展示されるおひな様は、一点一点が手作り。人形の、上等の反物で作られたふっくらした着物生地や、細かい刺繍に目をみはる。色褪せもせず「よほど保存状態が良かったのでしょうね」と宗田家ゆかりの人たちに伺うと「いやあ、最近までずっと蔵に入れっぱなしだったので」というから驚きだ。「もう一度誂えようとすると数百万円するでしょうが、詳しいことは分かりません。桃の節句は、家庭の中のお祝い事の一つですから」と事もなげに言われてしまった。
奥さんやお嬢さんたちのことを「ごりょんさん」「いとさん」「こいさん」などと呼ぶ「船場言葉」が飛び交っていた頃を知るひな人形たち。女の子の健やかな成長を願う親心と、当時の船場の繁栄ぶりをうかがい知ることができる、船場の春の風物詩だ。