時代劇なのに「オタ芸」シーン 映画「近江商人、走る!」の監督が明かす撮影秘話

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 江戸中期の大津の米問屋を舞台に、知恵を絞って商売で勝負に出る近江商人の姿を描く時代劇映画「近江商人、走る!」が、全国で公開され話題になっている。県内各地でロケを行った同作は、琵琶湖や八幡堀(近江八幡市)など滋賀ならではの風景もふんだんに登場する。三野龍一監督(34)は「『三方良し』の精神を持つ近江商人に着目したことで、単に商売を描くだけの映画とならず作品に深みが出た。近江商人に誇りを持つ滋賀の人たちに愛される作品になってほしい」と願う。

 同作は、「世のため人のために働け」との教えを受けて米問屋で働く主人公の銀次が、商才を発揮して多くの町の人々を助け、さらに悪徳奉行のわなで千両の借金を負わされた店を救うため、米の先物取引を始めるという内容。オリジナルの脚本を映像化した。

 作中で銀次は、客足が遠のいた茶屋に客寄せのアイデアを出したり、大津から約15里(60キロ)離れた大坂の堂島米会所の取引価格を迅速に入手するため「旗振り通信」という方法を駆使したりと、三方良しの精神で苦難を切り開いていく。時代劇にエンタメ性を取り入れたのも特徴といい、茶屋のシーンでは現代のアイドル応援を想起させる「オタ芸」を取り入れるなどした。

 撮影は2021年5~6月、江戸時代の町並みを再現した彦根市の撮影スタジオ「彦根オープンセット」のほか、八幡堀、東近江市の五個荘近江商人屋敷、甲賀市の油日神社、米原市の琵琶湖岸など県内各地でロケを行った。京都市右京区にある松竹撮影所と東映京都撮影所も利用した。

 京都造形芸術大(現京都芸術大)出身で学生時代によく滋賀を訪れたという三野監督は「三方良しは、現代の人々にも、商売をしていなくても通じる考え方。分かりやすいエンタメ性も取り入れ、時代劇になじみのない若者も楽しめる作品に仕上げた」と話す。

 銀次を演じた俳優の上村侑さん(20)は「広い視野を持ち、世を良くしようと尽くす近江商人の理念は、周りの人を大切にし、少々おせっかいな銀次のキャラクターに生かされている。ヒーロー映画としても楽しめる」と薦める。

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