愛猫の避妊手術―受けさせるべきかやめるべきか 30代になった独身男性が下した決断とこれからの願い

ふじかわ 陽子 ふじかわ 陽子

猫の避妊去勢手術は、今や「義務」のようになっています。多頭飼育崩壊を防ぎ、野良猫増加を止めるためにも必要なこと。でも、猫の立場になって考えてみると、人間の身勝手に映るでしょう。

宮城県に飼い猫の避妊手術を悩んだ男性がおられます。29歳のとき、子猫のテトちゃんを飼い始めたMさんです。彼は健康な体にメスを入れることに抵抗を覚えていたのです。完全に人間の都合ですから。もしこれで死んでしまったら…そう思うと、なかなか避妊手術をすることができませんでした。

Mさんが住んでいるのは、宮城県でもはずれの方で野良猫が多く、避妊去勢手術をしている家庭もさほど多くない地域。家猫でもお外とお家を行き来することが当たり前の環境です。Mさんが悩むのはよく分かります。

そうこうしているうちに子猫だったテトちゃんは恋をし、家出をしてしまいました。2~3日経って帰ってきた時には、新しい命をお腹に宿していたのです。最初、Mさんは全然気が付きませんでした。気付いた時には、もうお腹が大きくなっていて、下すには死産させるしかない時期に。

こうなったら仕方がない。と言いながらも、Mさんはとても楽しみでした。可愛いテトちゃんの子供の誕生なのですから。といっても、仕事は休めません。どうか家にいる間に産んで欲しいと願っていたのですが、2018年4月、仕事へ行っている間にテトちゃんは押し入れの中で出産をしました。

「みーみー」と可愛い声が聞こえる押し入れの中をのぞきたい欲望を抑えて、テトちゃんから紹介してもらえるのをじっと待ちます。動物病院では、1週間から10日ほどで見せてもらえると聞いています。それぐらいなら待てるか、いや待てないかもと葛藤していると、なんと3日でテトちゃんが押し入れの中から子猫を連れてきてくれたのです。

その可愛いこと。Mさんは避妊手術をしなくて良かったと、心から思いました。全部で4匹いた子猫は、2匹はMさんの手元にもう2匹は一緒にもらわれていきます。手元に残した子猫は、パンダちゃんとクロちゃんと名づけました。

可愛い子猫を目の前にして、Mさんは考えます。今回は引き取り手が見つかったけれど、次はないかもしれない。飼い主を見つけたとしても、テトちゃんの子供を本当に可愛がってくれる人とは限らない。

そうこう悩んでいるうちに、2度目の妊娠と出産。この時も引き取り手は全員見つかりました。それでも、このまま増えていったらどうなるのだろうかという不安があります。独身なので生活に余裕はありますが、家で飼える猫は3匹が限度…。

悩みに悩んだ末、遂にMさんはテトちゃんの避妊手術を決意。出産を2度させてあげられ、可愛い娘もそばにいる。パンダちゃんとクロちゃんも一緒に避妊手術をすることにしました。

無事に手術は成功。つらい思いをさせてしまった分、今まで以上にテトちゃんたちを可愛がります。それでまではご飯に50円のパウチをあげていたのが、今では100円のものを用意。外で遊べない分、ご飯ぐらいは美味しい物をというMさんの気遣いです。

出先で面白そうなオモチャがあれば、ついつい買ってしまい、家にはオモチャがあふれています。Amazonセールでは、ご飯やオモチャを買ってしまいありえない額の買い物をしてしまうんですって。

実はMさん、テトちゃんと暮らし始めた約6年前は派遣社員でした。それが、パンダちゃんとクロちゃんが生まれたころに正社員になり、テトちゃんの2度目の出産のころには昇給も果たしています。猫が増えるごとに生活が安定。テトちゃんはまさしく招き猫だったのです。

テトちゃんは大事にされているのが分かりますから、Mさんのことが大好き。Mさんが帰宅すると玄関で「おかえりなさい」。それから15分ほどはMさんにベタベタ。トイレの中にも入って来ちゃうのだそう。

35歳の今、結婚よりも猫たちとどう暮らすかの方が大事なMさん。現在の願いは、3匹とも長生きしてほしいということだけ。そのためには自分が健康でいたいとも。どうかこの優しい男性の願いが叶いますように。

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