町唯一のスーパー閉店、アイスも買えない 一肌脱いだGS店主「子どもたちに夏の思い出を」

京都新聞社 京都新聞社

 近くにあった町唯一のスーパーが閉店した京都府伊根町本庄上のガソリンスタンドが、夏場に子どもたちがアイスクリームを買って味わえる場所を残そうと、新たに機材をそろえ、価格を抑えて売り始めた。子どもらは「学校のみんなで来られる。暑い日もすぐ買えておいしい」と話し、店に笑顔が咲いている。

 本庄上では4月末に「JA全農京都Aコープいね」が閉店。近くに食料品店はなく、最寄りのスーパーは10キロ先の宮津市となった。近くでENEOS(エネオス)本庄SSを営む三野成彦さん(45)は閉店を知り、真っ先に「(車を運転できない)子どもや高齢者が買い物をできなくなる」と考えた。特に子どもたちが遊びついでにアイスを買える場所が近所に要ると、販売を決めた。

 仕入れは月1度、往復50キロの道のりを与謝野町まで出向き、発泡スチロール5箱を満杯にして、溶ける前に急いで戻る。アイスを並べる冷凍ショーケースは、宮津市内の閉店した店から譲り受けた。

 6月から販売を始め、アイスバーやソフトアイスなど約30種類をそろえた。価格はほとんどが100円以下で、一番安い棒状に凍らせたアイスは10円。自身も幼い頃、50円を握りしめて個人商店でアイスを買った思い出があり、家族にねだったワンコインで買える値段を意識した。

 子どもたちは放課後や、休日に近所の海で遊んだ後などに「アイスちょうだい!」と訪れ、食べ終わると遊びに戻るという。駄菓子も月1度、売り始めた。三野さんは「電気代を入れたらマイナスだけど、もうけを出したいわけじゃない。冷凍庫をのぞき込んでアイスを選んだ昔ながらの夏を、子ども時代の思い出にしてもらえれば」と笑顔で見守っている。

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