意外と知られていない“脳に水がたまる病気” 「水頭症」とは 症状と治療方法を医師が解説

ドクター備忘録

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 脳で起こる病気は数多くありますが、そのなかでも意外と知られていない「水頭症」。脳の構造とあわせて、水頭症の主な症状や治療法について、吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。

――水頭症とはどのような病気なのですか?

脳の中には“脳室”と呼ばれる水たまりがあるのですが、その場所が拡大してしまうこと、つまり、脳に水がたまる病気のことをいいます。この水は“髄液”のことを指し、脳は水に浮かんでいるような構造をしています。脳の中心部にある脳室と呼ばれる大きな空間で髄液が作られ、この髄液が脳の周りを巡り、脳の表面から吸収されていくという仕組みになっています。実は、髄液は1日におよそ3回から5回ほど入れ替わっており、髄液が脳の周りを満たしていることで脳を守る役目を果たしているんです。つまり水頭症とは、髄液の循環障害が起こることで脳室が拡大することを指しているんです。

――水頭症になると、どのような症状が出てくるのでしょうか?

脳室が拡大すると脳がだんだん圧迫され、特徴的な症状が出てきます。ご⾼齢の⽅に多くみられる正常圧⽔頭症の場合は、足先・股を開いて歩幅が短くすり足となる特徴的な歩き方となり、歩く速度がゆっくりになります。私は歩行状態を確かめるときによく、「横断歩道を⼀度で渡りきれますか?」と尋ねてみるようにしています。これに似た歩行はパーキンソン病などでもみられますが、これに認知機能障害や尿失禁が加わって、3主徴がそろえば、正常圧水頭症が強く疑われます。

――どのような検査を行うのですか?

CTやMRI検査を行えば、脳室が拡大していることはすぐにわかります。

――治療はどのように行うのでしょうか?

脳室にたまった髄液を抜く治療を行います。脳の髄液吸収率が悪くなってしまっているので、余分な髄液を抜いて別の場所に流してあげることが必要となります。脳の水はすべて脊髄の周りと同じで腰まで降りてくるので、腰からお腹にチューブを⼊れて、腹⽔と混ぜて吸収させるという⽅法をとります。脳室からお腹に通す⼿術法もあるのですが、その場合は脳に⽳をあけなければならないため、より安全な⽅法として腰からチューブを通す⽅法があるんです。

◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、脳神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科

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