コオロギってどんな味? 養殖場に記者が潜入&試食 過疎化や農業の担い手不足など課題を抱える町の解決策となるか?

山陽新聞社 山陽新聞社

 栄養価の高さやSDGs(持続可能な開発目標)の観点から注目されている昆虫食。中でも食用コオロギは菓子材料などに使われ、認知度が高まりつつある。そのコオロギを養殖する企業が岡山県内にある。吉備中央町竹部の「陸(おか)えびJAPAN」。どうやって育てているのか現場を探り、試食もさせてもらった。さて、そのお味は―。

 「リンリンリン」とにぎやかなコオロギたちの鳴き声が室内に響き渡る。

 倉庫(木造2階)の2階を転用した養殖場。65平方メートルの室内に、プラスチック製のコンテナ約100個が3段に並ぶ。コオロギの飼育ケースだ。養殖する種類は、食用のほか、動物の餌などとして出回るヨーロッパイエコオロギ。体長約2センチの薄茶色で、国内で一般的なエンマコオロギよりやや小さい。

 岡田輝喜社長が、食用として乾燥させたコオロギを出してくれた。姿はそのまま。それでも記者は田舎育ちのおかげか、抵抗感はない。口に入れた。パリッとした食感とともに、香ばしい風味が広がる。意外といける。臭みもない。干したサクラエビのようだ。それが社名の由来か、と納得した。

 養殖は、空調で室内を25~30度に保ち通年で行う。コンテナの中は紙製の卵パックを立てて重ね、コオロギが自由に動き回れるようにする。紙に湿気を吸わせる調湿の狙いもある。コンテナ1個で約千匹を成育。餌、水、産卵用の土がそれぞれ入った容器を置き、卵を採取して育てるサイクルを繰り返す。餌は主に米ぬかと藻類。岡田社長は「将来は捨てられる野菜や果物も使い、食品ロス削減に貢献したい」と語る。

 ふ化から約1カ月で成虫になり、熱湯で殺菌し、乾燥させるなどして出荷。1袋(11匹入り)216円で町内の道の駅で販売しているほか、食品原料として県内のメーカーに出荷し、これまでに地ビールや菓子、おつまみを共同開発した。

 岡田社長は2020年秋に東京から吉備中央町に移住。きっかけは同町に近い岡山市北区足守地区の地域イベントだった。本業だったマッサージの講師として12年から毎年参加し、住民らと交流。過疎化や農業の担い手不足、規格外の桃の廃棄など、さまざまな地域課題を耳にした。それらが昆虫食に関する知識とつながったという。

 さらにインターネットなどで養殖のノウハウを詳しく調べ、「コオロギは雑食で何でも食べるし、養殖作業は肉体的負担が小さく高齢者でも取り組みやすいはず」と確信。将来的な事業拡大との兼ね合いもあり、同町で倉庫を賃借し21年春、本格的に養殖を始めた。

 今後は販路を広げるとともに、昆虫食の普及啓発に一層力を入れる方針だ。岡田社長は「まだまだ身近に感じられない人は多い。実際に食べて、おいしさと昆虫食の可能性を知ってほしい」と話す。

 昆虫食は国連食糧農業機関(FAO)が2013年に出した報告書で、人口増加による将来の食料危機を見据え、家畜に代わるタンパク源として推奨。牛や豚よりも少ない餌で育てられ、温室効果ガスの排出量など環境への負荷も抑えられることをアピールした。国内では、大手生活雑貨店の無印良品が20年春に「コオロギせんべい」を発売したこともあり、食用コオロギが広く知られるようになった。大学や企業といった産学連携の昆虫食研究組織も立ち上がっている。

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