ダイエット目的で糖尿病治療薬を使用 豊田真由子が医薬品の適応外使用に警鐘 春から市販の内臓脂肪減少薬にも懸念

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

実際にどういう問題が生じているのか

▽深刻な副作用の可能性

GLP-1受容体作動薬には,副作用として、低血糖症状(頭痛、めまい、吐き気、動悸、高度の空腹感、視覚異常等)や急性膵炎、下痢,便秘,腹痛などの消化器症状があります。ウゴービの副作用の発現割合は、68.0%(1.7mg) 54.3%(2.4mg)となっています。

さらに,適応外使用の場合には、これまでに知られていない、思わぬ副作用につながる可能性も否定できません。栄養不足や臓器障害を起こすような食欲不振や、低血糖による失神なども懸念されます。

糖尿病や肥満症の治療の一環として処方された場合であれば、副作用含め、医師による総合的・継続的なフォローが行われますが、ダイエット目的のオンライン処方の場合には、「専門医ではないため対応できない」と言われるケース等が報告されています。

▽国の救済制度の対象にならない

医薬品の副作用により、入院治療が必要になるほど重篤な健康被害が生じたと認められた場合に,医療費や年金などを給付する公的な制度として,「医薬品副作用被害救済制度」があります。ただ、救済対象はあくまでも、医薬品を適正に使用した場合に限られるため,GLP-1受容体作動薬を、本来の対象者でない人が、美容・ダイエット等の目的で使用して、重篤な健康被害が生じた場合には、この制度の救済給付を基本的には受けられないということになります。

▽真に必要とする患者に薬が届かない

GLP-1受容体作動薬の需要の高まりに生産が追いつかず、昨年3月から一部が出荷停止や限定出荷となり、医療現場では供給不足に苦慮する状況が続いています。糖尿病の患者が、血糖値のコントロールが悪くなると、生死にかかわる合併症などが憂慮されます。

GLP-1受容体作動薬の在庫ひっ迫を受け、国は、①医療機関及び薬局に適正使用を求め、また、②医薬品卸売販売業者には、ダイエット目的で処方することが明らかな医療機関には納入せずに、糖尿病治療を行っている医療機関・薬局へ供給するよう、依頼しています(2023年11月9日厚労省通知)。

▽医師法違反の疑い

診察や処方は医師(+歯科医師)しか行うことができませんが、一部のオンラインクリニックでは、処方権限のない看護師や、相手が誰だか不明、あるいはチャットの問診のみで、GLP-1受容体作動薬を処方されるケースが確認されています。医師以外が医行為を行うことは、医師法に違反するおそれ(3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金)があります。

国のオンライン診療のガイドラインでは「顔写真付きの身分証明書を用いて医師本人の氏名を示すこと、医籍登録年を伝えること」等とされていることにも、抵触する可能性があります。

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