「朝食で何を食べたか忘れた」これって認知症?「もの忘れ」との違いは 医師に聞いた

ドクター備忘録

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「認知症」と「もの忘れ」がどう違うかわかりますか? 実は、そこにははっきりと違いがあるといいます。「吉田病院付属脳血管研究所」(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。

――もの忘れと認知症は違うものなのですか?

違います。確かに、認知症はもの忘れから始まることが多いのですが、複雑なことができなくなってきます。例えば、数字が分からなかったり、洋服を裏返しや前後逆に着てしまったり。動作に混乱が出てくるのが認知症です。

――朝食で何を食べたか忘れるのはもの忘れでしょうか? 例えば、トーストの他に何を食べたか思い出せない、などは。

部分的に忘れてしまうのは誰にでもあることで、単純なもの忘れです。ところが、朝食を食べたこと自体を覚えていない、薬を飲んだかどうかも分からないなど、その場であったことすべてを忘れてしまうのが認知症におけるもの忘れの典型です。

――もの忘れは、歳を重ねるとどうしても多くなるのでしょうか?

そうですね。老化現象の一つで脳の機能が衰えると、誰にでももの忘れは起こります。

――老化によるもの忘れが増える一方で、病気、例えば脳卒中から認知症になるケースもあるのでしょうか?

あります。脳の記憶をつかさどる部分がつぶれてしまうと、あたかも認知症のような症状になることがあります。また脳卒中を繰り返すと、その度に脳細胞が減り、脳全体の機能が悪くなって認知症と同じような状態になってしまうのです。

――では、脳卒中を起こした後に認知症を予防する方法はありますか?

大切なのは、脳卒中をもう一度起こさないこと。そのためには、日々の血圧をコントロールするのが最も重要です。

――もの忘れか認知症かを判定するための基準やテストなどはあるのでしょうか?

はい。私の病院でも行っていますが、一般的な検査が何種類かあり、そのスコアによって認知症の疑いがあるかどうかを判断しています。もの忘れ外来、高次脳機能障害外来といったところで受けられます。

――認知症の方ご本人が、積極的にこの診断を受けるケースは少なそうですね。

そうですね。ご自身では認知症の症状を認識していないので、家族が心配して来院することが多いです。受診を説得するのに苦労する場合もありますね。

――ただ、判定を受けなければ、周りの家族や介護する人も付き合い方が分からなくなってしまうので、受診は大切ですね。

はい。受診するメリットは他にもあります。先ほどお話した、脳卒中による血管障害から引き起こされる認知症を「脳血管性認知症」といいますが、早く気づけば予防や対策が可能です。また脳卒中は再発しやすい病気なので、早期の治療が重要になってきます。周囲の人が気になることがあれば、ぜひ早めに受診をお願いします。

◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、脳神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科

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