衰弱して声も枯れた子猫 出会いはミクシィの掲示板 「自分から寄ってきたね」愛情注がれ今13歳 

平藤 清刀 平藤 清刀

あんみつちゃん(メス・13歳)は、きょうだいたちと一緒に、へその緒がついたまま段ボール箱に入れられて、大阪府寝屋川市にある公園に捨てられていた。地元の保護猫ボランティアが保護したときはハムスターほどの大きさしかなく、衰弱しきっていたという。大阪でモラハラ専門カウンセラーとして活動する太田瑠美さんがあんみつちゃんと出会ったのは、ミクシィの掲示板がきっかけだった。

「連れて帰って!」の猛アピール?

2008年、当時まだ独身で実家住まいだった太田さんは、ミクシィの掲示板で子猫の里親を募集する投稿を見つけた。交際中だった彼氏(今の夫)に車を出してもらい、神戸市北区の実家から寝屋川市まで会いに行った。

「当時はちゃんと面倒を見ない無責任な里親が多かったので、直接会いに行って身分証明ができることを、譲渡の条件にされていました」

投稿されていた写真を見て、引き取る子を前もって決めていたという太田さん。ところが…。

「じつは、連れて帰ろうと決めていたのは他の子だったんですけど、あんみつはどんなに遠ざけても自分から寄ってきて、上着の隙間に潜り込んでくるんです。押しの強さに負けました」

だが、そのときのあんみつちゃんは、一緒に保護されたきょうだいの中でいちばん弱っていた。元気を回復するまで3カ月間、保護ボランティアのもとでお世話してもらったあと、晴れて家族に迎えたのだという。

「引き取ったら、初日から腕枕で寝るくらい、すぐに馴染んでくれました。警戒心がなさすぎる子でしたよ」

ただ、段ボールの中で母乳を求めて鳴きすぎたせいだろうか。声がすっかり枯れてしまっていて「ギーギー」としか鳴けなくなっていた。それでも太田さんが「かわいいね、かわいいね」と声掛けを続けた半年後、やっと「ニャーニャー」と鳴けるようになった。

結婚後は実家から夫婦の新居へ連れて行き、一緒に暮らしている。

ところで、なぜ「あんみつ」という名に?

「毛が白黒だったから、餡子と白玉のイメージで(笑)。豆大福も候補にあったんですよ。でも、あんみつのほうが呼びやすいので」

何かしてほしいときは…

引き取ってすぐ、あんみつちゃんは太田さんと旦那さんを朝起こしに来るようになった。

「私と夫で起きる時間が違うんです。それが分かっていて、時間になったら顔をトントンと叩いて起こしてくれるんですよ」

猫は人間の2歳児ぐらいの知能があるといわれている。そのことを、日々の生活の中で実感することがあるそうだ。

「在宅でZoomを使ってお仕事の話をしているときは、私から離れておとなしくしているんです。でも友達とフランクに喋っていると、乱入してくるんです。お仕事の邪魔をしてはいけないとか、仕事かプライベートかを声のトーンで判別しているみたいです」

プライベートなときでも、パソコンのキーボードに乗ってきたら邪魔になる。

「キーボードの横に箱を置いておくと、その中に入ると聞いたことがあって、置いてみたんですけどね……」

入ってくれたのは初めの2回くらいで、それ以後は膝に乗ってきたそうだ。キーボードに乗ってはいけないことをあんみつちゃんが悟ったかどうかは定かでないが、膝の上なら邪魔にならいから許しているという。

そして猫の飼い主なら誰もが経験する「猫は人間の言葉を理解している」と「猫は喋る」という現象。あんみつちゃんも例外ではないようだ。

「ごはんは分かるみたいですし、あんみつ自身も『ごはん』と喋るようになってきたんです。気のせいじゃなくて本当に」

もっとも「抱っこしてほしい」「カリカリがほしい」「チュールがほしい」「シャワーしてほしい」も、すべて「ごはん」と喋るそうだ。

「何かを要求する言葉が『ごはん』で、細かいところは察しなさいといわれているみたい(笑)」

ごはんは2時間おきに小分けにして

保護されたときは衰弱して小さかったが、今のあんみつちゃんはすこぶる元気。そうはいっても、けっこうな高齢猫だ。脚の関節に痛みがあるようだが、調子がいいときは若いときと同じようにダッシュするし、ごはんもお腹いっぱい食べる。

「捨てられたときの飢餓感が消えないのでしょうか。放っておいたらいっぱい食べ過ぎて吐くので、2時間おきに小分けにしてあげています」

そんな太田さんを見て、2人いる姉妹からは「13年間ずっと新生児を育てているみたいやね」といわれるそうだ。

太田さんから愛情をいっぱい注がれているあんみつちゃん。人間でいえば70歳手前。やがて来るお別れのときに慌てたり取り乱したりしないよう、太田さんは日頃から「そのとき」のことを旦那さんと話し合い、心の準備をしているという。

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