能登半島地震、高齢者らの災害関連死をどう防ぐか 進められる「2次避難」…孤立集落は集落単位で ためらう被災者に配慮を

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

2次避難の現状と見通し

2次避難先として、政府は、公営住宅を全国で約6,500 戸、宿泊施設などを、北陸4県と隣接する長野、岐阜、滋賀各県で最大で約13,000人分、三大都市圏で約12,000人分を確保しているとしています(1月11日時点)。また、建設型応急住宅(仮設住宅)については、1月12日から輪島市・珠洲市で115戸、15日から穴水町・能登町で60戸着工しています。また、移送手段として、貸し切りバス約5000人分、タクシー約700人分を確保できる見込みとしています。

石川県は、「道路や水道の復旧の目途が立たず、集落孤立の長期化が判明した地区では、集落単位で丸ごと2次避難所に移っていただく方針」を採ることとしました(1月12日発表)。馳浩知事は、12日、孤立集落について「今月中に解消のめどを立てたい」との考えを示し、被災者に向けては、2次避難はあくまで一時的な措置であり、被災地での仮設住宅等の整備を急ぎ、「必ず皆さんが能登に戻れるようにする」「そのためにも今は命を守ってほしい」と呼びかけました(北國新聞インタビュー)。

すでに輪島市南志見地区の270人、同市西保地区と珠洲市大屋地区の各120人が自衛隊ヘリなどで救助され、県内の2次避難所に移されました。1月12日時点で、孤立集落は、輪島市や珠洲市などの17地区の約1910人となっています。孤立集落から優先的に2次避難を進め、高齢者、障害者、妊産婦など要配慮者の2次避難も陸路で行われています。

地震の揺れや地盤の隆起等で大きな損害を受けた道路や上下水道管等を、短期間で復旧することは不可能であり、自衛隊の方々が、物資を担いで山道を運んで、多くの孤立地域に通い続けることも、この先ずっと、というのは、やはり現実的とはいえません。極めて不便な環境の中で、長くお過ごしいただく困難を思えば、当該集落の方全員を、十分な支援を行える場所に移動していただくことが、望ましいというになるのだと思います。

孤立集落については「丸ごと避難」という方針が示されましたが、厳しい状況にあるのは、他地域も同様です。

ただ、2次避難先へ移ることについては、自宅や財産が残されたままになること、長年慣れ親しんだ場所を離れることになること等から、抵抗感を感じる方も多くいらっしゃると思います。石川県のまとめによると、2次避難所などで過ごす方は478人にとどまり(1月12日現在)、希望者の伸びは鈍いとのことです。

被災された方の思いを理解し、寄り添うことが強く求められ、「まずは支援が十分に行き届く環境に身を置いていただき、それから、この先の道筋をご一緒に考えて行くこと」を受け入れていただくことが大切になります。

そして、居住地を離れた土地に移ると、当然ながら生活に様々な不自由があり、また、そこでは人も街も変わらぬ日常が行われていることを見て、取り残されたように感じ、不安や孤独感を深めてしまうことがある、とも言われます。

残された自宅などの防犯体制や地域の状況等を、避難先にも届く仕組みにすることや、避難先での生活や心身の状況に応じた、不安を解消できるような手厚く継続的なサポートが必要となるものと思います。過去の災害でも指摘されましたが、「居住する場所」が用意されただけでは不十分で、仕事や学校、生活などでの継続的なフォローも必要になります。こうしたことは、避難先の自治体だけでなく、医療福祉関係者や民間の団体、地域住民の方々などの協力が極めて重要であり、深刻な自然災害がいつどこで発生するか分からない日本では、オールジャパンで助け合う仕組みとマインドが大切になってきます。

能登半島は、集落の中での結びつきや愛着が非常に強いという話もうかがいます。2次避難された先でのコミュニティの存続の意義を考えれば、できるだけ、集落ごとにまとまって、同じ場所に移れるようにする、といった配慮も求められると思います。

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