もみ消し図る学校、卑劣な教育委員会 小3女児の暴行被害を「なかったことにする」教育者たち

長岡 杏果 長岡 杏果

全国各地でいじめ被害が相次いでいます。しかし苦しんでいる子どもがいるにも関わらず、学校や教育委員会に「いじめ行為が確認できなかった」などと誠実さに欠ける対応をされるケースもあるようです。関西の政令市で小学校3年生の女児がいじめによる暴行被害に遭いました。女児の母親の鞠子さん(仮名)に話を聞きました。

――今回お子さまがいじめでけがをした経緯について教えてください

今回の事件の加害児童は男子4人で、特に1人の児童に娘はけがをさせられました。娘は集団暴行を受けている親友の男の子を助けるため、男子児童らに立ち向かい被害に遭いました。

加害児童4人は怖がって逃げ回る男の子を追い回し、男の子は足をひっかけられ転倒しました。さらに頭や体を押さえつけ、お腹や背中を蹴るなどの暴行をしていたようです。

娘は親友を助けるために駆け寄ろうとしました。しかし1人の児童に近づけないように阻止され、娘は力一杯両肩をうしろに引っ張られた上、両腕を力ずくでねじりあげられ、全治1週間・安静加療のけがを負いました。

別の加害児童からは顔を殴る真似をされたそうで怖くて泣いていました。娘と親友の男の子は2年生のころからいじめや暴力に遭っていたようです。

――現在のお子さまの様子を教えてください

以前も不登校だったのですが、登校を再開した矢先に今回の事件が起こったため、娘は再び不登校になってしまいました。けがもまだ痛むようで通院も続けています。

夜中に「怖い!怖い!行きたくない」と泣き叫び、加害児童の子が怖いと事件がフラッシュバックすることが続いています。過呼吸による呼吸困難、手の痺れ、全身にじんましんが出ることもあり、本人はもちろん、見ている私や家族も苦しくつらい思いをしています。

娘は親友を助けられなかった罪悪感も抱いていて、助けられなかったことを思い出して涙することもあります。

――2年生のころからいじめや暴力に遭っていたそうですが

2年生の4月からです。娘は1年生の時、担任から暴言を受けたほか、アレルギー食材を無理やり食べさせられる被害に遭い、不登校になりました。

2年生になって担任が変わったので、本人の意思で登校を再開しました。しかし、早々に男子からお腹を殴られるなど暴力を振るわれ、女子からも突き飛ばされけがをしました。担任から暴力を振るった子どもの保護者に連絡を入れてもらいましたが、一切連絡はありませんでした。

その後も、女子グループに下着を無理やり大勢の前で脱がそうとされたほか、ランドセルから物を盗られたり、所持品を目の前で壊されたりしました。バイ菌扱いされる一方で、ストーカーのように付きまとわれ大声で威嚇されたこともあり、数えきれないいじめを複数の児童から受けて、再び不登校になりました。

――担任の先生には相談されましたか

担任に相談しましたが、今回のいじめ暴行に対しては向き合ってくれることはありませんでした。「いじめで死んだら死んだときです」と言われ、子どもの命をとても軽く考えていることに開いた口が塞がりませんでした。娘がけがをしたことに対して「大丈夫ですか」の一言もなかったですし、突然連絡がつかなくなったりもしました。

教育委員会を通してようやく担任と連絡が取れたときには、担任は開口一番「娘さんが先に男子児童に暴力を振るったんですよね?」と言い出しました。しかし「先生は(娘が先に暴力を振るった様子を)見ていたのですか?」と確認しても「私は見ていない」と言われます。

その一方で、けがをして休んでいる娘に対しても何の配慮もなく、こちらが「なぜ娘のけがの様子を聞かないのか」と聞いても、ことの重大さを理解していない口調で「すいませ〜ん」と一言あっただけです。後は何を言っても知らぬ存ぜぬで、話をしても二転三転してとぼけるか、けんか腰になるかなので、まともに話し合いができない状態が続いています。

安静加療期間中に担任が電話をしてきてこともあるのですが、内容に耳を疑いました。どうも担任のクラスでは、全員が登校するとポイントがたまる決まりで、ポイントがたまると「お楽しみ会」を開くことにしているそうです。「いつになったら学校くるんですか?」「あなたが来なければお楽しみ会ができない」と不登校の娘に追い打ちをかけていました。この状況でいったい何を楽しむというのでしょうか。すでに担任の中でいじめはなかったことになっているようです。

――学校や教育委員会に相談に行かれていると思いますが、どのような対応でしたか

学校の管理職は「今回はどっちもどっち」「目撃者もいないからお手上げ」「子どもたちはやっていないと言っている」「長い付き合い、お母さんたちと仲よくやってください」と明らかに今回の事件をなかったこととしようとしています。

教育委員会にも今まで何度も相談をしてきましたが改善は全くありませんでした。昨年の教育委員会の面談では暴力については「当たっただけだよね?」「ね?」と娘がうんとうなずくまで誘導尋問をされました。物が盗まれたことも「あげたんだよね?」「そうだよね?」と私の目の前で繰り返される卑怯な誘導尋問。やり方がひどすぎると思いました。

   ◇   ◇

当該の学校に事実関係を確認すると、記事として紹介することについて教頭先生から「こんなことになっていながら、出すななど僕が言えるような立場ではないので出してもかまわないです」といった反応がありました。

この政令市では2019年にも小学生の児童がいじめを受けて亡くなりました。「いじめ行為は確認できなかった」とする教育委員会や学校側に対して、市が設置した第三者委員会では、複数のいじめがあったとする報告書をまとめています。

鞠子さんはこれまでの学校や教育委員会の対応について、以下のように語ります。

「なぜ、学校も教育委員会も絶対にいじめを認めようとしないのでしょうか。いじめを隠蔽することに躍起になり、かけがえのない子どもの命をとても粗末にしているように思います。教育現場において子どもの命より大切なことがあるのでしょうか。教師や教育委員会は自分たちの保身に走り嘘をつき、言い訳三昧、情けないと思わないのでしょうか」

「自分たちが何を守らなければならないのか、今一度考えてください。あなた方が守るべき存在はSOSを出している子どもたちです。いったいどれだけの子どもが亡くなれば、自分たちの罪や愚かさに気がつくのでしょうか。もっと真剣に子どもたちの悲痛な叫びに向き合ってください。二度と命を絶つ子どもがいないように真剣に対応をしてほしいです」

また、このような問題に直面したときに大事なこととして、「証拠を残すこと」と話してくれました。

「言った言わないを避けるためにも学校との通話はすべて録音してください。子どもにはボイスレコーダーを持たせていじめの証拠を集めるようにしましょう。ボイスレコーダーを無料で貸し出してくれるいじめ専門のNPO団体もありますので、お子さまを守るためにもボイスレコーダーを持たせることをおすすめします」

   ◇   ◇

【不登校やいじめの相談窓口】

▽子どもの人権110番
電話は最寄りの法務局・地方法務局につながります。法務局職員又は人権擁護委員が相談を受けます。
0120-007-110
対応時間:月~金 8時30分~17時15分
※土曜・日曜・祝日・年末年始は休み

▽チャイルドライン
18歳までの子どものための相談先。「受け手」と呼ばれるボランティアの大人たちが話を聞いてくれます。
0120-99-7777
毎日 午後4時~午後9時
※12月29日~1月3日は休み
※一部の都道府県では時間を延長して受けています

▽よりそいホットライン
24時間通話料無料。一般社団法人社会的包摂サポートセンターが運営。
0120‐279‐338(岩手県・宮城県・福島県からは0120-279-226)

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