猫の世界でも冬は風邪が大流行!…人間とはちょっと異なる症状、治りきらないと慢性の病気に

小宮 みぎわ 小宮 みぎわ

カッツは、夜は2階の私の寝室で寝ているのですが、朝になると私とともに階段を降りて1階のキッチンへ行くのが習慣になっていました。そんな冬のある日の朝、いつものように2階から階段を降りるときに、カッツは途中から階段を踏み外し、1階まで転げ落ちました。カッツも私もお互いに驚きました。カッツを診てみると、眼球が揺れて(眼振)おり、真っすぐ歩けませんでした。病名は特発性前庭疾患でした。

この病気は、猫では原因がわからないことが多いのですが、(だから特発性といいます。)飼い主はまだなりたて初心者マークの獣医師でしたので、『探求心』にかられ、すぐに母校の動物医療センターに連れていきました。そして、カッツの頭部のCT検査をしていただきました。

結果は、もちろん若いので頭部のがんなどは見つからず、『カッツの鼻の中から耳の方にかけて鼻汁がいっぱい詰まっている』ということがわかりました。もしかしたら、このことが眼振につながったのかもしれません。耳の奥には三半規管という身体の平衡感覚をつかさどる感覚器があります。鼻の奥にはこの内耳とつながっている通路があり、そこも鼻汁で埋まっていましたので、三半規管に影響を及ぼしたのではと思っています。

実はカッツはCT検査をする前に、これといった治療もしませんでしたが眼振は数日で完治してしまいました。しかし、鼻には鼻汁が充満していましたので、その後は毎週、鼻を洗浄しました。その甲斐あってか急速に慢性鼻炎は治っていきました。以後15年間、一度も風邪をひいていませんし、鼻炎もありません。

猫風邪の西洋学的な一般的な治療としては、抗ウイルス薬の投与やインターフェロン注射、細菌感染を抑えるための抗生物質の内服などがあります。そして、食べなければ食欲増進薬、脱水していれば点滴、炎症が激しければ抗炎症薬、鼻詰まりには去痰剤…。身体が弱っているときには、そのような対症療法が体力を温存するためにはいいと思います。

でも、風邪が落ち着いたら是非やっていただきたいことは、『風邪に打ち勝つ丈夫な身体を作ること』です。それは、空気清浄器を設置するとか身の回りのものを消毒するとかではありません。猫自身の体内の、『免疫成分』を鍛えることです。質の良い食べ物を食べてよく遊ばせ、ストレスのない生活を送らせることなのです。これが、風邪に打ち勝つためにはとても大切なことです。

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