Aさん(70代女性)は、自分名義の一戸建てに息子夫婦と孫2人の5人で約15年間同居しています。この同居生活のきっかけは、息子夫婦が妊娠を機に結婚したことです。その当時、経済的に余裕がなかった息子夫婦を助けるためにも、Aさんが同居を誘いました。
さらに、生活費や住宅費などもAさんが多く負担しています。しかし嫁姑関係は終始悪く、1年ほど前の口論をきっかけにAさんは家を出て別居することに。
そんななか、ある日Aさんは息子から離婚したことを知らされます。それをきっかけに、Aさんは息子とともに今まで住んでいた家に戻ろうと考えました。しかし息子の元嫁と孫たちは、そのまま家に住み続けており、「長年住んできた家だから出て行けない」と言い、引っ越しをするつもりはありません。
息子の元嫁の言い分にAさんは「離婚したから元嫁とは他人。私名義の家から出て行ってもらうことはできないの?」と悩んでいます。このような場合、Aさんは離婚後の元嫁に退去を求めることはできるのでしょうか。Authense法律事務所の新町佳史さんに話を聞きました。
Aさんは原則として元嫁に退去を求めることができる
ーAさんのような場合、離婚後の元嫁に退去を求めることはできますか。
原則として可能です。住宅の名義がAさんである以上、所有者として建物を使用・収益・処分する権利を持っています。このケースのように親族間で無償同居していたケースでは、法律上は「使用貸借(無償で貸す契約)」と評価されることが多く、この関係は一定の事情があれば終了できます。離婚によって家族関係が解消されたことは、終了理由の1つとして考慮されるでしょう。
ただし、実際は同居の経緯や生活状況、当事者の関係性なども重視されます。また、突然の退去要求が「権利の濫用」と判断される場合もあります。そのため、法律上は退去請求が可能であっても、現実には段階的な対応が求められるケースが多いです。
ー元嫁だけでなく孫も住んでいる場合、退去を求めることは可能でしょうか。
孫が同居しているという事情だけでは、所有者の権利は制限されません。しかし、未成年の子どもが生活している場合、生活への影響が懸念されます。裁判になった場合でも、子どもの居住環境や生活の安定といった事情は一定程度考慮される可能性があります。
ーこのような場合、どのような手順で退去を求めるのが望ましいのでしょうか。
基本的には、①話し合い②書面での通知③法的手続き、という流れになります。
まずは当事者間で協議し、合意に至らない場合は、内容証明郵便などで使用貸借の終了や退去を求める意思を明確に伝えます。応じない場合には「建物明渡請求訴訟」を提起し、最終的には強制執行で対応することになります。
なお、鍵の交換、荷物を勝手に運び出すといった“実力行使”は原則として認められていません。このような行為は違法と評価される可能性があり、かえってトラブルを拡大させるおそれがあります。
同居の経緯や合意内容を整理したうえで、「転居先が決まるまでの期間を設ける」「引っ越し時期を調整する」といったように段階的に対応しましょう。必要に応じて、専門家へ相談してみてはいかがでしょうか。
◆新町佳史(しんまち・よしふみ) 弁護士/Authense法律事務所
これまで企業法務にも携わりつつ、現在は相続、離婚、不倫慰謝料など幅広い分野にも対応。その累計相談件数は1万件を超える。依頼者1人ひとりと真摯に向き合い、言葉にならない思いや背景事情にも丁寧に耳を傾け、本音を引き出す対話を重視。スピーディーかつ友好的な解決へ導く粘り強い交渉力を強みとする。
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