かつての私に伝えたい「今は孤独かもしれないけど、必ず日本の家族ができるよ」 1匹の猫が留学生に紡いでくれた、運命の出会い

ふじかわ 陽子 ふじかわ 陽子

茨城県つくば市で暮らすジンジンくん(2歳)は、お母さんが大好きなキジトラ猫。お母さんのYさんは近くの国立大学に通う大学院生です。中国人のYさんは元々大学職員でしたが、一念発起して博士号取得のために学生に戻ることにしました。30歳の今は最後のチャンスだと。

Yさんのライフスタイルが変わっても、ジンジンくんのルーティンは同じ。朝はYさんの夫、同じく中国人のCさんが出してくれるご飯を食べてから、CさんとYさんを見送ります。見送った後は、妹分のメイメイちゃんと一緒にお昼寝。

夕方、Yさんが帰宅すると嬉しくてたまりません。熱烈大歓迎!運命の再会が毎日あるのですよ。ルンルンと玄関まで走っていき、Yさんの前でゴロン。それからお腹を撫でて、ってお願いするんです。Yさんが撫でてくれると嬉しくてたまらず、またゴロンゴロン。

ジンジンくんの日々は、感動に包まれています。Yさんの日々も、感動の連続なんですよ。それはジンジンくんがいてくれるから。11年前、初めて来日した時には思いもよらない毎日を送っているのです。

19歳の時、Yさんは留学のために来日。そのころから、ペット可のマンションに住んでいました。子供のころからずっと「いつか猫と暮らしたい」と考えていたんです。しかし、学生生活は「猫との暮らし」どころの話ではありません。勉強と実験がとにかく忙しい。日本語も今ほど上手ではありませんから、ついていくだけで精一杯。

少し日本に慣れたころ、保健所から譲渡してもらおうと応募したこともあります。けれど、単身者には譲渡不可…。保護猫団体も同じです。それでも、ペットショップで買うことは避けていました。中国にいたころの、友人知人の自慢を思い出すから。

「この猫は〇〇万元もしたのよ」

「この猫はブランドものなの」

そんな自慢を聞くたびに、Yさんは疑問を抱いたのだそう。血統書の猫も野良猫も同じ「猫」なのに、どうして自慢をするの?自慢するための猫なら、それは「家族」ではない。Yさんが迎えたいのは、「家族になってくれる猫」。出会いを待ち続けました。

来日して9年目の2020年7月のことです。Yさんは家族になってくれる猫を探すため、里親募集サイトを眺めていました。「今日もダメかな…」と思っていたら、急に目に飛び込んできた猫がいたのです。生後3カ月ほどのキジトラの男の子で、バツグンに可愛い。しかも、同じつくば市に住んでいるではありませんか。

「この子だ!」

この子猫こそ、ジンジンくんです。

このころ、Cさんとは付き合い始めたばかり。Yさん一人でお迎えにいきます。ジンジンくんは初対面のYさんを威嚇もせず、静かに抱っこされたんですって。だから名前を「静々」に。中国読みで「ジンジン」です。

Yさんの家に迎えられたその日からジンジンくんは、Yさんのあとを追っかける「家庭内ストーカー」に。トイレにも着いてくるもんですから、Yさんはトイレの扉を閉められなくなりました。Cさんにもよく懐き、Cさんもせっせとお世話を焼きます。ジンジンくんと一緒にいるCさんを見て、Yさんは「思ったより優しい人だな」と感じたのだそう。

2021年12月、ジンジンくんのお友達を探すべく、再び里親サイトを巡回。すると今度は三毛猫の子猫が目に飛び込んできたのです。すぐ連絡を取り、Cさんと一緒にキャリーバッグを持って保護主さんのもとへ。着いた途端、なんとその三毛猫は自分からキャリーバッグの中へ入ってきたではありませんか。運命です。

その三毛猫は「妹々(メイメイ)」と名付けられます。Cさんは自分が持っていたキャリーバッグに入ってくれたもんですから、可愛くて仕方がない。これまたせっせとお世話を焼きます。

そんなCさんの姿を見てYさんは、「この人と結婚するのが良いかも」と感じたのだそう。今まで自分は生涯独身で、学問と共に生きようと思っていたのに。出産願望なんかもちろんありませんでした。でも、この人となら一緒に子育てができる。そう確信したと言います。

2022年8月、二人は結婚。猫2匹と人間2人の暮らしが始まりました。本当に賑やかで、いつも笑い声が絶えません。この日々に、Yさんは11年前に初来日した自分へ言いたいことが出来たのだそう。

「今は孤独かもしれないけど、必ず日本の家族ができるよ。ご縁を大切に」

ジンジンくんとの出会いが、家族を作ってくれた。第二の故郷、つくば市ももっと愛せるように。異国の日本で生きていこうと思えたのは、ジンジンくんがいてくれるから。

Yさんの日本生活第2章の幕が上がりました。

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