「派閥の影響力は?」「世代交代は進む?」 自民党総裁選を深掘り解説<後編>

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

9月17日、自民党総裁選が告示されました。総裁選は、その選挙方式や党内の深謀遠慮もあり、最終的にどなたが勝つかは、まだまだ分からない、と思います。

政治の世界の論理というのはかなり特殊ですし、一般の方からは、混沌とした状況について「何がどうしてそうなっているのか」が、分かりにくい部分も多いと思います。連日報道も過熱していますが、通常とは少し異なる視点も交え、掘り下げてみたいと思います。今回は後編。

目次
#1 各候補者について
#2 総裁を選ぶ基準とは?
#3 必ずしも、本心から支援をしている人ばかりではない?
#4 派閥は力を失っていく?
#5 「世代交代」が進んでいく?
#6 国民のための政治を

派閥は力を失っていく?

今回の総裁選は、各派閥が、支援候補を一本化しない・締め付けができない、派閥が力を失っていっている、と言われます。もちろんそういう面もありますが、ただ、話はそれほど単純ではないと思います。
今回の総裁選も「自主投票」とは言いながらも、実際はいろいろと調整が行われていますし、若手が派閥の意向と無関係に動き回っているわけではありません。政治力学を考えれば、決選投票になった場合には、一致団結してひとりの候補を支援する派閥も多いと思います。

派閥が果たしている役割は、今も決して小さくありません。確かに中選挙区の往時に比べたら、力は弱くなりましたが、依然として、公認争い、人材育成、居場所確保、財政的援助など、政治という特殊な世界で、派閥が必要とされる理由があります。「派閥」というと、旧態依然の金権政治の象徴のように言われ、マイナス面ばかりが強調されますが、「政治」という特殊な世界で、人を育て、政策を作り、国造りの力となっている面も、あるのだと思います。

(もちろん、悪しき点は、どんどん変えていかなければなりません。派閥を擁護しているのではなく、本稿では、そのリアルをご説明したいと思っている、ということです。)

議員というのは、極めて孤独な仕事です。やった者にしか分からない苦労があり、国会でも地元でも、気の休まることのない日々の中で、思いを共有できる議員同士の結びつきというのは、自然と濃く強くなります。派閥に属することで、仲間ができ、居場所ができる。(もちろん、「同じ派閥に属しているから、皆が仲良し」なんてことは、全くないわけですが。)派閥が求められる理由には、こうしたウェットなものもあります。

そして、議員にとって最初の最重要事項である公認争い、すなわち、「自民党の敵は、(野党ではなく)実は、自民党」ということの熾烈さです。

現在も、例えば、山口、群馬、静岡、新潟などの衆議院小選挙区で、自民党の現職議員同士の公認争いが行われていることは、よく知られていますが、これは珍しいことではありません。公認というのは、「自民党の候補者として選挙に出られる資格」であり、公認が得られなければ、無所属で出馬せざるを得ず、その場合、党からの応援も地元の支援も無く、比例復活もできません。公認が得られるかどうかは、まさに、天と地ほど違いがあります。

このように自民党の議員同士が公認を巡って争う、というときには、当然ながら、それぞれが所属する派閥同士が強力にバックアップして戦う、ということになります。こうして、議員にとって派閥は、自分を守ってくれる・頼りになる存在・命綱、ということになっていきます。

ただし、「派閥は家族のようなもの」とは言っても、いろんなケースで、最後に梯子を外される、見捨てられる、ということもよくあり、昔のように、「何があっても守り抜く、仁義の親分・子分・兄弟分の関係」といったものは、失われているとは思います。

余談ですが、選挙の公認争いというのは、現職の議員同士だけではなく、現職を新人が追い出そうとする場合や、空白区で新たに候補者を選ぶ場合に、「誰が公認候補に選ばれるか」の争いもあります。そこはまさに、「殺るか殺られるか」のドロドロの世界であり、ほとんど表には出ませんが、選ばれた候補や議員に対し、地元では、様々な謀略や苛烈なイジメが、延々と続くことになります。

政治の世界は、本当におそろしいっ。

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