“ビビリな姿”が愛しかった 猫と暮らす幸せを教えてくれた大人猫、今は甘えん坊に大変身

古川 諭香 古川 諭香

警戒心が強い猫や大人猫は、里親さんが見つかりにくいことも多いもの。けれど、そうした子にはその子ならではの良さがあります。Oさん(@medel_design)は、里親募集サイトで出会ったビビリな大人猫つくしくんをお迎えしました。

里親募集サイトで一目ぼれしたビビリの大人猫を迎えて

Oさんはマンションがペット可になったのを機に、猫を迎えようと決意。夫婦で里親募集サイトを見て話し合っていたものの、お互い生き物と暮らした経験がなかったため、まずは保護猫と泊まれるホテルに宿泊し、猫との暮らしを疑似体験することにしました。

宿泊は1泊でしたが、ただかわいがるだけでなく、お世話もさせてもらえ、一緒に寝ることもできたそう。Oさん夫婦は大人猫を選び、同じ部屋で過ごしましたが、その時初めて「猫と暮らす」という現実を痛感しました。「その子はとにかく活発で。私は常に緊張状態になってしまいました」

その猫はお腹がゆるかったこともあり、もともとトイレのお世話ができるか不安だったOさんは心が折れ、猫を迎えることを断念。

しかし、その後やはり猫と暮らしたいという想いが強くなり、2年後、再び里親募集サイトをチェック。その時、目に留まったのが「ビビリ」「慣れるのには時間がかかる」と記されていた、つくしくんでした。

「ホテルでの宿泊体験から自分は猫と遊びたいというよりも、猫が家にいてくれだけで幸せを感じられるタイプだと分かったので、触れられないことは気になりませんでした。ビビリであることや、やんちゃ盛りではない大人猫であることは私にとってプラスだったんです」

つくしくんは、元野良猫。一度トライアルに行くもカーテンや壁紙を引きちぎったことから返された子。「夫はサイトにアップされていた、遊んでほしいけれど自分からは言えず、保護主さんの傍でじっとしている様子の写真を見て、なんていじらしいんだとキュンとしていました。」

対面時、つくしくんは常に物陰に隠れ、構ってほしい時も保護主さんの足元でじっと待っていたそう。そんな姿を目にし、Oさん夫婦の中で、つくしくんを幸せにしたいという気持ちがより一層高まっていきました。

警戒心を解いた「猫目線な配慮」

おうちに迎えた日、つくしくんは飲まず食わずの状態でトイレにこもっていました。数日経つとトイレから出てくるようになったものの、物陰に隠れて様子を伺ったり、姿勢を低くして部屋の隅を歩いたりし、Oさん夫婦を警戒。

ひとりになれる空間が必要なのではと思い、寝る時はケージに布を被せ、薄暗い空間を作ってみたものの、布を引きちぎるほど大暴れ。夜鳴きもあったため、もしかしたら無音が逆効果なのかもしれないと考え、寝る時には小さな電気をつけたままにし、YouTubeでジャズを流すなど工夫。

「ケージはリビングに置いていたので、テレビの音や話し声は小さくし、敵意がないことを伝えるために目は極力合わせないよう、意識していました」

そうした配慮が功を奏し、つくしくんはお迎えしてから3日後に初めて手のにおいをかぎに来てくれたそう。

「保護主さんから、兄弟猫が遊んでいても隠れていることが多く、自己主張しない子だと聞き、半年間は触れないことを覚悟していたので、とても嬉しかったです」

夜鳴きが収まった後はご主人がリビングで一緒に眠り、人馴れ訓練。すると、つくしくんは次第に触らせてくれるように。Oさん夫婦は、何をした時に喜んでくれるかを徹底的に観察。その結果、尻尾の付け根や鼻筋を強めに触られるのが好きだと判明。ネットで見たマッサージも実践し、距離をどんどん近づけていきました。

不安だったトイレ問題は、においがしにくい猫砂を選ぶことで解決。トライアル失敗談を受け、Oさんはお迎え前に畳をフローリングにし、壁に爪とぎシートを貼ったり、爪とぎを複数設置したりと対策を練っていましたが、予想に反し、つくしくんはおりこうさんだったのだとか。

「一度大暴れしただけでした。いたずらをしたら抱っこして現場に連れて行き、『ダメでしょ』と言いながら手をグーにすると、二度としません。お手、お座り、おかわり、待ても数日で覚えてくれました。」

つくしくんは、ご飯の合図も学習。「『ごはーん』と言いながら私の太ももを3回叩いていたら、いつしか太ももを叩く音を聞くとごはん皿の前にスタンバイするようになりました。親バカですが、意外と賢いのかも…と思っています(笑)」

人の愛を受け、ビビリだった頃なんてなかったかのように

共に暮らす中で、つくしくんはどんどん甘えん坊に。

お迎えした時から、ご飯を食べ終わったり水を飲み終わったりした後に「えらいね!すごいね!」と褒めていたからか、今ではOさんがどこにいても「食べました」「飲みました」と報告しにきてくれるようになりました。

夕方には仕事部屋にやってきて、構ってアピール。抱っこをするとゴロゴロと言い、腕の中で眠るため、Oさんはつくしくんを抱きながら仕事をすることもあるのだとか。

また、尻尾の付け根を触ってほしくて、そばに来てはお尻を見せ、ゴロンと寝転ぶことも。「寝転べば触ってもらえると信じてやまないところや、自分が愛されている存在だと全く疑っていないところが、とても愛くるしい。ビビリだった頃なんてなかったかのように、私や夫を平気で踏んでいくこともあります(笑)」

一緒に暮らす時間が長くなるにつれ、Oさん夫婦はつくしくんのコミカルな一面も知りました。「威嚇し慣れていないので、シャーではなく、ブフェエエエエエエエと言います。笑っちゃいけないのですが、おかしくて(笑)」Oさんはお詫びのちゅ~るを貢ぎつつ、さらにつくしくんを愛しく思いました。

 すっかり心を許してくれたつくしくんは、見事なへそ天姿も披露してくれるように。

「こういう光景が見られるようになって、ただただ嬉しいです。膝の上に乗ってくれるようになったので、“猫がいるから動けない・動きたくない”と言っている飼い主さんの気持ちが分かるようになりました。私たちが幸せになってばかりなので、それ以上につくしを幸せにしたいです」

これまで苦労してきた大人猫だからこそ、心を許してくれた時の幸福感は言葉にできない。そう語るOさんは、大人猫の魅力をより多くの人に知ってほしいと思っています。「個体差はありますが、つくしはほとんど手がかかりませんでした。成長しても見た目がほとんど変わらないのも大人猫の良いところ。猫を初めて迎える人に、大人猫はぴったりだと思います」

野良生活やトライアル失敗という悲しい過去を経て、ようやく心落ち着く安寧の地を手に入れた、つくしくん。頑張ってきた分、これからも多くの笑顔がそのニャン生に溢れることを祈りたくなります。

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◆古川 諭香(ふるかわ・ゆか) 愛玩動物飼養管理士やキャットケアスペシャリスト、ペット共生住宅管理士の資格を活かしながら、様々なWebサイトや紙媒体で猫情報を配信中。産まれてから今まで猫がいなかった日はなく、現在は3匹の猫たちと生活中。「猫と人間が幸せに暮らす」をテーマに、猫が喜ぶ共生住宅も建築済み。

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