餌やりトラブルで「ぶさいく」「汚い」と嫌われた猫 主婦が保護するため一大決心、愛情が生んだシンデレラストーリー

ふじかわ 陽子 ふじかわ 陽子

野良猫は糞尿被害が出るため、猫が好きでない人からすると害獣です。しかも、その害獣を世話している人が、好かれていない人であったら余計に嫌われてしまいます。愛知県のにゃんちょすちゃん(4歳)も、近所から疎まれる存在でした。

ボロ雑巾のように扱われる猫

にゃんちょすちゃんは子猫のころから、近所では変わり者と評判の女性からご飯をもらっていたのだそう。この女性が亡くなると、どこからともなく自転車で餌をばらまいていく別の女性が現れ、その人が撒くご飯で飢えをしのんでいたとのこと。

餌やりトラブルで、にゃんちょすちゃんはご近所の嫌われ者に。「ぶさいく」「汚い」と罵られることも。にゃんちょすちゃんはただ生きているだけなのに…。

その状況を気の毒に思った近くに住むOさんは、家に迎えたいと少し考えました。しかし、マンションの契約書には敷地内に動物を入れることすら禁止されています。家の中で飼うなんてもってのほか。

夫にペット可の物件へ引っ越したいと相談しても、「ペットを飼うメリットって何?」なんて言うんです。でも、Oさんはにゃんちょすちゃんが嫌われている現状が我慢なりませんでした。せめて、地域猫として存在を許してほしい。

動き出した時計の針

そこで近くの保護猫団体に相談をし、TNRすることにします。捕獲器を借り、いざTNR。と意気込んだものの、にゃんちょすちゃんはすでにOさんに抱っこを許していたので、そのままひょいと車へ。

これ幸いと動物病院で避妊手術し2日間の入院後、にゃんちょすちゃんのテリトリーに戻しました。Oさんはにゃんちょすちゃんが、すぐびゃーっと走って物陰に隠れると思っていました。

しかし、にゃんちょすちゃんはバケツに溜まった雨水を一口飲むと、Oさんを見つめたのです。Oさんの心は揺れました。でも、マンションの規約があります。「ごめんね」とその日は帰りました。

次の日は、にゃんちょすちゃんを連れてご近所周りです。「この子は避妊手術をしています。糞尿被害があれば、私に連絡をしてください」と。1軒1軒、チャイムを鳴らして、電話番号を書いたメモを渡しながら説明していきます。中には「なんてことするのよ!」と怒る人もいましたが、多くの人は「それならば」と言ってくれました。

地域猫になったけど…

それから数日が経ち、Oさんが歩いていると遠くににゃんちょすちゃんの姿が見えました。そのそばで小学生の男の子たちがにゃんちょすちゃんを「かわいい」と言っています。Oさん念願の、地域の人に愛される姿を初めて目にしたのです。それなのに、Oさんの心はかき乱されました。

「勝手に触らないでよ!」

そんな激しい嫉妬心に、Oさんは気づきます。

「私、あの子のことが好きなんだ」

それからの行動は早かった。まずは夫を説得です。Oさんがここまで切羽詰まった頼み事をするのは初めてで、夫はしぶしぶながらも引っ越しを了承してくれました。次に、引っ越しまでの期間、にゃんちょすちゃんを預かってもらう保護猫団体を探します。地域猫を迎えると決めた後、捕獲できないことが多いと聞いたからです。

保護猫団体のサポートを得て

最初に捕獲器を貸してくれた保護猫団体にお願いをしたのですが、ここは満員。他もあたったのですが、どこも厳しい返事でした。そんな中、ある保護猫団体は、初めて猫と暮らすOさんの不安を受け止め、長い時間話にも耳を傾けてくれました。ここなら大丈夫と、Oさんはにゃんちょすちゃんを預けます。

さあ引っ越しだ!怒涛の如く荷造りと荷解きをし、ようやくにゃんちょすちゃんを迎える準備が整いました。

保護猫団体に迎えに行くと、外耳炎の治療もお腹の駆虫もしてもらい、見違えるような美猫になっているではありませんか。保護猫団体のスタッフは「どんな子が来るかと思っていたら、とても可愛い子!その子を当たり前にお世話しただけです」と。

Oさんはその言葉に胸がいっぱいになりました。ご近所さんからも夫からも理解されない気持ちを、ようやく受け入れてもらえた心持ちになったのです。

まるでシンデレラ!

その後、お家で暮らすようになったにゃんちょすちゃんは、とてもお喋り猫に。Oさんが話しかけると必ずお返事しますし、何かあったら報告もしてくれるんですよ。可愛くてたまりません。

夫も「ペットと暮らすメリットは?」なんて言っていたにも関わらず、いざ一緒に暮らし始めるとメロメロに。お出迎えをしてくれるにゃんちょすちゃんのため、帰宅後は念入りに手を洗うようになったんです。綺麗な手にして、蝶よ花よのお姫様扱い。

もう雨水をすすり、ご近所さんから罵声を浴びされるにゃんちょすちゃんはいません。華麗な転身を遂げました。まるでシンデレラかのよう。

解けない魔法をかけるには

そんなにゃんちょすちゃんにFIPが見つかったのは、2023年3月のこと。症状は軽いものの数値が思わしくないため、毎週動物病院に通っています。当のにゃんちょすちゃんは元気いっぱいで、ご飯もいっぱい食べてくれます。でも、Oさんの不安は消えません。

「私のわがままで治療してもらっています。にゃんちょすは通院を嫌がっていますが…。加えて言うなら、家に来てもらったのも、私のわがまま。だから、にゃんちょすに穏やかな生活を送ってもらわなくてはならないんです」

この使命感と愛情が、にゃんちょすちゃんをお姫様にしてくれた魔法の杖のようですね。時計の針が12時を指しても解けない魔法を、にゃんちょすちゃんにかけました。

でも、Oさんは最初から魔法の杖が使えたわけではありません。助けてくれた数々の保護猫団体の助言やサポートにより、にゃんちょすちゃんをお姫様にすることができたのです。

もしあなたが野良猫でお困りなら、お近くの保健所か保護猫団体に相談してみてはいかがでしょうか。きっと魔法の杖の使い方を授けてくれるでしょう。

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飼い主さん【NEKO様さん】
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