暴言なのに「私のこと、気にかけてくれている」と思い込み 夫からのDV…洗脳状態の私を救ってくれた、近所の人のアドバイス

長岡 杏果 長岡 杏果

テレビやネットニュースなどで時々見かける「DV」の話題。「本当にこんな人いるの?」と半信半疑の方もいれば、「うちの夫も…」と思い当たる節があることに気づく方もいるかもしれません。筆者の知人であるSさん(30代)も、その一人です。

夫のDVに悩まされているSさんは、1年前まで夫と3人の子どもと5人で生活を送っていましたが、ある出来事を機にSさんに対する夫の態度が変わっていったのです。

高熱が出た日、夕食をできあいのお惣菜にすると…

Sさんは3人の女の子を育てる専業主婦です。長女は発達障害があり「子育ては大変だな」と思いながらも、毎日楽しい日々を過ごしていました。

そんなある日、Sさんは高熱を出してしまったのです。それでも体を休めることをせず、こども園への送迎や夕食の準備のために、スーパーに買物に行ったりしていました。しかし、夕方になると段々と体調が悪くなり、夕食はできあいのお惣菜にしました。

仕事から帰ってきた夫にSさんは「ごめんね。今日、熱が出たから夕飯を作れなくてお惣菜で…」と言うと、夫から想像もしない言葉が返ってきたのです。

「おい!誰に食わせてもらってるんだ!仕事もしてないくせに、飯も作れないの?」

この言葉にSさんは大きなショックを受け、何も言い返すことができませんでした。

それ以来、Sさんは夫に対して恐怖を覚えるようになりましたが、夫の機嫌を損ねないようにこれまでどおり接していました。すると夫の暴言は、日に日にエスカレートしていき、毎日何度も暴言を吐かれるようになったのです。

「世の中には3人の子育てをしながら、働いている人はたくさんいる」。そして、「甘いんだよ。あんた。あんたの子育ての仕方が悪いから、子どもが障害もつんだよ」とも。

発達障害は育て方の問題ではなく、夫の指摘が明らかに間違っているとは分かっていました。しかし、こういったことを繰り返しは言われることで、Sさんは段々と追い込まれていくのが自分でもわかったそうです。夫が言っていることが正しいと思うようになってしまっていたのです。

その一方で、夫は暴言を吐いたあと、必ず「ちょっと言い過ぎたかな。でも事実だから」と口癖のように言ってきました。その言葉にSさんは「夫は自分を気にかけてくれている」と次第に洗脳されているかのような状態になっていきました。

夫から逃げたあと直面した「経済的な問題」

夫からの暴言は毎日のようにありましたが、それでもSさんは夫と離れることは考えていませんでした。しかし、夫は暴言だけにとどまらず手を上げるようになっていったのです。

顔を平手打ちにしたり、足で蹴ったりする日々が続くうちに、夫になついていたはずの子どもたちは夫を怖がるようになりました。特に発達障害のある長女は、夫の姿を見るだけで震えて、泣くようになったのです。どうしたらよいのかわからなくなっていたころ、Sさんの顔にあざができていることに気づいた近所の人からアドバイスを受け、Sさんは自治体に相談に行きました。

相談を担当した職員から、別居することを提案され、Sさんは意を決して夫が出張で留守の間に、引っ越ししました。その後、夫と話し合い、月2万円の仕送りをもらいながら、Sさんはパートで働きはじめました。しかし生活は困窮していき、精神的な病気に悩まされるようになったのです。

現在も夫との婚姻関係は継続しています。しかし、事実上は夫との生活は破綻しており、今後も夫からの金銭的な援助は見込めないため、生活保護を受給することになりました。

   ◇   ◇

Sさんは子どもを一生懸命育てなければと思う一方で、経済的な課題を抱え自分ではどうしたらよいのかわからなくなっていたと話してくれました。今は生活の基盤も整いつつあり、短時間のアルバイトをはじめることができるようになりました。

配偶者からのDVは、Sさんだけではなくその子どもにも大きな影響を与えます。Sさんの場合は近所の方がSさんの様子に気づいたことが、虐待の発見につながりました。当時を振り返りSさんは、「あのとき、近所の人が気づいてくれなければ。今でも夫の虐待に怯えながら暮らしていると思う」と話してくれました。

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