動物園のロバが脚に“ブーツ”…その意外な理由 ケガ?おしゃれ?冷え性?担当者に聞いた

茶良野 くま子 茶良野 くま子

「ロバがブーツ履いてる!」「冷えてきたから靴下?」「ケガしてないよね??」

神戸市立王子動物園で暮らすメスのロバが、何やらブーツか靴下のように見えるもので4本の脚をそれぞれ覆われ、来園者からはケガではないかと心配する声も聞こえてきます。展示場前のお知らせには、「サシバエによる吸血、ウイルス感染を防ぐため」とありますが、もう1頭のオスにはしておらず…?

ロバは11歳のメス、ナズナ。動物園に尋ねると、防虫効果を高め、ナズナに負担がないよう試行錯誤した結果だとか。見守る来園者の気持ちにも配慮して、たどり着いた形でした。詳しい話を同園の飼育展示係長・谷口さんに聞きました。

—おしゃれな脚カバーですが…。

「サシバエに刺されないよう、事務用のアームカバーと作業用サスペンダーを組み合わせたもので、脚全体を覆って虫が入らないようにしています。サシバエの影響には個体差があり、ナズナがよく刺される傾向にあります。夜もそのままつけているんですよ」

—つけるのが大変では?

「日頃からコミュニケーションを取るよう心がけているので、その甲斐もあって短時間であればおとなしく包帯の巻き直しなどをさせてくれます。でも、頻度が多いとやはり負担が増してしまうため、巻き直すのに時間がかかる包帯ではなく、つけやすいアームカバーを利用した『脚カバー』に落ち着きました」

—包帯ぐるぐる巻きから“進化”したのですね

「はい。最初は伸縮包帯のみ、次にそれをサスペンダーで吊っていました。そして包帯をアームカバーに変えサスペンダーで固定する方法に。脱げにくくて、ナズナにとっては締めつけも少なく、防虫もできています」

—サシバエは、家にいるようなハエとは違うのですか

「吸血性のハエで、オスもメスも血を吸います。イエバエと外見は似ていますが、硬くて長い針状の口器を持っていて、吸血する時には強い痛痒さを伴うため、動物にとっては大きなストレスになってしまいます。気温が上昇する春から発生し、秋に最も多くなります」

—サシバエ自体を減らすのは難しいのでしょうか

「発生源は動物の糞や堆肥で、牛や馬などの大型動物を好んで1日2~3回吸血するとされていて、吸血時以外は草木にとまって休んでいます。キリンやシマウマ、カンガルーについても飼育環境を清潔に保つことを心がけ、サシバエが寄ってこないようにしています。糞の片づけなど獣舎内の清掃は毎日1〜3回。清掃で土が減ると水溜まりができて発生源になるので、土を追加するなどして整地しています。また、虫が発生しやすい排水溝は特にこまめに掃除し、定期的に薬剤散布もしています」

 

ナズナとオスのブンタ(9歳)は繁殖を目指すカップルですが、同居するとケンカしてしまったりお互いにストレスになるとのことで最近は別々に展示。施設整備の関係で別の場所に移動後は同居し、元気に過ごしているそうです。

サシバエ対策中というお知らせ掲示はあっても、来園者からは時折ナズナの脚を心配する声も。しかし谷口さんは「アームカバーを使っている理由は、防虫効果とナズナの負担減だけでなく、包帯にしないことでケガを心配されることが減るのではと考えてのことでした」と話します。

飼育担当者が工夫を重ねて作った脚カバーには、動物はもちろん、見る人をも思いやる優しさが込められていました。

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