「欠席は紙に書いて、近所の子に渡して担任まで」小学校の昔ながらの連絡方法に「うちもです」「ハードル高すぎる」と嘆きの声 なぜ今も?現役の先生に聞いた

太田 真弓 太田 真弓

小学校入学早々、配布された冊子に書かれていた欠席連絡の方法をみて驚愕…。戸惑う気持ちをツイートしたちゃんこさん(@chanko_pipi)の投稿に共感や嘆きの声が続々と集まっています。ちゃんこさんと、現役の小学校の先生で県のICT支援員としても活動するエイさん(@zikatu1)にお話を聞きました。

 「小学校『ご入学おめでとうございます(中略)学校を欠席したい場合は紙に書いて、それを近所の子に渡して担任まで連絡お願いします。なので、家が近い子を探して早めに3人くらい友達になっておいてください』
えっ『私』」

思わず「えっ『私』」と書いてしまうくらい動揺したちゃんこさん。こちらのツイートに、10.4万件のいいねがつき、400件をこえるリプライが殺到しました。それだけ欠席連絡の方法について疑問や不満を抱えている(抱えていた)保護者の方々が大勢いらっしゃることが伺えます。

「近所の子たちがとっくに登校してから欠席することに決めたから、具合悪い子どもに留守番させて、親が連絡帳を学校に届けたりしました。いい加減どうにかならないんですかね」
「連絡帳をお友達に預けます。具合の悪い時はわざわざ病原菌を届けに行くような感じがして違和感あります」
「うちの小学校もそうでした。もしくはFAXで連絡してくださいと言われたので、毎回休むときはコンビニのコピー機から50円使って欠席連絡してました(都内)」
「我が子は休む頻度が多くて申し訳なかったです。困りますよね、知り合いいないもん!」
「登校時間が合わず紙を渡せなくて学校まで結局用紙を持っていきました」
と、ちゃんこさんと同じ紙システムを嘆く声。

「この度転校生となり、そのシステムについてどうしたら良いかわからず、連絡帳にご近所の人を紹介して欲しいと書いてしまった」
「家が近い子を探せと言われても…同じ学校に通う児童生徒いない場合はどうなるのでしょうか…」
「児童との接触を避けてほしいので、学校へ電話連絡お願いします…って言われてます」
「うわー、引っ越したばっかりだったらもっとハードル高い。地域柄によっては私学いく子も結構いるし」
と、渡す相手を探すところから困るだろうなという心配のコメント。

「昨年度からうちの市ではアプリですよ!」
「教頭が変わり、最後の1年だけGoogleフォームでした。」
と、ネット上での提出が可能となった報告もあり、コロナ禍により方法が変更された声も多数寄せられています。

ちゃんこさんにお話を伺いました。

できれば電話かデジタルで連絡したい

――どうしてこのツイートを?

幼稚園の時は欠席の連絡を電話で行っていたので、アナログなやり方にびっくりした気持ちをTwitterに思わず呟いてしまいました。

――どこに書かれていたのでしょうか?

入学式で配られた学校の決まりごとなどが書いてある冊子の中に記述がありました。

――ご近所に同じ小学校のお子さんやお友達はいらっしゃいますか?

自宅はたまたまお年寄りが住む家に囲まれていて、小学生くらいの子どもの気配を感じたことがありませんでした。今は同じ学校に通う子が数人いることが分かってます。

息子は登校班も無く、旗振り当番をして気付きましたが、周辺に住んでいる子どもたちは我が家より15~20分くらい早く家を出ており「タイミング合わない!」と頭を抱えました。

――こちらの案内について、ご家族は何かおっしゃっていますか?

実母(60)がこの仕組みについて「懐かしい~!私も登校班の子に紙を渡してたよ」と言っていました。

息子が通い始めた学校は夫の母校でもあり、当時は2倍以上(1000人以上)在校生がいたとのことです。それだけ生徒さんがいたら、もしかしたら紙を渡しやすかったかもなとも思いました。

――ツイートが大きな反響を呼んでいます。

この仕組みに疑問を抱いたりする自分がおかしいのかな?と自身の感覚を疑いながらツイートをしたのもあったので、皆さんの「今は令和だよ」という反応を見て安心したりしました。

たまたま多くの方の目にとまって、いろんな方の反応を見ることができて私自身とても勉強になりました。「同じ仕組みでしたが、コロナ禍でデジタル化しました!」というリプライも本当に多く、羨ましく思いつつ「コロナ禍なのに、そのままの学校って一体…!」という不安も生まれました(笑)。

このシステムが完全に悪というわけではないですし、もちろんびっくりしましたが、しかしよく考えると誰にも寄り添っていない考え方なんじゃないかとも思い、そこがちょっと残念です。関わっている方ほぼ全員が、朝大変な思いをしなくて済む、もしくは少しでも楽になる仕組みがあったら一番良いですよね。

――この先、欠席連絡の必要が出てきた場合は?

Twitterで「そうは言われたけど、実際は電話で連絡していたし、それで大丈夫だった」というリプライを結構見かけまして、もしその時がきた場合は一度電話で連絡をしてみようかな…と考えてたりします。冊子にも「連絡を児童に頼めない時にのみ電話でも可」という一文はありました。

電話で連絡をしてみて、「やっぱり紙で…」と言われてしまった時は、今回いろんな知見を得ましたので、デジタル化の提案をしてみたいなと密かに思っています。やはり電話か、もしくはデジタルなものだととっても助かります…!

現場の状況は? ICT支援員としても活動する先生に聞いた

今回のツイートについて、現在小学校で教鞭を執り、日々、学校のソフト面・ハード面への気づきや情報を発信されているエイさんに感想などを伺いました。

――ツイートへの率直な感想をお聞かせください。

ツイートやリプに「入学前から学校が嫌われてしまった」と胸が痛みました。

たしかに学校は保護者の負担を減らすためにもっとアップデートが必要です。特にデジタル化。韓国では、国が保護者との連絡アプリを導入し、スマホでやりとりできるそうです。

アメリカでもメールでの連絡がほとんどだと聞きます。日本も連絡アプリやツールを導入しているところもありますが、学校間でのデジタルディバイド(情報格差)は大きく広がっています。その危機感をこのツイートで改めて感じました。文科省やデジタル庁が横展開をしてくれるといいのですが。

――現在赴任されている学校では欠席連絡はどのように?

うちの学校も電話か連絡帳でのやり取りでしたが、2年前からforms(アンケートツール)を導入し、スマホで連絡できるようにしています。他校の実践を参考に、Teamsの学年チャネルに自動表示される仕組みを作りました。結果として、朝の電話対応も減り、欠席者の確認も全職員が把握しやすくなり助かっています。

ただしスマホが苦手な方や詳細を伝えたい方もいるのでこれまで通りの電話や連絡帳でのやり取りも行っています。

――学校からの案内に「紙で伝える=電話は控えてほしい」という旨も伺えます。

経験上ですが、学校の回線は2or3回線が一般的です。人数の多い学校だと回線が混み合うことがあります。また朝の時間は、職員は登校の見回りや児童の対応でバタバタします。電話対応を減らすことで学校の運営をスムーズにする目的もあるのかと。

日本の学校のデジタル化が進まない理由は?

――アナログな方法を継続している理由として考えられることはありますか?

「なぜ日本の学校はデジタル化が進まないのか?」それは、学校に「時間」と「人」と「予算」が足りないことが原因だと思います。新しいことを導入するには、調べる時間と試す時間が必要ですが、残念ながらその余裕がありません。

企業ならDX(デジタルトランスフォーメーション=IT技術を浸透させること)を進めるのに専門の人を雇いますが、そうした人もいません。そしてサービスを採用する予算もありません。言い訳みたいになってしまいましたが、私は県のICT推進員としても活動しています。これまで様々な学校の悩みを聞く中で、この3つの壁が非常に大きいと感じています。

――欠席の連絡方法について保護者から意見や相談を受けたことはありますか?

直接相談を受けたことはないですが、隣の学校の保護者から「うちの学校にも導入してほしい」という声を聞きました。同じ市内でも対応がバラバラになってしまっているのが現状の課題です。便利なサービスや仕組みを横に広げることに今は力を入れています。

――紙や連絡帳を託す方法で欠席連絡をもらった場合のメリット・デメリットを教えてください。

紙の場合のメリットは、見やすいことです。子どもが手渡しでくれるので、把握もしやすいです。

デメリットは、紛失したり提出し忘れたりすること。また情報を他の先生と共有するのに時間がかかることです。

――デジタルの場合は?

デジタル(ネット)の場合のメリットは、紛失のリスクがないこと。子どもを経由しないので出し忘れることもありません。また情報も職員全員で見ることができるので、すぐに共有できます。欠席黒板の記入も不要になります。誰がいつ休んだか、どんな理由で休んだかの履歴も残ります。

デメリットは、回線エラーやネットトラブル時の対応、情報漏洩などのリスクがあることです。またアプリやサービスによっては使いにくかったり見にくいこともあります。

――デジタルにする場合、学校側はスムーズに移行できるものなのでしょうか?

導入の難易度はケースバイケースですね。例えば私の自治体はoffice365を契約し、アカウントを職員全員が持っています。そのためTeamsやforms(アンケートツール)が使えます。Google for educationを契約してる自治体も導入はしやすいと思います。連絡アプリなどのサービスもたくさんありますが、無料のものは広告つきのものが多かったり、サーバーがダウンすることも多いと聞きます。

またアカウントや環境があっても、ある程度の知識は必要なので、学校に詳しい人がいないと導入は難しいのが現状です。

――方法は何であれ、とにかくお休みや遅刻の場合は連絡を?

子どもの安全が第一なので、デジタルであれアナログであれ連絡は必要かと。登校中に事故にあったり、いなくなったりというケースもありえます。本校では、もし連絡がない場合は必ずこちらから問い合わせしています。

今回の「欠席連絡の方法」に限らず、学校からの案内や説明は一方的に感じることも多いと思いますが、困っていることは担任に遠慮なく相談した方がいいと思いますよ。保護者からの相談で気づかされたり、よりよい学校の仕組みに変わることもたくさんあります。

◇     ◇

ちゃんこさんのツイートに対する大きな反響とエイさんが教えてくださった現状に、一保護者としてもどかしさを抱かずにはいられませんでした。

コロナ禍で人と人との接触を減らすことを促す一方、紙を預けに出向いたり、病気の子を家に置いて欠席連絡のために東奔西走しなければならない現実に矛盾も感じます。

ちゃんこさんご自身も今回の反響を受けて「仕組みは、回せるから残ると思うんですが『もっとこうしたほうが良いかも!』というアイデアがある場合は、いろいろ考えるチャンスですよね」とツイート。

欠席連絡は「子どもたちの安全や学校と家庭との連携のための連絡」であり、必要不可欠。双方にできるだけ負担の少ない方法が実現することを願ってやみません。

■ちゃんこさんTwitter https://twitter.com/chanko_pipi
■エイさんTwitter https://twitter.com/zikatu1
■エイさんnote https://note.com/zikatu/

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