「第5次中東戦争」に拡大するのか イスラエル情勢…カギを握るのはイランの関与

治安 太郎 治安 太郎

パレスチナ・ガザ地区を実行支配するイスラム原理主義組織ハマスが10月7日、イスラエル領内に向けて数千発のロケット弾を打ち込んで以降、中東における軍事的緊張が高まっている。ハマスは人質130人以上を拉致して連行し、イスラエル軍がガザ地区への攻撃を強化していることから、一部の人質を殺害している。イスラエル側も徹底抗戦の構えで、ガザ地区への地上侵攻が秒読み段階に入っており、これまでの犠牲者数は双方で4000人を超えている。さらなる犠牲の拡大は避けられない状況だ。

イスラエル情勢はどうなっていくのだろうか。その上でカギを握るのがイランの対応だ。今後イランがどれほどこの軍事衝突に介入するかで、その後の状況は大きく変わってくる。10月7日のハマスによる奇襲攻撃について、これまでのところイランは具体的に関与していないと主張している。この点についてはイランが関与してない可能性が極めて高い。仮にこの攻撃でイランの支持などが明らかになれば、イスラエルとイランの軍事的緊張が高まることは避けられず、サウジアラビアとの国交正常化を成し遂げたイランにとっても得策ではない。

しかし、イスラエルがガザ地区に地上部隊を展開し、そこで罪のないパレスチナ市民がさらに犠牲になれば、長年ハマスを支援するイランとしても何もしないわけにはいかなくなる。ハマスの最高幹部イスマイル・ハニヤ氏と最近会談したイランのアブドラヒアン外相も、「イスラエルによる犯罪が続けばいかなることも起こりうる、イランは傍観者でいられなくなる」と警告している。

中東地域において、レバノン・シリア・イラク・バーレーン・イエメンではイランの支援を受けるシーア派武装勢力が活動しているが、今回の件で既に反イスラエル感情を強め、レバノン南部を拠点とする親イランの武装勢力ヒズボラはイスラエル北部に向けてミサイルを打ち込んでいる。イスラエル側も親イランの武装勢力への警戒を強め、ヒズボラに応戦したり、隣国シリアへも空爆を行っている。親イランの武装勢力は米国がイスラエルを支援すれば、米国権益も攻撃対象になると警告するなど、一貫して強硬姿勢を貫いており、地上侵攻となればイスラエルへの攻撃をエスカレートさせる恐れがある。

そういった中、イランが目に見える形で具体的な関与を示さないと、イランのメンツが潰れるだけでなく、中東各地に点在する親イランの武装勢力との間でも摩擦が生じる可能性がある。

今日のイスラエル情勢は、今後の中東情勢の行方を大きく左右しかねない岐路にある。イスラエルとハマスとの交戦が激化し、イランが自ら、また親イランの武装勢力を利用する形で各地にあるイスラエル権益への攻撃を強化すれば、それは第5次中東戦争に発展しかねない。

そして、そうなれば米国の関心は再び中東にも注がれることになり、ウクライナや台湾といった問題に割ける時間やマンパワーが減り、ロシアや中国に隙を与えることになる。今まさに世界は1つの大きな分かれ道に差し掛かっている。

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