招き猫のように「幸せ、こいこい」…譲渡会での衝撃的な姿に感じた運命 迎えた猫は「立ち止まる幸せ」を教えてくれた

ふじかわ 陽子 ふじかわ 陽子

運命の出会いは雷に打たれたかのよう。愛知県瀬戸市で暮らすO家のお母さん、Mさんも雷に打たれた一人。0歳児の娘と何気なく訪れた猫の譲渡会で運命の出会いを果たします。その運命の相手こそ、現在1歳の三毛猫「こいこい」ちゃんです。

譲渡会会場には、他にも可愛い子猫がたくさんいました。可愛い声で鳴いたりゴロンゴロンしたり、誰が見ても愛らしい子たちです。一方、後の「こいこい」ちゃんはというと、ヒゲはしょぼんと丸まっているし鳴くこともありません。ケージの柵に前足をちょこんと乗せたり下ろしたり。

その姿を見た瞬間、Mさんの体に電撃が走りました。「この子には自分の世界がある!」と感じ、もう他の子猫の姿なんて目に入りません。それからはというもの、寝ても覚めてもあの子猫の姿が頭から離れないのです。

思い切って保護団体に譲渡をお願いしますが、0歳児がいる家庭には譲渡していないという返答。それにO家には先住猫もいます。当時6歳のしますけくんです。甘えん坊な性格で、もしかすると子猫を迎えると拗ねてしまうかもしれません。

Mさんは必死に「仕方ない」と思い込もうとしました。でも出来ませんでした。再び譲渡会を訪れ、あの子猫と触れ合います。あの子猫はまた前足をケージの柵に乗せたり下ろしたり。この姿にMさんは地元瀬戸市の名産品・招き猫を思い出しました。招き猫のお腹に、こんなキャッチフレーズが書いてあることがあるんです。

「しあわせこいこい やってこい」

Mさんは自分がこの子猫の幸せになれるかもしれないと感じ、再度譲渡をお願いします。自宅の様子も見てもらい、しますけくんも紹介。夫の協力もあると伝えました。願いは通じ、出会って約1カ月後にトライアルが開始。この時、子猫は生後3カ月になっていました。

あの子猫は「しあわせこいこい」の「こいこい」と名づけられ、O家での生活がスタート!最初こそしますけくんは「シャー!」と威嚇をしていましたが、日に日に距離は縮まっていき毛づくろいをする仲に。

尻尾をぶんぶんさせながらこいこいちゃんをあやす姿は、まるでお母さんのよう。甘えん坊な分、甘えさせるのも上手なのかも。Mさんは初めて目にする面倒見の良いしますけくんに、嬉しい驚きを隠せません。思えば3歳の時に尿路結石にかかった時は「この子は幸せなのだろうか…」と思い悩みました。こんな日が訪れるだなんて胸がいっぱいです。

0歳の娘とこいこいちゃんの相性はバツグン!まるで本当の姉妹のように仲良しで、何をするのも一緒です。遊ぶのも一緒、寝るのも一緒、段ボールに入るのも一緒。娘が泣いていたらこいこいちゃんがあやし、こいこいちゃんがつまらなそうにしていたら娘がそっと寄り添う。

目の前に広がる幸せな光景に、Mさんは会社員をしていたころの自分を思い出しました。何かに追われるかのごとく仕事ばかりの日々。妊娠を機に退社したものの、何もしなくなった自分に価値が見出せなくなっていました。

しかし、立ち止まってゆっくり周囲を見渡すと、優しい世界がMさんを包んでいるではありませんか。それをMさんはイラストで表現し始めます。すると、どんどん心が軽くなっていくのが分かりました。将来の不安を猫たちとイラストがかき消してくれたのです。

現在、Mさんの仕事はお母さん兼イラストレーター。もう追われるように仕事はしません。忙しさに飲み込まれそうになったら、あの言葉を唱えるんです。

「しあわせこいこい やってこい」

すると、こいこいちゃんとしますけくんが作業の手を止めに来てくれるんですよ。休もうね、って。立ち止まる幸せを教えてくれたのは、猫たちだったようです。

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▽ねこねこクラフト(飼い主さん)
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