サッカー会場でスポンサー以外の飲料NGに、夜回り先生「企業宣伝でない、五輪本来の姿とは」

夜回り先生・水谷修/少数異見

水谷 修 水谷 修

 茨城県鹿嶋市の市立学校が、小中学生によるカシマスタジアムでの東京五輪サッカー競技の観戦で、同会場に持ち込む飲料について「コカ・コーラ社製でお願いします」と保護者に通知していたことが判明し、SNSでも物議を醸している。

組織委員会の担当者が会場を視察した際、各校の教職員に「コカ・コーラ社製以外のペットボトルは持ち込み禁止。それ以外はラベルをはがして」と発言したことを受けての通知という。五輪最上位スポンサーへの〝配慮〟を印象付けた今回の事象を受け、「夜回り先生」こと教育家の水谷修氏は「オリンピックは滅んだ」として商業化する五輪への違和感をつづり、原点を見直すべきと訴えた。

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 今回のオリンピックで、茨城県鹿嶋市の市立学校が、生徒たちに「会場に持ち込む飲料は、ペットボトルの場合、コカ・コーラ社製の飲料でお願いします」という文書を配ったという報道がなされました。その背景には、会場を視察した組織委員会の担当者から「コカ・コーラ社以外のペットボトルは持ち込み禁止で、それ以外はラベルをはがして」という発言があったようです。

 これはおかしい。そう考えるのは、私だけでしょうか。本来オリンピックは、企業の宣伝に使われるためのものではありません。サッカーでも野球でも、その他の競技でも、彼らのユニフォームに企業のマークが入ることはありません。当然、オリンピックには、スポンサーとして多くの企業が大きな金額のお金を、IOCに支払っています。それは、本来、企業の宣伝のためではなく、オリンピックという平和の祭典を支えるという純粋な思いで支払われたお金のはずです。それが、いつの間にか忘れ去られています。

 組織委員会の人たちに問いたい。それでは、会場に持って行くカメラは、そちらのスポンサーのカメラではなくてはならないのですか。本当に、スポンサーでない企業名が入ったTシャツや服を着た人は、服を脱がすのですか。

 かつて、NHKは、その放送の時に、企業名が映り込む時は、それを消していました。それは、公共放送であるNHKが一部企業の宣伝に使われることは、その立場から言ってもふさわしくないと考えていたからです。これは、当然の判断です。今でも、民放は、番組でスポンサー以外の関連業種の名前が映り込む場合は、それを消しています。相当不自然に。しかし、今や…。

 NHKに問いたい。今回の、オリンピックの放送の中で、関係企業の広告をきちんと画面から消してくれるのかと。

 かつて、オリンピックの創始者クーベルタンは、アマチュアリズムに徹し、そして、反商業主義を根本として、平和の祭典であるオリンピックの存在意義を語り、そして、全世界に広めました。それは、滅んでしまったようです。今や、プロの選手や企業に保護された選手が当然のように競技に参加し、市場には、オリンピックに援助したことを露骨に記した商品が溢れています。また、オリンピックの放送には、そのパックに多くの企業名が映り込みます。

 そのような中、今回の大きなスポンサーの一つトヨタは、オリンピックを利用したコマーシャルを止め、幹部が開会式に参加することを断ったという報道がありました。心ある対応です。高く評価します。

 いずれにしても、オリンピックは滅んだ。こう考えるのは、私だけではないでしょう。せめて、私にできることは、オリンピックを見ない、聞かない。オリンピックに賛助した企業の商品は買わない。それぐらいです。多くの人が、世界中で、こう動けば、もしかしたら、本当のあるべき姿に戻るかもしれません。それを願って。

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