「クセがすごい」矢印だけの信号、船接近で通行禁止…岡山のご当地交通ルールを集めてみた

山陽新聞社 山陽新聞社

 「なんじゃこりゃ?」。車を運転中に思わず声が出てしまうような、ご当地交通ルールに出くわしたことはないだろうか。信号機そっくりなのに「青黄赤」ではなく「←↑→」の矢印が付いた道路表示器、山中の薄暗いトンネル入り口で光る「対向車接近」の電光表示板…。秋の全国安全運動(21~30日)に合わせ、岡山県で見つけた「クセがすごい」交通事情を取材した。

「青黄赤」じゃないよ「←↑→」

 のどかな田園風景が広がる岡山市南区迫川地区。JR迫川駅前を通り、東西に延びる市道約500メートル区間、生活道路から市道に入る計5カ所に、不思議な表示器はあった。遠目には信号そのものだが、近づくと「青黄赤」のLEDはない。あるのは「←↑→」の矢印なのだ。狭い市道は東向きと西向きの交互通行になっており、現在の通行方向が表示されている。ややこしいのが「↑」。市道を車が走っていない時だけ、「真っすぐ進め」の矢印が出てくるのだ。T字路になっている場所は「←・→」となっている。

 設置した岡山県警によると、これは信号機ではなく、気温や渋滞情報のように安全をサポートする「表示器」に当たる。県内ではここだけで、全国的にも珍しいという。表示器の指示に従わなくても交通違反にはならないが、矢印と逆に進めば正面衝突の可能性もあることから、「信号同様、指示に従うことで安全を確保できる。運転者は絶対守ってほしい」(県警)としている。

船が近づくと通行禁止に

 車や自転車、歩行者が行き来する小さな赤い橋。玉野市築港の市道に架かる桜橋(長さ16・8メートル)は、船が近づくと橋桁が跳ね上がり通行禁止になる県内唯一の可動橋だ。

 瀬戸内海に注ぐ汐入川の河口に位置。川上にある製油工場に向けて原料の大豆やトウモロコシを積んだ船が通過する時、「通行止」と書かれた遮断機が下りてくる。

 橋桁の上げ下げは、市から委託を受けた地元の男性(74)が担当。朝昼夕の車の通行が多い時間帯は可動できなかったり、海が荒れて船が運行できなかったりと制約もあり、橋桁を動かすには経験が必要だ。

 橋桁を引っ張るワイヤーをモーターで巻き上げるため、上がり切るまで約4分かかり、ひと月に30~50回稼働する。待機中の車内から「早くしないとフェリーに乗り遅れる」「仕事に間に合わない」と悲鳴が聞こえることもあるそうだ。男性は「それだけ住民にとっては大切な橋。守り続けることで地域に貢献したい」と話している。

トンネル入り口に「対向車接近」

 車1台がやっと通れる道幅の山道が続く高梁市成羽町の羽山地区。恐る恐る通行していると、前方を遮るようにそそり立つ岩壁が眼前に迫ってきた。この岩を貫くのが、羽山第2トンネル(県道、約30メートル)。内部は薄暗く、ごつごつした岩肌がむき出しになっていて「途中で崩れてこないだろうか」と不安になった。

 このトンネル、のみを使って手作業で掘り進める難工事だったとか。県教委の報告書によると、高さ約40メートルの岩の上から作業員を吊り下げて工事に当たり1921年に完成。以来、赤色顔料のベンガラ生産で栄えた同市吹屋地区と、成羽地区を結ぶ交通路の役割を果たしてきた。

 ここから西へ約900メートル、第1トンネル(約100メートル)で見慣れない表示を見つけた。薄暗いトンネル入り口に「対向車接近」の電光文字が光っている。トンネル内は車1台がどうにか通れる狭さで、鉢合わせを避けるため電光板が両側の入り口に置かれているのだ。

一方通行の向きに要注意

 岡山市中心部を南北に延びる西川緑道公園筋。西川を挟んで両側の市道は一方通行となっていて、市民にとってはおなじみの場所だ。ただ、岡山駅前の桃太郎大通りとの交差点を境に、一方通行の方向がクロスして変わるのが特徴的。県外出身の記者は20年ほど前、初めて通った際に目が点になったのを覚えている。

 「X」を書くように一方通行が交差しているが、北向き方向が青信号の場合、南向き方向は赤信号といった具合に、桃太郎大通りへは同時に進入できない仕組み。当然、知らぬまま真っすぐ進むと交通違反になる。交通量も多く、2007年1月には自転車の男性が車にはねられ死亡する事故があった。走り慣れた人でも注意が欠かせない。

 ところで、なぜ一方通行が途中でクロスするのか。県警に聞くと、一帯の規制が始まった1970~80年、路線バスが入れない箇所があったことが主な理由という。ご当地の交通ルールは地形、歴史、交通量といったさまざまな要素から出来上がっていると再認識した。

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