「阪急電車が山陽電鉄に乗り入れていたなんて…本当ですか?」相互直通運転が中止となった“切実”な理由

新田 浩之 新田 浩之

最近、大学生と話していると「阪急電車が山陽電鉄に乗り入れていたなんて、本当ですか?」と言われることが多くなりました。そうです…阪急電鉄は1998年(平成10)年まで山陽電気鉄道の須磨浦公園まで、山陽電鉄は六甲まで乗り入れていました。

本当にあった! 阪急電車の山陽電鉄線内への乗り入れ

阪急と山陽の相互直通運転が開始されたのは神戸高速鉄道が開業した1968(昭和43)年のこと。神戸高速鉄道の開業により、阪急、阪神、山陽、神戸電鉄が1本のレールで結ばれ、神戸市内の交通が飛躍的に向上しました。

先述したとおり、阪急と山陽は六甲~須磨浦公園間で相互直通運転を実施。阪神も須磨浦公園まで、山陽は大石まで乗り入れていました。相互直通運転区間の東端は神戸市灘区にある六甲駅、大石駅、西端は須磨区にある須磨浦公園駅になり、おおよそ神戸市電の全盛期の東端、西端に一致します。

筆者も春になると祖母に連れられて、阪急の最寄駅から特急須磨浦公園行きに乗り、須磨浦公園で花見を楽しんだものでした。山陽電鉄線のホームは6両編成対応なので、須磨浦公園行き特急も通常の8両編成よりも短い6両編成でした。

三宮(現 神戸三宮)~須磨浦公園間は各駅に停車。駅間距離が短く、カーブが多い山陽電鉄線内を走る阪急電車は実に興味深かったです。また三宮駅で多くの乗客が降り、山陽電鉄線内はガラガラでした。

一方、六甲以東に住んでいる身としては三宮駅へ入線する山陽電車の六甲行きを恨めしく思ったものです。最も六甲駅が最寄りの神戸大学生にとっては、とても便利な列車だったらしいですが。

山陽電鉄の特急は阪急線内は各駅に止まりましたが、1991(平成3)年から神戸高速線内の花隈、西元町、大開は通過しました。また当時の日中ダイヤは阪急が10分間隔、阪神が12分間隔、山陽が15分間隔とバラバラで、神戸高速線内の時間調整のための長時間停車は一種の「名物」でした。

乗り入れできる編成の短さが混雑解消のネックに

1998(平成10)年のダイヤ改正により、阪神梅田(現 大阪梅田)~山陽姫路間にて「直通特急」の運行を開始。大阪梅田と姫路が結ばれ、現在に至っています。また阪神は現在でも特急須磨浦公園行きを運行しています。

一方、阪急は須磨浦公園への乗り入れを中止し、新開地までとなりました。また山陽は三宮までの乗り入れとなり、事実上阪急・山陽の相互直通運転は終了しました。

中止の背景には両数の問題があります。先ほども述べたとおり、山陽電鉄線内は6両編成が限界です。一方、現在の阪急神戸本線は8両編成を基本とし、朝ラッシュ時間帯は10両編成も運行されます。

6両編成では阪急神戸本線の混雑に対応することができず、混雑解消のネックになっていました。夕ラッシュ時は梅田~三宮間を8両編成で運行し、三宮駅で後ろの2両を切り離すということも。一時期は平日昼間時間帯と土休日は特急の代わりに普通が須磨浦公園まで乗り入れていました。

山陽電鉄線への乗り入れ中止に伴い、朝ラッシュ時と夕ラッシュ時の今津線直通の準急を除き阪急神戸本線は8両編成に統一されました。沿線住民からすると「やはり6両はきついよな」というのが正直な感想です。

とはいえ、山陽電鉄線内を走る阪急電車をもう一度見たい! という思いもあります。上記の考えと両立する日は来るのでしょうか。

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