10月から変わる新型コロナの医療費 治療薬も一部自己負担へ【豊田真由子が解説】

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

10月から何が変わる?

今回の見直しは、患者については、コロナ治療薬の公費負担と入院医療費の補助額、医療機関等については、病床確保の補助金、診療報酬の特例加算、高齢者施設への支援です。

以下、具体的に見てみます。

▽治療薬

新型コロナ治療薬の費用は、外来・入院とも、現在は全額が公費負担となっていますが、10月から、自己負担の上限額は、医療費の自己負担割合が1割の方は3000円、2割の方は6000円、3割の方は9000円となります。

医薬品としての本来の価格は、標準的な1治療当たり、パキロビッドパック 9.9万円、ラゲブリオ 9.4万円、ゾコーバ 5.2万円なので、例えばラゲブリオの場合、「1割負担なら、本来約9400円になるところが3000円、3割負担なら、本来約28200円になるところが9000円になる」ということになります。

▽医療費

治療薬以外の医療費(外来・入院)は、5月8日の5類移行以後は、すでに、公的保険の自己負担分を支払う形になっています。

<外来>
厚生労働省の試算では、新型コロナ疑いで、外来の医療機関にかかり、治療薬を投与された場合には、上述の治療薬分とそのほかの検査や医療費をあわせると、自己負担割合が1割の方4090円、2割の方8180円、3割の方12270円になるということです。

<入院>
入院医療費については、5月8日の5類移行以後は、公的保険の自己負担部分が高額になった場合に、「高額療養費制度(医療機関で支払った患者の自己負担の額が、年齢や収入に応じてひと月ごとに定められた上限額を超えた場合には、その超えた金額が支給される制度)」を適用した上で、さらに最大2万円が補助されてきましたが、10月からは補助額が半額の最大1万円となります。

厚生労働省の試算では、1割負担の方が、新型コロナで7日間入院した場合、コロナ治療薬分を除いた自己負担額は、住民税非課税世帯の方は14600円、年収約370万円までの方は所得に応じて、39800~47600円となるということです。(いずれも、実際に行われる治療内容によって、変わってきます。)

▽病床確保料や診療報酬特例措置の見直し

これまで国は、医療機関が新型コロナの入院患者の受け入れに備えて病床を空けた場合、「病床確保料」として補助金を支給してきましたが、通常医療との公平性等を考慮し、10月からは、対象を「酸素投与や人工呼吸器が必要な患者のための病床を確保した場合」に限ることとし、また、感染状況が一定の基準を超えて拡大した場合に限って支給することとしました。

また、新型コロナ患者への医療提供体制を構築・維持するため、手厚い点数を付けてきた診療報酬の特例措置についても見直しが行われ、必要な感染対策を実施してコロナ患者を受け入れる、往診を行う、重症や中等症の入院患者を受け入れること等に対する診療報酬が縮減されます。

▽高齢者施設などへの支援

重症化リスクの高い高齢者が入所している施設等への公的支援については、感染が落ち着いている状況においても、新型コロナに感染した入所者が入院しない場合には、その施設内で療養しており、また、今後の感染拡大において医療ひっ迫を避けることなども考慮して、要件や金額等を見直した上で、継続することになっています。

今秋のワクチン接種

9月20日から、新たにオミクロン株派生型対応ワクチンの接種が開始されました。今回は、「希望するすべての方について、オミクロン株派生型対応ワクチンを、無料で接種する」こととなっています。(本年春の接種は、接種対象が、医療従事者や、高齢者・基礎疾患のある方などに限られていました。)

そして、予防接種法上の「接種勧奨(接種を勧める)」や「努力義務(接種するよう努めなければならない)」について、今回の接種からは高齢者や基礎疾患がある重症化リスクの高い人のみ対象とし、それ以外の65歳未満の健康な人には接種勧奨や努力義務を適用しないことにしました。

また、現行法制上、ワクチン接種の全額を公費で負担する「臨時接種」は、2024年3月末までとなっており、来年度からは、高齢者や基礎疾患を有する方については予防接種法の「定期接種」として一部公費負担とし、それ以外の方は「任意接種」として(希望する場合に)全額自己負担で接種する、といった方向で検討が行われています。

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新型コロナへの対応については、本年5月(5類移行)からの「幅広い医療機関による自律的な通常の対応への移行」時期を経て、10月からは「冬の感染拡大に備えた重点的・集中的な入院体制の確保等」の時期とされ、そして、来年4月からは「通常の対応への完全移行、恒常的な感染症対応への見直し」を目指しています。

状況が落ち着いてきたとはいっても、重症化する方、亡くなる方もいらっしゃり、深刻な新型コロナ後遺症やワクチンの副反応等の問題もあります。

新型コロナパンデミックの3年の経験と教訓を振り返り、新型コロナ、既存の多くの感染症、そしてまた来るであろう次の新興感染症に対し、国としても個人としても、体制整備や心構えを、日常の中で、改めて構築しておくときではないかと思います。

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