父が描き続けた娘の日常 なつかしい思い出に「ヤバい泣く!」…9歳の娘自身も感じた「かけがえのない“今”」

宮前 晶子 宮前 晶子

「なつかしいもの。」と題して、育児の思い出を切り取った線画に静かな感動が広がっています。

父親である、ひとり@育児マンガ「ぽんすけ成長日記」連載中さん(@hitorie1983 以下ひとりさん)が描いたのは、小さな体から大きな声を出して泣く様子、抱っこしたときミルクのにおいがすること、初孫を抱く祖父の表情、大きいお尻のオムツ姿、いろいろなものに興味を出す様子、初めて立った時のドヤ顔、舌っ足らずでイチゴのことを「ちちご」と言っていたとき、動物園に行ったときのこと、乳児特有の愛くるしい横顔ライン、赤いほっぺ、変顔、ランドセルを背負った日、など日常のワンシーン。

目にした人たちからは、
「全ての絵が僕の涙腺を刺激」
「共に生きていく以上全ての昨日が懐かしいものに変わっていく」
「いままでもこれから先も尊すぎる」
「これは披露宴でスクリーンに音楽と共に流れて号泣するやつ」
「じーじの嬉しそうな顔で涙が…」
「親の気持ち、おじいちゃんおばあちゃんの気持ち考えたら涙溢れてきました。尊い存在として自分を見てくれてたんだな」
などあたたかい言葉、言葉、言葉!

そして、最後に、大きくなった9歳の娘さんと妻の近くで、「何気なく過ごしているこの今も、きっとすぐになつかしい『あの頃』に変わる。振り返ればキラキラした時間なんだろうなぁ」と絵を描く自分自身の姿を描いています。

「共感してもらえてうれしい」と語るひとりさんに、制作への思いなどを伺いました。

親にも子どもにも「今」はかけがえのないもの

――小学3年生の娘さんの生まれてから現在までを描いたのは、何か理由があって?

「スマホで撮った小さい頃の娘の写真を見ている時に、描きたくなりました。今も大切な存在であることに変わりはないけど、小さい娘は幼くてかわいくて!絵に描いて残したくなったんです。ちょうど、毎日投稿をしたいなーと思っていた時期だったので、スマホからランダムに娘の写真をピックアップしてはドローイング、ツイッターに上げるというのを始めました。それが、今年の5月頃です」

――「なつかしいもの。」をテーマにした1枚1枚から、ひとりさんの愛情があふれていますね。

「スマホを見て、あのときこうだったなーと感慨の湧いたものを選んで、1日1作ペースでドローイングしました。 写真をただ眺めるよりも、絵に描くためにはじっくり時間をかけて見る必要があり、当時のことを思い出したり、子どものポーズやフォルムのかわいらしさにあらためて気がついたりできましたね。絵に言葉を添えることで、写真だけ見たときよりもストーリーを感じられる気がして、自分でも気に入っています」

――投稿はずっと続けているのですか?

「毎日投稿は1カ月弱でやめてしまったのですが、最近見返していた際に、描いた絵を時系列に並べると子どもの成長に沿って思い出をシェアできるなーと考えるようになりました。それで、バラバラだったドローイングをひとつのマンガ作品としてつなげてみたのが、今回の連続投稿。 ひとつの作品としてまとまりを持たせるためにいくつか描き足しています」

――絵から新生児のミルクのにおいやふわふわの肌、笑わせようとする娘さんの周囲で笑う人の声などを感じられるのが不思議です。

「写真を見たときやシーンを思い出したりしたときに感じた親としての自分の気持ちを絵に表すことを心がけていました。ただの写実だったら、絵にする意味はあんまりないなーと思ったので、なるべくシンプルな絵になるようにしています。注意したのは、線の選び方。たとえば、横顔の顔のラインのかわいらしさを伝えるために、おでことほっぺのラインを何度か描き直しました。

伝えたいことを伝えるのに、セリフを入れたり、「ぶふぅ〜」と声?擬音?(笑)を入れてみたりも。あんまり表現に縛りを入れないで描いた結果、マンガとドローイングの中間のような作品になったかなと思っています」

――娘さんは、絵を見て何か言ってました?

「“すごい!! ”が第一声でした。その後、“なんか読んだら悲しくなってきた 確かに家族と過ごしている「今」も当たり前じゃ無いんだな”と言ったのは、僕としては意外でした。

でも、親だけでなく、子どもにとっても「今」がかけがえのないものだと感じてもらえたようで、それはうれしかったです」

ひとりさんの絵が「これから」の人もいれば「もう成人していて懐かしい」という人などさまざまな人が目にしている投稿には、あたたかなコメントがたくさん寄せられています。特に印象に残ったものは『これを見て泣く私は、子供時代を自分に重ねているのか、それとも子の成長を懐かしんでいるのか』とひとりさん。「いやいやそうなんだよなと思わされました。親をやりながら、子としての自分に気付くことが自分にもあって……、僕のツイートが未来や過去に思いを馳せるきっかけになれたとしたら、すごくうれしいです」

コミチ国際協力マンガ大賞 入賞・withnews×コミチ 大賞3回・第4回「医療マンガ大賞」特別賞の受賞歴を持つひとりさんは、TwitterやInstagramに自身の作品を投稿。「絵やマンガで、世界をすこし優しくできたらいいなと思っています」。

■ひとり@育児マンガ「ぽんすけ成長日記」連載中さんTwitter @hitorie1983
Instagram https://www.instagram.com/hitori19830406/

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