「倒れるわけにはいかない、守ってあげたい」 自力で排泄できない猫を引き取った飼い主の思い

渡辺 陽 渡辺 陽

下半身麻痺の猫、2匹一緒に引き取る

ふくまるちゃん(4歳・メス)は下半身が麻痺している。熊本市の愛護センターで里親を探していたが、麻痺のある猫はなかなか譲渡先が決まらない。熊本県の保護団体は、ふくまるちゃんを引き出して里親を募集することにした。

大阪府に住む智さんは、その保護団体から数匹の猫を引き取っていた。どこかしら体調に不具合のある子ばかりだった。ちょうどあんこちゃんという下半身麻痺の猫を譲渡してもらうことが決まっていたのだが、センターからふくまるちゃんを引き出すのなら、一緒に迎えたいと団体に伝えたという。

「圧迫排尿はしたことがなかったので、ちゃんとできるだろうかという不安もあったのですが、2匹いれば倍練習ができると思いました。ふくまるは人慣れしていて、特に怪我もしていなかったので、あんこと一緒に連れてきてもらいました」

誰よりも食欲旺盛

2017年12月9日、あんこちゃんとふくまるちゃんがやってきた。ふくまるちゃんは、生後4ヶ月くらいだった。センターでは「カーミー」という名で呼ばれていたが、団体のボランティアが「呼びにくいから別の名前を考えてほしい」と言っていた。智さんは、「おじさまと猫」という漫画の主人公の名前をもらって、ふくまるという名前にしたという。

「とても可愛い性格だったので、そんなふうに育って欲しいと思いました。ボランティアさんは、『女の子だけどいいですか?』と笑っていました」

ふくまるちゃんは、先住猫にも全く物おじせず、自ら猫に近づいて遊んでいた。最初に遊んでくれたのは大福ちゃんという猫だった。豆虎ちゃんという猫だけは、新しい子猫が入ってくると誰でもいじめてしまうので、ふくまるちゃんは思いっきり猫パンチをされたという。しかし、ふくまるちゃんにとってそんなことは大したことではなかったようだ。

「ふくまるは下半身麻痺というだけで、特に体調を崩すことなく元気に育ちました。食欲もすごくて、体の大きい男子たちよりもたくさん食べます」

守るべき存在

ふくまるちゃんは好き嫌いがはっきりしていて、お父さんのことを天敵だと思っている。

「夫は仕事でいないことが多いのですが、不在にしているとふくまるは伸び伸びしています。でも、家にいる時はずっと隠れています。ふくまるは毎晩私と一緒に寝るのですが、夫がいる時は寝る前に文句を言って、布団の中であちらこちら噛んできます。でも、夫は帰宅するとふくまるを抱っこするので、ふくまるは嫌がって…夫はその様子がおかしくて仕方ないと言います。一生理解してもらえない愛情でしょう」

あんこちゃんもふくまるちゃんも麻痺があることを意に介さず、全てを受け入れ、順応して暮らしているという。

「彼らはできないことをできないと思っていません。だから危ないこともあるのですが、その姿勢はすごいなと思いました。人間だったらこうはいかないでしょう。こういう子たちも少し人が手を貸すことで、普通に快適に過ごすことができると実感しました」

ただ、やはり彼らは自力では排泄できない。智さんは、「私が倒れるわけにはいかない。守ってあげなければいけない」と思っているという。

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