ライフスタイルが変化した激動の20年、ロングセラー「キッコーマン うちのごはん」シリーズはどう成長したのか

松田 義人 松田 義人

 

ふと気づくと、生活習慣や社会通念がいつの間にか変わっていることがあります。特にこの20年はインターネットが一般層にまで広く浸透。後にスマートフォンも登場し、SNSなども一般化されました。他方、人々の価値観を大きく変えることにもなった東日本大震災や、新型コロナウイルス感染拡大などの影響もあり、実は目まぐるしく時流が変わっていった時代でもありました。

また、日本人の「働く」環境も大きく変化を遂げた20年でした。総務省が発表した「専業主婦世帯と共働き世帯の推移」というデータでは、今から20〜22年前の2000〜2002年(平成12〜14年)頃を境に、専業主婦世帯よりも共働き世帯のほうが上回り、今日に至ることを示しています。

 

この時流の変化をいち早くキャッチし、呼応すべく発売されたのがキッコーマンの「うちのごはん」シリーズという商品です。身近な食材を1〜2品用意するだけで、おかずを簡単に作れる和風そうざいの素で、共働き世帯にも支持を得たようです。現在、おそうざいの素18種、混ぜご飯の素6種など、合計31種をラインナップ(2022年6月時点)し、販売元のキッコーマンにとっても、同社のロングセラーになったと言います。

今回は、この20年で大きく変化した日本人のライフスタイルに触れながら、「うちのごはん」シリーズの秘密に迫ります。

20〜25年前を境に、男女間での「1日あたりの家事の時間」に変化が起こっていた!

冒頭で触れた、共働き世帯が主流になった影響からか、この20〜25年の間で男女間における1日あたりの家事の時間にもやや変化があったようです。総務省発表の「男女別家事時間の推移」では、女性の家事時間が減少した一方、男性のほうは増加したことがわかります。

 

キッコーマン担当者によれば、「うちのごはん」シリーズの開発時は、まさに共働き世代が主流になりつつある過渡期だったと言います。

「シリーズ検討当時の日本は、共働き世帯が主流になりつつある過渡期でした。食卓に目を向けると、それに呼応するように夕食の調理時間の短縮化、皿数の減少・調理スキルの低下が見られ、若年層になるほど手づくりの解釈が広がっていました。

そこで、当時すでに当たり前の調理方法であった『フライパン調理』に着目したのが『うちのごはん』シリーズの始まりです。『フライパンで身近な食材を1~2品加えるだけで料理ができる和風そうざいの素』をコンセプトに誕生しました」(キッコーマン・担当者)

このスタートが今から20年前の2002年のこと。まずは5品からスタートしますが、発売当時は課題が山積だったとも担当者は振り返ります。まだまだ珍しかった商品、スーパーなどの小売店での陳列や、商品特性を消費者に認知してもらうために、相当な努力を重ねてきたと言います。

「発売当時は課題が山積で、試行錯誤を重ねながらシリーズの育成を図ってきました。まず、『うちのごはん おそうざいの素』を、小売店さんのどの売場で売っていただくかということが最初の課題でした。どの小売店も『しょうゆはしょうゆ売場』と商品が置いてある場所は決まっております。『キッコーマン うちのごはん』シリーズ発売時には、『和風そうざいの素』というカテゴリー自体がありませんでした。お店の中で置いていただく場所を作るために、「和風そうざいの素」という売場カテゴリーを小売店へ提案し、さらに、使用する野菜の売場の前での関連販売も行いました。

また、『うちのごはん』はどういう商品かということを、お客さまに十分にご理解頂くことに時間が必要で、シリーズ発足初期からTVCMや商品パッケージなど、お客さまとのあらゆる接点を絶えず見直し続けています」(キッコーマン・担当者)

 

「そうざいの素市場」のうち「和風」カテゴリーは、20年前の7.8倍に拡大!

キッコーマンの試算によると「うちのごはん」シリーズの市場開拓の影響から「そうざいの素市場」のうち「和風」カテゴリーは20年前の2002年に対し、2020年時点では、7.8倍近くの117億円市場になりました。

他方、2019年にキッコーマンが6573人を対象に行った調査では65%もの人が「和食は難しい」と回答しています。こういった背景も「うちのごはん」シリーズのニーズに合致したとも考えられます。

発売当時は5品だった「うちのごはん」シリーズですが、現在は「うちのごはん おそうざいの素」シリーズに加え、「うちのごはん 混ぜごはんの素」シリーズ、「うちのごはん 肉おかずの素」シリーズなどラインナップが増えました。

「うちのごはん 混ぜごはんの素」シリーズは、温かいご飯に混ぜるだけで、本格的な味わいを楽しめるもの。また、「うちのごはん 肉おかずの素」シリーズは専用パウチに肉を入れてチンするだけで、ふっくらジューシーな肉おかずが完成する具入り調味料。火を使わないレンジ調理という簡便性と、手づくりでは難しいジューシーさが、多くの世代のニーズにマッチした商品です。

コロナ禍で増え続ける冷凍食品、簡便食材の中で、「うちのごはん」シリーズが目指す展望とは?

20年前の2002年を境に、大きく変わった日本人の家事状況と、男女間の家事にかける時間の増減に対し、「うちのごはん」シリーズが食卓を支えた貢献度は確かに大きいです。一方、この2年間は新型コロナウイルス感染拡大という未曾有の事態もあり、各社から様々な冷凍食品、簡便食材などがそれまで以上にリリースされ、消費者にとって、その選択肢は確実に増え続けています。

再び訪れたようにも思えるこの過渡期において、「うちのごはん」シリーズは今後どんな展望を抱いているかを最後に聞きました。

「コロナ禍で、冷凍食品や中食など、さらなる簡便な選択肢は豊富になりました。ただ、少しずつ新しい日常が戻る中で、『手づくりした料理を添えたいが、時間がない』というお客さまの需要も今まで以上に増えてきています。

『うちのごはん』シリーズは今後もお客さまに『簡単にできておいしい!』と喜んでいただけるようラインアップを拡充してまいります。是非お試しいただければ幸いです」(キッコーマン・担当者)

「うちのごはん」シリーズの過去20年の歴史がそうだったように、今後も進化し続け、様々な味を提供してくれるはずです。是非「うちのごはん」シリーズの味・簡便性を体験してみてください。家庭における和食の幅がグッと広がるはずです。

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