福岡で車を使った保険金殺人事件、なぜすぐに逮捕されなかったのか?

小川 泰平 小川 泰平
事故を装った保険金殺人事件が発生した(naka stock.adobe.com.jpeg)
事故を装った保険金殺人事件が発生した(naka stock.adobe.com.jpeg)

 今年4月、福岡県うきは市で会社員西村一敏さん(64)=大分県日田市=を軽乗用車で複数回ひいた殺人の疑いで、西村さんのおいで会社役員松成英一郎容疑者(54)が6日、福岡県警に逮捕された。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は7日、当サイトの取材に対し、事件の背景を解説した。

 捜査関係者によると、西村さんには複数の保険が掛けられ、松成容疑者は生命保険の約1500万円を受け取ったという。自身が経営する保険会社の代理店を通じて加入させたものもあったといい、県警は保険金目的で事故を装って殺害した疑いがあるとみて調べている。松成容疑者はこれまでの任意の調べに「現場にいなかった」と説明しているという。

 現場は駐車場で、西村さんはうつぶせの状態で、自身が所有する車のタイヤの下敷きになっており、ポンネットが開いた状態で、付近には電気の付いた懐中電灯が落ちていたという。車を修理中に事故に遭った可能性を示した状況について、小川氏は「車の点検か修理をしていたように装ったと思われる」と見解を示した。

 事件と事故の両面で捜査されたため、逮捕まで半年を要した。小川氏は「通常は事件を疑ってもおかしくないが、保険金殺人にしては金額がそれほど多額ではなかった。保険金殺人の場合、5千万円とか1億円とか多額なことが多いが、本件は1500万円という生命保険にしては妥当な金額だったというところもあると思います」と指摘した。

 西村さんは昨年6月頃、松成容疑者の勧めで生命保険に加入し、受取人は同容疑者だった。小川氏は「松成容疑者は自分で代理店をやっているので、保険についての知識がある。自分のノルマに達しないことを理由に『私が保険金を払うから、保険に入ってくれ』といったようなことで入ってもらったと推測できる」と推理し、さらに「保険加入の翌月や2か月後に亡くなると怪しまれるという知識が松成容疑者にあったと思います」と付け加えた。

 事件と判断された根拠として、小川氏は「ご遺体が複数回ひかれた痕跡があるというのが一番の要因。通常、自分が修理中にひかれたなら1回ですから、同じタイヤに何度も…というのは通常ありえない。そういったところも殺人事件と認定した理由だと思います」と解説。また、同氏は「自動車の損害保険がまだ払われていないということは、事故自体に不審な点が当初からあったのだと思います」と補足した。

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