美容室で話しかけられたくない…「会話なし」メニューが人気に 考案したのは会話が不得手な美容師「苦手を武器に」 

宮前 晶子 宮前 晶子

「会話が苦手な友人の美容室。苦手を武器にする天才かよ。」という写真とともに表示されたのは、美容師とのコミュニケーションが苦手な方へ「カット+会話なし」、会話が苦手な方へ「カット+静かに(会話少なめ)」というカットメニュー。もちろん、おしゃべりしたい人に向けた通常メニューもあります。

もしかしたら、これからのヘアサロンで新たなメニューとして定着するかもしれないこの投稿をしたのは、仙台など東北で美容室『Natural』を10店舗展開する、いとう|経営している人さん(@hironcare ※以下いとうさん)。

友人の野口さんが東京・世田谷で経営する『hair-works-credo』のメニューを「とてもユニークで、本人の真摯な職人としての気質がお客様に最大限伝えられるメニュー」と思ったことからつぶやいたそう。まさか大反響になるとは思いもせず、なにげなくつぶやいた今回の内容について、いとうさん、野口さんお二人に話を聞きました。

リプライは300を超え、ヘアサロンでの会話について、人々がそれぞれの思いを共有しました。

「美容院史上最強のコンテンツ」
「美容師の悩みを聞くために時間とお金を使っているわけじゃない。美容師は髪の悩みと魅力を引き出してなんぼと思って欲しい」
「会話が憂鬱すぎて、3年に一度しか髪切りに行かない。カウンセリングの時に、なんで“今日の気分は?会話したい?”がないのかと常々思ってました」
「かなりプライベートな事も聞かれたり、私もつい無理して話合わせてしまいがち。美容院に行くとめちゃくちゃ気疲れしてしまう」
「美容師時代に「お客さんと会話して好みとかの情報を拾え」って言われるから話してたけど私も技術に集中したいし、お客さんのプライベートとか興味ないし話すの面倒って思ってたから働く側としてもこれはいいかもですね!」
「あの時間、2、3時間あるから、本読んだり、情報収集したいのよねー」
「無口でええから雰囲気はマイルド希望」
「今の時期人がいっぱいの美容院も怖いので、マンツーマンでお喋りなしって最高ですね」
「こういう要望って自分の口から言えないので、前もって選択できるのはいいですね」

「まさか、こんなにバズるとは!」

――約18万件ものいいね!が付きました。この反響、どう受け止めていますか?

「元々潜在的にあった多くのニーズが、今の時代、価値観の多様化により顕在化したと感じます。美容師になった約20年前の美容業界では、“お客様を存分にもてなすのが一流”とされていました。

でも、今はお客様のニーズも多様。お客様一人ひとりのご要望をキャッチして、技術や個性を磨く美容師が求められるようになってきたと思います。私たち美容師が真摯に受け止めて、時代にあった美容室の「おもてなし」をアップデートしていく必要があると今回改めて実感しました」

――コメントも、日頃感じていたことを綴るものが多いですよね

「いろいろな声がありましたが、99%賛同、賛成、行きたい!という声だったというのがとても印象的でした。お客様がヘアサロンに求めることが “至れり尽くせり”から、“そっとして欲しい”に変わっているんでしょうね」

――いとうさまのサロンでもこのメニュー取り入れているのでしょうか?

「はい。野口とは中学時代からの親友なんです。彼へのオマージュを込めて、さっそくうちのサロンでもメニューに加えました!」

「会話したことのないお客様もいらっしゃいます」

一方の野口さんは、Twitterをしていないのでこの反響についてピンと来ていないそう。「いとうから、“会話不要メニューのことツイートするよ”って言われて、わかったって答えた翌日に、“やばいかも”って連絡が来ました。出入りする業者の人からも“おめでとうございます”って電話が来るし。まぁ、すごいんでしょうね(笑)」と至って冷静です。でも、「いとうのTwitter投稿から1日で、10人ぐらいこのメニューで予約が入りました」とのこと。

そもそも、このメニューを始めたのは約7年前。VIPルームとサイレントルームを設けているイギリスのヘアサロンで、サイレントルームが人気という雑誌の記事を読み、「日本でそういうサロンないから、ちょっとやってみようか」というノリでメニューにしたそう。

「でもね、当初は“静かに”ってぐらい。ちょっと恥ずかしかったんです(笑)。1カ月間メニュー出してみて、オーダー入らなかったらやめようと思ってたんですけど、5人ぐらいオーダーが入って。あれ、もしかしたらイケるかもってなったんですよね。それで、もう振り切っちゃおうということで、会話なしメニューを掲げました」。

「会話なしメニュー選んでも、結局喋っちゃう人もいます。でも、味を占めてこのメニューで通い続けてくれる方も。7年間、全く話していない方もいらっしゃいます。どんな仕事してる人なのかなぁ?家族はいるのかなぁ?と、僕もいろいろ想像しながら、カットしています」と話します。

いとうさんも触れていましたが、「僕の若手時代は、お客様を退屈させないように喋って来いと言われていました。だから、会話ありきって思い込んでいたんですよね。最初は不安でしたよ。僕がカットしているのを、会話なしでじっと見つめられると、目をつぶってくれないかなぁ、なんて思ったことも」。

ヘアサロンでは話すのが常となっている私たち。美容師は会話から好みのファッションやライフスタイルなどをキャッチして、ベストな髪型を提案するのでは?という疑問をぶつけると、「会話なしでも、この人にはこのヘアスタイルがいいっていうのはわかるもんです」と頼もしい言葉で締めてくれました。

いとうさんもこうツイートしています。
「個人的にバズってること以上に、友人のお店、考えに共感や反響があったこと、Twitter仲間に一緒に喜んで頂けたことが嬉しいです。美容師の立場としては、この反響を真摯に受け止めて、より良い空間作りに努めていきます。今日もステキな一日を」。

■『ヘアーワークス クレド』公式サイト http://hair-works-credo.com/

いとう|経営している人さんの関連情報
■Twitter  https://twitter.com/hironcare
■Instagram  https://www.instagram.com/natural_hiro

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