サウナ後に食べるサウナ飯は、愛好家の楽しみの一つ。「サ飯」の愛称で親しまれ、肉料理やカレーといったメニューが人気だ。サウナでは汗をかき、体力を使うため食べ応えのある物が人気と考えられるが、具体的なお薦めメニューは何か。愛好家や医師に聞いた。
▽激辛ラーメンや熱々どんぶりで「追い汗」
鳥取県琴浦町は本格的なフィンランド式サウナや豊かな自然を生かし町内外の人を呼び込む「サウナツーリズム」に力を入れている。町役場にはサウナ好きの職員約30人による「サウナ部」がある。部員の2人にお薦めのサウナ飯を聞いた。
週に3回ほどサウナに通う商工観光課の吉田祐介主事(30)は「サウナに入ると体力やカロリーを使っている感じがする。サウナ後は味が濃いものを食べたくなる」と話した。お気に入りは辛いラーメン。サウナで汗を流した後に「うま辛」なラーメンで「追い汗」を楽しんでいる。
お薦めは琴浦町丸尾にある中華料理店「味園」の四川ラーメンやマーボー麺。四川ラーメンは辛さの程度を選べると言い、吉田さんは最も辛い「激辛」が好きという。
サウナ好きが高じて2021年9月、福井県から琴浦町に移住した町地域おこし協力隊・前田桃子さん(23)の一押しはカツ丼。琴浦町徳万の「末広食堂」にある、つゆだくのカツ丼がお気に入り。激辛ラーメンと同じように、つゆがたっぷりかかった熱々のカツ丼で「追い汗」を流せる。
前田さんは「琴浦町にはおいしいものがたくさんある」とうれしそうに話し、中でも鳥取県中西部で親しまれている「牛骨ラーメン」が気に入っている。「ラーメンを食べる時は牛骨ラーメンしか食べない」と笑顔で話し、お薦めのサウナ飯に挙げた。
サウナ後はラーメンや肉料理のほか、スイーツもおいしく感じるという。前田さんは「甘い物は、おやつ感覚で手軽に食べられる」と話し、和菓子製造・山本おたふく堂(琴浦町八橋)の「ふろしきまんじゅう」をお気に入りに挙げた。吉田さんは「サウナ後は体がほてっているので、ソフトクリームがおいしい」と話した。
琴浦町役場サウナ部は部員お薦めの「サウナ飯」を紹介した見開きタイプの冊子を作り、役場や一向ケ平キャンプ場(琴浦町野井倉)内のサウナで無料配布し、同町のホームページでも閲覧できる。冊子は食事メニューとスイーツを紹介した2パターンがあり、県内外の愛好家に好評という。
▽「サ飯」の注意点 医師が薦めるメニューは?
続いて、慶応大医学部特任助教で日本サウナ学会の加藤容崇(やすたか)代表理事に、研究者の観点からお薦めのサウナ飯を聞いた。
加藤代表の専門は、がんの遺伝子検査や研究。がんなどの病気を健康習慣で防ぐ「予防医療」を推進したいとの思いからサウナ活用に着目し、サウナの健康増進効果について研究している。著書に「医者が教えるサウナの教科書」(ダイヤモンド社)がある。
加藤代表によると、汗をかくと体からナトリウム、カリウムなどが失われる。ナトリウムやカリウムは多くの食事に含まれるため、失った成分を補うという点では、メニュー選びで慎重になる必要はないという。
サウナに入った後は副交感神経が優位になって消化管が活発に動くため、ガッツリ系の料理を食べても負担を感じにくいと考えられる。加えてサウナ後は食欲が増しやすいため、肉や揚げ物といったメニューを食べる人が多いが、加藤代表は「カロリーを制限しないと、ついつい食べ過ぎてしまう」と注意点を指摘した。
加藤代表によると、サウナ後は感覚が敏感になり、カロリーが高い食事でなくても満足感を得やすいという。野菜や魚といった食材はカロリーが低く、素朴な味わいが魅力。サウナ後に食べると、普段は感じられないような細かい味わいを感じることができて面白いという。加藤代表自身は「サウナの後はおでんやそば、夏場はそうめんなどを食べることが多い」とあっさり目だと紹介した。
おなかがすくと食べ過ぎてしまうからと、食事の後にサウナに入る人もいるかもしれないが、満腹時のサウナは消化不良を起こし腹痛が生じやすいという。サウナに入る前、どうしても空腹が気になる場合は満腹になるまで食事をするのではなく、軽く空腹を満たす程度で留めたい。
とっておきの地元グルメを見つけたり、普段は分かりにくい繊細な味わいを感じたりと「サウナ飯」にはさまざまな楽しみ方がある。体を温めて「ととのう」だけでなく、お気に入りのメニューで心と体を満たすのもサウナの魅力の一つだと感じた。