宮台真司さん襲撃犯とみられる41歳男が死亡…実名非公表の理由、逮捕できなかった要因は? 元刑事・小川泰平氏が解説

小川 泰平 小川 泰平

 昨年11月29日、東京都八王子市の東京都立大キャンパスで教授の社会学者・宮台真司さん(63)が襲撃されて重傷を負った事件で、警視庁が殺人未遂容疑で行方を追っていた容疑者とみられる41歳の男が昨年12月17日に神奈川県相模原市内の自宅で死亡していたことが2月1日、分かった。自殺とみられている。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は当サイトの取材に対し、今回の事件を総括した。

 小川氏は「事件の発生から約2週間後に公開捜査となり、犯人とみられる男の映像が流された頃から、(容疑者とみられる)家族の話では本人に『食事が喉に通らない等の異変があった』ということです。結果論ですが、その時に、家族から警察に相談があればよかったのかと思いますが、手かがりが少ない中、犯行時に乗っていた自転車の購入履歴等で容疑者が判明したが、それは後付けで、自殺をしたのは、逮捕状がまだ取られていない、捜査線上に浮かぶ者として任意で話を聞く段階だった。ですから、12月17日の時点では名前が浮上していたとは思えない」と経緯を説明した。

 容疑者とみられる男が死亡したと報じられた段階で、その実名が公表されなかったことについて、小川氏は「今回、氏名が明らかにされていないのは、動機的なことが全く分かっていないことが大きい。警察は本人への事情聴取ができないことを考慮しているのかと思います。現時点で犯行をほのめかす内容を遺書などに残しているわけでもないようですから、まずは動機の面を追及してから、今後、氏名の公表に踏み切ることはあると思います。また、本人の病歴や通院歴、入院歴等を考慮している可能性もゼロではないと思います」と補足。さらに、背後関係については「犯行の手口だけを見ると単独犯のような気がしますが、それも今後の捜査で調べていくでしょう」と付け加えた。

 公開映像で容姿がはっきりと認められたにもかかわらず、具体的な情報提供がなかったことについて、小川氏は「公開捜査を始めた当日と翌日に120数件の情報が警視庁に寄せられました。ただ、似たような人を見たという情報があっても、知人等から『この者がどこの誰だ』という情報はなかった。身長が180センチ以上ある人物だったので、一般的に、そのくらい長身の人は周囲にそれほど多くはないので、ある程度、限定されて、もっと情報が寄せられるのかと思われたが、全く情報がないということは、少なくともここ数年間くらいは周囲とのコミュニケーションがないような生活を送っていた可能性が強いのではないかと思いました」と推測した。

 では、相模原市内の自宅で死亡していた男に警察が立ち会った時点で、公開映像の男と同一人物である可能性に気づかなかったのか。

 小川氏は「警察で自殺を取り扱えば、当然、検視もします。(警察の視点が)その自殺に『事件性があるか、ないか』ということだけになっていた可能性がある。実は、相模原で防犯カメラに(公開捜査の男が)写っているという情報もあったんです。男が相模原に住んでいるかどうかは別にして、行動範囲内であることは分かっていたので、そのあたりをもう少し詰めていればよかったと思う」と指摘した。

 事件現場となった東京・八王子から、神奈川・相模原にある男の自宅まで10キロほど離れ、自転車で1時間近くかかる距離という。小川氏は「八王子と相模原は(車などを使えば)近いのですが、東京と神奈川ということで、結果的に、警視庁と神奈川県警で情報の共有がなかったことも残念に思います」と指摘。今後に向けて「男が残したパソコンやスマートフォン等の通信機器を調べ、検索履歴やいろんな掲示板への書き込み情報などを捜査して動機を究明していくことは必要だと思います」と締めくくった。

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