席に入った。「楽しかったことや辛かったことを思い出しながら話した。受賞は自信になった」と声を弾ませる。

 多くの人と喜びを分かち合う中、鳥羽高定時制1年の弟が「僕もサンデヤみたいになりたい」と言ってくれたのが何よりうれしかった。かつて自身も同胞の先輩の頑張りに刺激を受け、いつか誰かの手本になれたら、との思いがあったからだ。

 4月からは京都府内の短大に進む。「通訳やビジネスなど興味はたくさん。将来はネパールと日本の架け橋になれたら」と話し、はにかみながら「実は女優にもなりたいんです」。そのまなざしは無限の可能性に満ちている。

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