小脳障がいのこの子にできる喜びをたくさん感じてほしい オーダーメイドの歩行器を貰ったこじかちゃん

古川 諭香 古川 諭香

今年の1月、飼い主のこんこさん(@arareyakoi)から、素敵な贈り物を貰ったのは小脳障がい(小脳形成不全)と生きる、こじかちゃん。オーダーメイドの歩行器は、こじかちゃんの世界を広げてくれています。

姉が保護した母猫が産んだのは「小脳障がい」を持つ子猫

こじかちゃんは、こんこさんのお姉さんが保護した猫が産んだ子。

成長を見守る中で、歩いてもすぐにひっくり返ってしまう姿に違和感を覚え、病院へ。すると、小脳形成不全であることが判明。漫画家であるこんこさんは在宅で仕事ができるため、こじかちゃんを見守れると思い、共に暮らすことを決意しました。

とはいえ、障がい持つ猫と暮らすことは初めて。こじかちゃんはひとりで食事をするのが難しく、トイレ時にはサポートが必要。当初は不安が大きかったと言います。

「でも、私のように在宅で仕事をしている方は少ないだろうし、もし、誰かにこじかを譲渡したら、ご飯が上手に食べられなかったり、トイレが間に合わなくてうんちやおしっこで汚れてしまったり、最悪の場合は介助が面倒になってしまうこともあるのでは…と思ったんです」

考えすぎかもしれないけれど、そんなにも不安に思うのであれば、自分が愛情をこめて育てよう。そう覚悟が固まると不安は和らぎ、こんなにもかわいい子を育ててみたい、私がこの子を幸せにするというポジティブな感情が生まれてきました。

こじかちゃんは病気により、集中すると頭が揺れたり、過度に力んだりするという特徴が。

「例えば、床に何か落ちていたり、においがついていたりして嗅ごうとすると頭が極度に揺れ、床に何度も打ち付けてしまいます」

また、4足歩行も上手くできないため、こんこさんは初め、甲斐甲斐しくお世話をしていました。しかし、ある時、これではできることが増えず、むしろできる喜びを減らしてしまっているのではないかと思うように。そこで、以降、こじかちゃんが求めてくるまで、なるべく手をかさないように心がけました。

すると、1歳になる直前、嬉しい出来事が。なんと、こじかちゃんは初めてひとりでトイレへ行き、おしっこをしてくれたのです。

頑張り屋さんのこじかちゃんは、その後、ひとりで水を飲みに行くようにもなり、行動範囲を拡大。「最初は置いたら、その場にずっといる子でした。だから、自分の意志で行動できるようになったことが嬉しかったです」

快適な住環境で同居猫に愛される日々を送る

こじかちゃんはおうちで、上半身を起こし、下半身を引きずりながら、カーペットに爪を引っかけて移動。

そのため、こんこさんはフローリングは避け、緩衝材とカーペットやマットを部屋に敷いています。「高いところに登ることは難しいので、猫用ベッドは段差のないもの。水飲み容器はひっくり返しにくいものを選び、トイレの前には猫用のスロープを設置して、入りやすくしています」

また、手足に関節炎が生じ、腱が数本切れているこじかちゃんを想い、毎日、軽いマッサージをし、サプリメントを与え、悪化を防止しているそう。

「自分で行くこともありますが、水を飲みたくて甘えてくる時は体を支えます。トイレも自力で行くことがありますが、朝、夕、夜の3回は必ず連れて行きます。私が過保護なだけで、もしかしたらこじかは思っている以上に、なんでもできるのかもしれません(笑)」

なお、こんこさん宅には、こじかちゃんの他にもたくさんの猫が生活中。最初はみな、こじかちゃんの動きに驚いていたものの、次第に慣れ、今ではグルーミングなど気遣う素振りを見せることもあるのだとか。

中でも、同居猫のカジカちゃんはこじかちゃんが大好き。こじかちゃんのトイレ後に排泄物を埋めたり、ひとりで部屋の中を動き回っている時に隣に来てくれたりします。

「カジカだけは本気で遊んだり、喧嘩をしたりしてくれる。こじかにとって、いい刺激になっています」

2歳の誕生日にオーダーメイドの歩行器をプレゼント

歩行器があれば、できることが増えるかもしれない――。こじかちゃんと暮らす中で、そう思うようになった、こんこさんは昨年6月、インターネット上に掲載されていた設計図を参考に、手作りの歩行器をプレゼント。

歩行練習をスタートすると、こじかちゃんは少しずつ前に進めるようになっていきました。

より快適に行動範囲を広げてほしい。そう思い、2歳の誕生日に「わんワーク」でオーダーメイドの歩行器を注文。

「犬に比べ、猫の歩行器はまだ少ないけれど、わんワークさんはオーダー後、電話でこじかのことを詳しく聞いてくれ、真剣に考えてくれました。励ましも頂き、嬉しくて泣きそうになって…。本当に感謝しています」

歩行器に慣れてもらうため、こんこさんはこじかちゃんが嫌がった時にはすぐに降ろすことを徹底。乗せる時におやつをあげるなどして、歩行器を好きになってもらえるよう奮闘しました。

「ご飯は歩行器に乗せて、食べさせています。焦らず、毎日1分でもいいから乗ってもらっていたら、ご飯やおやつが歩行器と結びついたようで、見ると鳴き、乗せてアピ―ルをするようになりました」

歩行器は行動範囲を広げるだけでなく、嬉しい変化をもたらしてもくれたよう。「先月、病院へ連れて行ったら、筋肉がしっかりしていると言っていただけました。もしかしたら、歩行器のおかげかも。性格が積極的になったようにも感じます」

ひとりで悩まず、誰かに相談をしながらできることを増やしてほしい

障がいのある猫への理解を深めたい。こんこさんは、こじかちゃんとの日々を配信する中で、そんな思いを強めてきました。

 「正直、障がいを持つ子を育てることは大変。自分の時間がなくなりますし、私のように在宅でできる職種でない場合は、飼い主さんも猫もストレスを抱えることもあるかもしれません」

だからこそ、障がいを持つ猫がどんな生活を送り、飼い主は何をしてあげられるのかを伝えたい。そして、障がいを持つ猫への認知が広がり、ハンデとみなされるものを持つ子も心から愛してくれる家族と巡り合えるようになって欲しい――。

そんな願いを抱きつつ、同じく脳に障がいを持つ愛猫と暮らす飼い主さんを応援します。

「脳の障がいは介護を伴うことが多ので、いつまで、この生活が続くのか不安だけれど、この子には長生きしてほしいし、できることが増えてほしいというジレンマを抱えることがあると思います。私はSNSを通じて同じ障がいを持つ猫ちゃんと暮らす方と出会え、フォロワーさんのアドバイスに救われました。ひとりで悩まず、誰かに相談してみると、新しい可能性が見いだせるかもしれません。もし、同じ障がいの子をお迎えしている方がいたら、ぜひ色々お話したいです」

続けられなくてもいいから、やれることはやってみようと考え、試行錯誤を繰り返していると言うこんこさん。命の重みと真剣に向き合っているからこそ、その口から伝えられる言葉は心に刺さります。

動物の世界でも、障がいの「がい」をひらがな表記にするなどという表面的なことではなく、真の意味での障がい理解が進み、「ありのままのあなたが好き」と愛される子が増えていくことを切に願います。

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